文化庁が日中共同製作協定で新たな映画を生み出す切っ掛けづくり|TIFF2018

【社会報道】 平成三十年十月二十九日にTIFF二〇一八内にて、文化庁主催の第十五回文化庁映画週間シンポジウム『日中映画製作の新展開』が行われた。ジョン・ウー監督作品等に携わったテレンス・チャン(己丑、写真右)プロデューサと北野武監督作品等の撮影監督で「東京藝大」大学院の柳島克己(庚寅、写真左)名誉教授がゲストとして登壇した。


本シンポジウムでは、最新の映画文化の動向を紹介。五月に日中映画共同製作協定が発効され、それを機に期待される「日中映画製作の新展開」をテーマに掲げた。国境を越えて映画作りの最前線で活躍する両名が、将来的な両国共同作品製作における注意点や将来性について持論を述べた。


文化庁は今回のシンポジウム開催について「今後の映画製作の参考になれば。」と新たな映画界の未来について期待を寄せた。近年、中国映画界は著しい成長が見られる。チャンP曰く、「観客が洗練化されていった。」と話す。中国映画市場のメインユーザは二十二歳未満とかなり若い。「インド映画でもスペイン映画。どんな言語でも、質の良い映画を観たいと欲している。内容そのものがよければ、それだけ人気は高くなる。」と伝えた。


十二年ほど前から日本の俳優らと仕事をするチャンP。「彼らは非常に優秀だ。」と前置き、異文化共同製作に重要なのはコミュニケーションであるとした。「文化の違い、仕事のやり方の違いはある。どの国であっても相手の文化や慣習を尊重する事。コミュニケーションの問題は起きるので、お互いを理解しようとする事が大事。」とした。


チャンPは最新作となる役所広司主演の日中合作映画『Wing Over Everest(原題)』を製作。「この作品では、主役の国籍はどこでも良かった。私は役所広司さんの大ファンで、彼の事を世界で一番優秀な俳優だと思っていたので、いつか一緒に仕事がしたいと思っていました。」と、笑みを零す。現場での役所の仕事ぶりに対し、「非常にプロ意識が強い方。彼には天才の素質がある。常に役にハマり、見事な役者だ。」と絶賛した。



 柳島教授は昨秋と今夏に中国映画の撮影監督を務めた。中国ではロケ期間中に現地周辺で共同生活を送り、撮影に集中する。「二作品とも撮影延期。直前になって呼び出され、一人で中国に行った。クランクインからアップまで休みがない。一日十三時間くらいは普通。」と現地での経験を話した。ビザや業務契約、ギャラの支払の問題等と日本との違いに驚いたと話す。


現地では優秀な通訳や過去の教え子である中国人留学生達のサポートがあり、ストレスなく撮影を乗り切れたと振り返った。「最初から大きな作品ではなく、お互いの文化や流儀、共同製作の経験値を上げていく方が良いのではないか。立ち上げの時がスムーズに行けば、撮影現場でのズレはそんなに無いと思った。」と述べた。今後、多くの日本人スタッフが中国映画業界で活躍していく為に「三十日以上滞在する場合は一度、警察に届けなければならない。」と自身の体験談を交えて注意を促した。


日中映画共同製作協定が発効された事で、チャンPは「これまで以上に共同製作の機会が増えると思うので、新たに挑戦していきたい。」と意欲をみせ、柳島教授は「お互いのスタイルをどう取り込めるか。今までの作り方とは違う、これまでにない流れに期待したい。」と締め括った。


シンポジウムには、俳優・高橋克典(甲辰)を始め、共同製作に注目する多くの映画関係者が来場していた。


撮影記事:岡本早百合

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