【政治報道】 日本の三権(司法府・立法府・行政府)の長が新年に当たり、平成三十一年一月四日に所感の表明が出揃った。この国のトップ達が平成三十一年を如何様に捉えているかを知る。
司法府・最高裁の大谷直人(壬辰)第十九代長官の『新年のことば』では、スポーツ界における日本選手の活躍、自然災害と組織の在り方(ガバナンスやコンプライアンス)から触れ、裁判所も組織の在り方について例外ではなかった点を強調。「安易に先例に頼るのではなく、常にその行為が適正なものといえるかを問う姿勢で職務に当たる事が求められている事に思いを致し、自らを戒めなければならないと感じています。」と自戒の念を冒頭で伝える。
十年を経過する裁判員制度につき、不断の努力が欠かせないとし、法曹三者(弁護士・検察官・裁判官)に改善策の検討と実務への活用を間接的に求めた。取調べの録音・録画や通信傍受手続の合理化・効率化等の改正『刑訴法』の本年実施については、大きな影響の可能性を伝え、裁判所の充分な準備と検討を求めた。
民訴のIT化に裁判官が積極的に関与する事も求めた。
家裁につき、「近時における家族や社会の在りようの変化にはとりわけ目を見張るものがあり」と昨今の家事事件と少年事件を憂慮。関係機関との連携強化を例に挙げた。
結びは「働き易い職場環境の整備に努め、世代を問わず、全ての職員がその能力を高め、十全に発揮することができる為の方策を進めていく事によって、組織の活力を向上させ、質の高い司法サービスの維持を図っていきたいと考えています。」とした。
立法府・参議院の伊達忠一(己卯)第三十一代議長の『議長のあいさつ』では、被災地の復旧・復興に取組み国民に対して深い敬意を表わした。昨年、参院改革の一環である「行政監視機能」の強化を各会派で合意した点を「国政への信頼に関わる様々な問題が明らかになる中、行政を適正に監視し、国民の負託に応えていかなければならない。」と主張。併せて、参院の一票の較差是正について法改正が行われ、八月の『参院選』に国民の積極的な政治参加を期待した。
そして天皇陛下の御実蹟に感謝した。
「本院は衆議院の補完・抑制・均衡の機能を発揮しつつ、任期六年の特性を活かし、長期的・総合的な視点から様々な課題について真摯に議論を重ね、良識の府として、その使命を果たして参りたいと存じます。」と結んだ。
立法府・衆議院の大島理森(丙戌)第七十七代議長の『年頭の辞』では、陛下の御即位三十年と両陛下の御結婚満六十年につき、慶賀。「皇室の弥栄と我が国の益々の発展を心より祈念致します。」と始めた。昨年の災害の復旧・復興と災害対策に尽力する。
昨夏に続き、年頭から行政府に対して厳しい注文を綴った。「議院内閣制における立法府と行政府の間の基本的な信任関係に関わる問題が明らかになった事は、極めて残念な事でした。行政府はこれを重く受け止め、再発防止に努めると共に、国会と国民への説明責任を果たしていくよう求めます。」と苦言を重ねた。
また国会議員に対しても「行政監視の任」への省慮を求めた。
他には朝鮮半島の課題に対する国際社会との連携や拉致問題、自由貿易体制等に触れ、「この新しい御代の始まりが、私達が我が国の長い歴史に思いを致しつつ、世界の全ての人々と相携えながら、自らの手で平和で幸せな新時代を創り上げるべく決意を新たにする契機となればと存じます。」と結んだ。
行政府・内閣の安倍晋三(甲午)第九十八代総理大臣の『年頭所感』では、災害復興を政府が進めていく点から始めた。経済に関して最初に触れたのは「若者」と「中小企業」だった。就職率と賃上げ率だ。本年は少子高齢化の壁を最大課題に位置付け、「未来を担う子ども達に大胆に投資し、子どもから現役世代、お年寄りまで、全ての世代が安心できるよう、社会保障制度を全世代型へと大きく転換して参ります。」と未来志向である点を強調。
再び、若者に挙げ、地方創生を推し進めたい。
外交では米朝首脳会談や日露平和条約交渉、日中新時代の到来等を「戦後日本外交の総決算」と捉え、果断に進める。皇位継承を歴史の大きな転換点とし、「平成の、その先の時代に向かって『日本の明日を切り拓く』一年とする。その先頭に立つ決意です。」と意気込む。残された任期を全身全霊で挑戦する覚悟で、「私達の子や孫達に希望に溢れ、誇りある日本を引き渡していく。その為に、私の情熱の全てを傾けていく事をお誓い致します。」と結んだ。
撮影:岡本早百合
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