進化する映像界の実、『TIFFマスタークラス 映像表現の今、そして未来』|東京国際映画祭2018

【ビジネス報道】 平成三十年十一月一日に東京・六本木にて開催されていた東京国際映画祭内にて、『TIFFマスタークラス 映像表現の今、そして未来』が開かれた。映像業界にとって最新で非常に高度な内容であった。話し合われたのは、A「多様化する視聴環境」、B「フォトリアルとノンフォトリアルの違い」、C「技術の進化と映像表現」とD「クロスオーバーは加速するか」の四テーマ。


登壇者はモデレータの「CGWORLD」の沼倉有⼈ 編集⻑、ポケモン シリーズ等を手掛けるアニメ制作会社「オー・エル・エム」の安⽣健ーデジタル技術顧問、本年の映画祭のCL作品となったアニメ「GODZILA」を手掛けた3DCG制作会社「ポリゴン・ピクチュアズ」の塩⽥周三 代取、報道現在でシリーズ再生回数の合計が一億回に迫る「人類誕生CG」を担当した「⽇本放送協会(NHK)」の柴⽥周平チーフ プロデューサと映画・映像コンテンツのポスト プロダクション「ソニーPCL」の越野創太ディレクタ(写真左から各位)。


Aについて塩田代取はNetflixを挙げ、「ストリーミングという媒体が番組を作るサイドでは必須。」と、動画配信事業者の存在が現況を変えた点を強調。視聴行為そのものが容易になった半面、「対価を回収する事が難しくなった。」と述べた。他のゲームとVRを媒体、つまり収益源と捉え、一つのコンテンツに集中する時間が短い為に「体験型経済」を重視する。


柴田チーフPは競争の苛烈化、世界のTV局でTV離れが起きている点に触れ、「全体的なデザインをどうユーザ(視聴者)に届けるか。」を問うた。越野Dは4K・8K・HDRのアスペクト比で考える。新技術を如何に企画に盛り込めるかをポイントとした。


BについてCGと実写のカメラ割りの違いや地平線のレベルを取らないCGと取る実写等に触れた。特に塩田代取はゴジラ内の陰の描写について「物理表現的にあり得ない。」としつつも、独特のアニメ的表現を重視した。同じ様に〇と一で表現するコンピュータの世界に対して人物等の「揺れの表現は難しい。」と様々な試みを行っている。現在はフォトリアル(精巧描写)が主流とは言えなくなってきている。TV局等は予算の関係上、ノンフォトリアルを採用している。


Cについて「(安住顧問)ディープ ラーニング、ロボティクスもCGと。」「(越野D)組み合わせと経験が重要になっていく。」と可能性を示唆。但し、現状のVR実写は制限が多いともし、更にVFXの技術者が「(塩田代取)ウーバーやフェイスブックに行く。」と、人材流出及び新たな競合誕生に警鐘を鳴らした。


DについてNHKは「人類誕生CG」でで外部連携先にスクウェア・エニックスを選んだ。理由はゲーム「ファイナルファンタジーX」の品質で描きたかったからだ。映像制作にはエプソンのPCを使った。一方、塩田代取は「ハコの定義が曖昧になってきている。ハコも考えないかんかな。」とコンテンツ(中身)のみではなく、思考を更に広げる努力ないし機会を話した。それを「面白い時代」と表現した。


十二月四日から七日まで有楽町「国際フォーラム」にて『シーグラフ アジア二〇一八』が開催。コンピュータ グラフィックスとインタラクティブ技術に関するカンファレンスと展示会で最先端の技術に触れる事ができる。


=解説=

 映像界は最早、映画・TV・DVDだけの時代ではなくなった。動画配信というストリーミング媒体は増えていき、ゲームや小説、体験イベント等のクロスメディア展開、短期作品と中長期作品と多種多様な段階に入っている。


CGはAIやロボットの相性が良く、新たに映像界を牽引する事は間違いないだろうが、核を担うのは作り手の創造力だ。他企業や自治体との協業も然り、ただ消費されていたコンテンツが実社会に影響を及ぼすストーリに進化する途中。それは働き方と生き方を変える程のインパクトを有すであろう。


今回のトークショーで感じた点は、各先駆者達が次の未来を想定しきれてない点だ。だが非常に強い好奇心を垣間見、愉しみにしている様であった。鍵となる言葉は「そのコンテンツは生きているのか、死んでいるのか」。コンテンツ自体が疑似生命体になる社会が待っている。


©2018 TIFF

記事:金剛正臣

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