B7が岸田総理へ「検閲の禁止」に対処すべき、と|B7東京サミット共同提言

【経済報道】 経団連(会長:十倉雅和)は、令和五年四月二十日に『B7東京サミット共同提言』を公表した。B7は、G7に対してG7各国の経済界の関係者が政策提言を行う。日本では、経団連が代表団体を務める。


以下がB7。

  1. 日本経済団体連合会
  2. イタリア産業連盟
  3. カナダ商工会議所
  4. フランス経団連
  5. 全米商工会議所
  6. 英国産業連盟
  7. ドイツ産業連盟
  8. ビジネスヨーロッパ 


当日のサミットには、岸田総理(丁酉)も出席し、各国代表者から本共同提言の手交を受けた。本共同声明は五分野(経済財政・貿易投資・GX・DX・医療保健)。 岸田総理は、本提言の取り纏めに対して謝意を表し、「G7広島サミット」に向けて本提言を有効活用していきたい旨を伝えた。


経済・財政

 『露鳥戦争』により、インフレ圧力の増大やサプライチェーンの更なる混乱、エネ・食料不安の増大等を招き、世界経済を悪化。 対処方法は、「供給力」を強化し、エネ・食料のサプライチェーンを確保し、人的資源に投資する事。


加えて、金利上昇に伴う金融不安にも警戒が必要。更に、世界経済の課題や世界的な金融情勢の変化の影響を最も受けているのは低・中所得国であり、これら各国の債務危機を回避する為に必要な救済措置を講じるべき。



供給力の強化

 G7各国は、官民連携の生態系(エコシステム)を構築し、特にグローバルサウスへの更なる投資を拡大する為、国際機関・国際開発金融機関・自国の開発機関との協力深化が求められる。


  1. インフラ開発への投資;「グローバルインフラ投資パートナシップ」を推進すべき。ウクライナ復興における高品質なインフラ整備が強靭な社会を取戻す鍵となる
  2. 重要鉱物への投資;供給を特定の国に過度に依存しない為、官民連携の下、上流(原材料の採掘)だけでなく、下流(製錬・精製・加工)に係る投資先を分散させる事が不可欠


エネ・食料の確保

  対露制裁は、戦争が続く限り継続すべき。制裁の実効性を確保する為、G7は可能な限り多くの国と連携し、需要の代替や迂回(バックフィル)を防止する必要がある。


同時に、露鳥からの重要物資(エネ資源や食料、肥料等)の安定供給を維持する事が不可欠。露鳥は、穀物と肥料の主要な輸出国である為、戦争に伴い、特にグローバルサウスは深刻な食料不足に直面。


G7は、「輸出制限」を維持している国々に対し、できる限り早期に当該措置を廃止し、「保護主義」に対抗し、自由貿易の砦となって、制裁に伴う意図しない結果を回避する様に求めるべき。


またG7は、省エネ・エネ効率向上・代替エネ源に係る技術と情報を途上国に提供すべき。


食料についてG7は、グローバルサウスに対して、生産能力を強化する為の技術的・財政的支援を提供すべき。



人材育成・雇用の多角化の推進

  G7各国政府は、デジタル・グリーンの分野で特に需要がある科学・技術・工学・数学(STEM)における人材のリスキリングとスキルアップの為の民間投資を支援すべき。


多様な労働力と包摂的な仕事の空間が、人材育成を成功させる鍵。


個人の技能と能力を最大化する為には、人種・宗教・信条・性別・性的指向・性自認・社会的地位・家系に関係無く、全ての人が尊厳を以って平等に扱われなければならない。


パートタイムや有期雇用、派遣、雇用類似等の働き方は重要。G7各国は、「官民連携による資金調達と投資」に尽力すべき。



債務救済措置の実施

 G7は、金利上昇の影響を受けるグローバルサウスの債務救済に努める必要がある。「パリクラブ」のみならず、世界の主要債権国を含むG20との連携が不可欠。


貿易・投資

  G7は、交渉を通じた無差別な自由貿易の実現や法的拘束力を伴う形での透明性と予見可能性の確保、公正な競争の促進、経済改革と開発の推進等を具現化・擁護が求められる。


G7は、WTO改革を推進し、貿易投資に新たな弾みをつけるべく、取組むべき。


経済と安保が表裏一体となっている状況に鑑み、貿易投資を通じ、国際平和と安全を脅かす国に特定の機微技術が転用されない様に対処する事が不可欠。但し、安保上の理由で規制対象とする品目は必要最小限に限定すべき。



「自由で公正な貿易投資クラブ」の立上げ

 B7は、G7各国・EUを中核とするハイレベルな貿易投資枠組みである「自由で公正な貿易投資クラブ」の立上げを提案する。


同クラブは、所定の期間内に一定の基準を満たす事を約束する全国家・地域の参加を歓迎すべき。同クラブの参加国・地域に対し、参加の見返りとして、「内国民待遇」が付与される事が望まれる。同クラブは「気候クラブ」との協力の下、気候変動対策に貢献すべき。参加の基準は、例えば以下。


  1. 鉱工業品関税撤廃の追求
  2. エネ・天然資源・食料の輸出制限の回避
  3. 市場歪曲的補助金・ローカルコンテンツ要求の回避
  4. 内国民待遇の付与
  5. 直接投資に際しての特定措置履行要求の制限、送金の自由
  6. 知的財産権の尊重、履行確保
  7. 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)へのコミット 



経済安保の確保


  1. サプライチェーン強靭化;各国政府は規制に依拠するのではなく、企業の取組みを支援に注力すべき。G7は「有志国」との協力を継続しつつも、決して排他的であってはならない
  2. 経済的威圧への対処; 米EU「貿易技術評議会」や『日米豪印(クアッド)』等



多角的貿易体制の強化


  1. WTO紛争解決の危機への対処;現状は、「上級委」が機能停止状態(令和元年より)。この為、パネル裁定を上級委へ「空上訴」する事で、当該執行を阻止できる
  2. 公平な競争条件の確保;「補助金・相殺措置協定」の改訂が求められる
  3. WTO「電子商取引共同声明イニシアティブ」の推進;ECルール策定(自由な越境データフロー、データ ローカライゼーションの禁止、ソースコードとアルゴリズムの開示要求の禁止、デジタル製品に係る無差別待遇)でハイレベルな内容の合意が求められる
  4. 貿易と環境;G7はWTO「貿易と環境持続可能性に関する体系的議論」を推進すべき。「気候クラブ」を通じ、産業界とのパートナシップを緊密化すべき



サプライチェーン全体を通じた人権確保

 G7各国政府は、グローバルサプライチェーンからあらゆる形態の「強制労働」を排除する目的にコミットする一方、当該責任が企業に集中する事が無い様に配慮すべき



DX

セキュリティの確保


  1. サイバセキュリティの強化
  2. ディスインフォメーションへの対応;本件は、市民の自由と安保上の考慮に関する「憲法上の議論」を含む問題である為、G7各国はそれぞれの方法で「ディスインフォメーション」への対応と「検閲の禁止」といった課題に対処し、必要に応じて情報とベストプラクティスを共有すべき

医療・保健

 「次なるパンデミック」に備える為、G7は、医療・保健分野への投資を促進する事で、グローバルサウスによる公平なアクセスを確保し、人の移動」に関するルールの策定を主導すべき。


画像:総理大臣官邸、日本経済団体連合会

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