【経済報道】 内閣府(総理:安倍晋三)は、平成三十年十一月二十七日に『地域の経済二〇一八』を公表した。これは年に一回、地域経済に関する報告を行うもの。本年は「地域における人手不足問題」「インバウンド需要の取り込みに向けて」「二〇一七年から二〇一八年にかけての各地域の経済動向」を纏めた。
人手不足問題では、地域毎の人手不足の状況及び要因や影響を多角的に分析し、地域経済の「新たな力」となる潜在的な労働力の活躍の状況、生産性向上の地域差についても分析をした。インバウンドでは、需要の現状整理と需要の裾野を如何に全国各地に拡げていくかについての分析を行い、未だ充分に知られていない地域の「新たな魅力」を伝える為に様々なデータを基に方策を探った。動向では、直近一年程度の各地域の経済動向を景気ウォッチャー調査からみる景況感や生産・消費の切り口から振り返った。
二十四年から二十九年のデータでは、インバウンド需要の地域的偏りが認められる。外国人旅行者数及び消費額は東京、大阪、千葉、京都に大きく偏っている 。南関東・近畿のトップ地域に対し、続く九州・東海は旅行者が五分の一である。増加寄与も南関東・近畿が圧倒的だ。
旅行者の延べ宿泊者数の上位である東京、大阪、北海道、京都と沖縄の五都道府県を「成熟圏」とし、それ以外の四十二県を「潜在成長圏」に分けた。旅行者数・旅行消費額・延べ宿泊者数について潜在圏が全体に占める割合をみると、成熟圏の半分を下回る。合計しても成熟圏に及ばない。原因は成熟圏からの日帰りや成熟圏での土産購入を挙げた。
潜在圏に訪れる旅行者の傾向は、欧州人の中高年女性、訪日三回目以上が訪れると分析。だが旅行者数等は伸びているが、肝心の消費額が比例していない。アジア諸国・地域の旅行者は潜在圏を訪れない傾向がある。また滞在日数又は訪日回数が多い程、潜在圏を訪れる。特に三回目以降の訪日を強調した。目的は「そこでしかできないコト消費」。他地域との経験の差別化を問われている。
そういった潜在圏への旅行者の情報収集は、地方観光協会や旅行会社、知人の口コミ等から。ソーシャル メディアや個人ブログは寄与せず(全体では個人ブログが一位)。観光協会や旅行会社を通じたプロモーションとネットメディアの改善を提案した。リピート意欲は、潜在圏の方が高い点も見逃せない。意欲の高い属性は若めの男性。家族連れの環境整備の必要性にも触れた。高意欲は「日本の酒を飲む」「旅館宿泊」「繁華街の街歩き」「ショッピング」。
以下はLCC就航便数の増加数の上位五位(二十八年から二十九年、数字の単位は本)。
- 成田国際空港;三千四
- 福岡空港;一千九百六十八
- 関西国際空港;一千五百三
- 那覇空港;一千四百八十五
- 新千歳空港;一千六十一
上二図では「出発前に役立った旅行情報源の利用率の推移」と「訪日外国人旅行者が滞在中に困ったこと」をグラフにしている。ターゲットとする外国人に向けて的確な情報発信が効果を発揮するだろう。特に個人ブログ・ソーシャル メディア・知人の三種に情報を掲載して貰えるかが焦点だ。その為には、旅行者が困っている点を解決できる表現をホームページ等で行う。
ターゲットの明確化も重要だ。散漫とした情報発信では効果が低い。今後十年で中東、欧州、アジア・太平洋、米国・アフリカの全地域で増加が見込める。全方位戦略が採れる成熟圏と競合する事なく、潜在圏はターゲット地域を絞って情報投資した方が良いだろう。但し、消費額の順位は中国、台湾、韓国、香港、米国。この五ヶ国・地域で全体の四分の三を占めた(二十九年)。
画像引用:地域の経済2018/内閣府
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