NY19初夏コレクションの黒をみる

【高級ファッション考察】 平成三十年九月六日から十二日にNYファッション・ウィークが開催され、各ブランドが来年春夏コレクションを発表した。今回のNYは春夏にも関わらず、特に夏らしいルックが少ない様に感じた。逆に秋冬のルックと見まがう様な重めのルックも散見された。本稿では幾つかのブランドをピックアップし、黒のルックを軸にみていく。



派手で奇抜なものの、きちんとリアルクローズを意識している四十代前半のデザイナ「ジェレミー スコット」。上二枚のルックの共通項はプロバスケのチームを組み込んでいる点。ロサンゼルス・レイカーズやシカゴ・ブルズのパッチが見える。一方はやや光沢を押さえた薄手のレザーブルゾンにロック感をあしらう。ヒップが丸々隠れる程の丈だ。インナで目を見張る蛍光オレンジと黒のスポーツブラ。カップ部分はゴルフボールで足元はホーケーとスポーツ色。ボトムスもハイウェスト ビキニの様なレザーのショートパンツで面白い。他方はエナメルのオーバーオール。足元まで一体化している。インナはパーカーを極限まで短くし、SEXYを忘れない。


ここからはエレガンス。五十代後半の「トムフォード」は半分以上のルックが黒。質感が独特だ。まるで身体に纏わり付いて見えるタイトなルック。膝下まであるが、脇の部分の切れ込みと袖の絶妙な短さでSEXYを残す。大いにデコルテを晒した袖がシースルーのルックは大胆不敵だ。ギリギリまで攻め、なお且つ、肩まで攻め、デコルテの領域に芸術を与える。腰の部分ではモダンアートな女性ラインを創った。三つ目。スカートは色違いだが、トップスが女性性を全面に出しつつ、サラシの様な構造も見える。


「BOSS」の黒の質感も独特だ。ジッパー等のスポーツ要素を入れたワンピース。首もとを絞れる紐を長く、脚まで垂らして揺らす。ウェストマークからはエレガンス要素が強く、本来、腰から垂れるベルトが離れた太腿から出、興味深い。特に足元はイマドキの底が広めのサンダルで近未来感さえもある。


五十代後半の「パメラ ローランド」はシンプルながらも余裕と先鋭的なフォルムのドレス。フレアな袖には遠目で桜吹雪の様にも見える遊び。鎖骨の下からの深い切り込みは鳩尾の下あたりまで裂き、そこから下に向う女性らしい丸みあるラインに対して線形。品性、愛らしさと鋭敏さを兼ね備える。


レディー・ガガも切る若い中華系デザイナ「カルバン ルオ」はシースルーに花を施した。全体的に華奢感を与える。金のネックレスとベルトは細め。裾を同じ花でエレガンスを演出し、足元でレオパード柄。トゥが細長く、シューレースもきつめにした。全体的に華奢感が強いルックなので、実際にはグラマな女性が、このルックの魅力を最大限に引き出せそうだ。


最後は老舗「オスカー デ ラ レンタ」。ショウ自体は華やかで、中華的、和風的、東南アジア的なルックが舞い、前半は正に春夏のコレクションとなった。後半はモノトーン。黒のルックは複数あったが、この二つを選んだ。全体の素材的には一般的なドレスだが、斜めに大きくスリットされた部分に集中した。まるで孔雀の様な鳥を彷彿させる。より鋭利に魅せる為、へそよりも高い位置に置いたのは、カーテンタッセルの様なもの。もう一つは全身シースルーだが、胴体回りの露出をせずに肌色に近い色でレイヤード。袖のオンオフといい、刺繍が美しい。


今回のNYからはスポーツ、艶感、マット上のデザインをみた。ファッションで黒は多用される。元気さには欠けるものの、成熟に向うのではなく、それぞれの試みにエッヂが利いている。黒だけでは断定できないが欧州とは異なるファッションの過程へNYは進もうとしているのだろうか。


画像引用:Jeremy ScottTOM FORD -Women's-BOSSPamella RolandCalvin LuoOscar de la Renta

記事:金剛正臣

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