日本のメディアと国民は他国間との交渉の意味を知るべきだ

【政治考察】 北方領土問題や韓国の自称・元徴用工問題、尖閣諸島問題等が日本の周囲で起こっている。日々、各メディアが訴えるのは、「二島返還、四島返還だ」「早期に対抗措置だ」「領海侵入だ」と自国の利益・損失のみを訴えている。相手国の利益・損失を鑑みているメディアは在るのだろうか。これは政治の中立性で例えると、与党側の意見のみで野党の意見に触れない事を意味する。

日本は未だ他民族との交渉に音痴である。


近代の最初の交渉音痴は、明治に入る十年前に結ばれた『日米修好通商条約』。俗に不平等条約という。例えば、米国人が日本で犯罪を犯した場合には、日本ではなく、米国法で裁く。この条約によって日本に不利な「金銀交換比率」をもって国内の金が欧米列強に渡った(比率への無知)。


新しいところでは、昭和二十六年の『サンフランシスコ平和条約』や翌年の『日米行政協定(現・日米地位協定)』が挙げられる。こちらも米国人等の裁判権や国内領空においての米国の許可等が含まれる。先日、政府は羽田の発着便を増やす為に、横田空域ルート使用で米国にお伺いを立てていた。最初は拒絶されていたが、一転許可した。国内の空において米国の許可が必要である。



<自国の利益だけでなく、他国の利益に目を向ける>

 これらの諸問題は、日本に他民族との交渉の概念が抜け落ちている点に因る所が大きい。日本のメディアは大和民族の利益・損失の観点を以って考えを発信している。交渉相手の事を考えている様には感じられない。これでは世論が一方的になるので、不利な条件で条約等を締結してしまう破目に陥る。


米国はユダヤ人がサポートする元・ブルーカラー階級のアングロ・サクソン人(英国は貴族階級のアングロ・サクソン/ゲルマン民族)、ロシアは四世紀に亘る帝国の系譜を継ぐスラブ民族、有史以来ずっと中国の属国の経験が主の朝鮮民族、モンゴル民族(大元)や満州民族(大清)に政権を獲られた事がある漢民族。それぞれが歴史的背景が異なり、考え方も異なる。


そういった考え方が異なる民族と交渉を行うのに、大和民族だけの考えを他の民族に主張しても交わされるどころか、利用されて今まで幾度もの不平等条約を結んできた。


北方領土の問題であれば、現・ロシアと平和条約、詰まりは第二次大戦の終結を行おうとしている。ロシアは戦勝国で日本は敗戦国だ。この観点から見ても、各メディアは子どもの様に駄々を捏ねている様だ。当時のソ連は米英と共に日本を占領する予定であった。だが、米国ファーストにより、英ソを排除。ソ連としては納得いく筈が無い。因って、合法な二島だけでなく、違法的に全四島を実効支配し、日本との交渉を有利に進めたい。


ロシアにとっても世論は重要で、日本に二島を返還すれば、領海が変わってしまい、ロシアの潜水艦が通れなくなってしまう。そして幾度も条件を変更してきた米国による北方領土の基地建設への方針転換の可能性をゼロと踏む程、愚かではない。ロシアとして如何に自国にとって最東の地で経済的に利益を得るかが重要である。その為には日本の技術や関与が欠かせないので、経済支援を求める。

ただ、法的に敗戦国が「返せ」と言って戦勝国が返す訳が無い。メリットを与えなければ。



実力で勝ち上がるしかない

 自称・元徴用工の問題も、この観点ならば説明がつく。朝鮮人は第二次大戦後、最初期の日本占領期には準戦勝国の人間として扱われていた。実際に日本と戦争を行ってないが、朝鮮は戦勝国で日本は敗戦国なのだ。古代より朝鮮は中華思想に浸っており、朝鮮よりも遠い日本は格下と見做している。更に韓国国内の経済は疲弊し切っている。そして現政権は北朝鮮との一体化さえ目論んでいる。日本に対しては敗戦国である以上、金銭の経済援助は当たり前(ほぼ賠償金)であって、国際法上、問題があっても、敗戦国に中華思想的に頭を下げる事は無いだろう。

そういった事大主義を相手にしている。



尖閣諸島問題も同じ。第二次大戦時は中国と言えば「中国国民党(現・台湾)」、現・中国は「中国共産党」で中共。その中共が樹立した政府が「中華ソビエト共和国」。宣戦布告は国民党の蒋介石政権。その後、共産党は国民党を台湾に追い出した。『サンフランシスコ平和条約』では欧米に共産党を中国の代表と認めてなかったが、現在では朝鮮よりも弱いものの、戦勝国の意識がある。尖閣諸島は中国にとって対米国からの防衛ラインである。国民党・共産党共に漢民族である。

日本にとっては日中戦争で闘った台湾のとの関係が良好で、中国とは経済において進展を深めつつある。



この様に、交渉相手を知らずに一方的に大和民族的な価値観で主張する事は先の大戦(大東亜共栄圏)に懲りてない。それどころか、明治維新以降の不平等条約に懲りてない。米ダグラス・マッカーサーは米国に戻った際に日本を「十二歳。」と断じた。子どもの様に喚き散らすのではなく、前提となる立ち位置を理解し、相互の利益を鑑みて交渉に当たるべきだろう。ネットの時代では他国の記事を読む事が安易だからだ。世論を形成する力があるメディアにこそ、大人の視点が必要である。


写真引用:北方領土引き渡し、ロシアで賛意増加 経済協力期待か/朝日新聞

記事:金剛正臣

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