激しく嫉妬する女と女と逃げる男を描く文楽が明治神宮で歴史的公演、一部無料

【社会報道】 平成三十一年二月六日に東京・赤坂にて日本財団(代表理事:笹川陽平)とにっぽん文楽プロジェクト(総合プロデューサ:中村雅之)の両者は、『~明治神宮奉納公演~にっぽん文楽 in 明治神宮 制作発表会』を開催した。第七回目となる今回は三月九日から十二日の四日間に亘り、原宿・明治神宮にて特別奉納公演として開催する。


一日に一時間の公演を三回の計十一公演。全席自由の有料席一千円で百二十席程度。後方では無料で立ち見も可。本公演は政府の助成等では実現が不可能な予算。日本財団ならではの億単位の予算を割いている。


公演する場所は、明治神宮の一の鳥居の広場。檜造りの本格的な舞台を広場に組み立てる。幅は二十㍍、高さは七㍍にもなる舞台だ。飲食も自由で持ち込み可。公演では日本酒も販売する。このプロジェクトは日本財団が古典芸能の一つである「人形浄瑠璃 文楽」の魅力を全国に発信するもの。二十七年の六本木を皮切りに大阪(難波宮跡公)、三重(伊勢神宮)と熊本(熊本城)で行ってきた。東京は浅草寺と上野公園で行った。五輪が開催される新元号二年まで回る。



<語り手が世界観を創る>

 演目は舞踊の道成寺物の名作「日高川入相花王 渡し場の段」と三条小鍛冶宗近が稲荷明神と共に名剣を打ち上げる「小鍛冶」。初心者でも愉しめる演目を選んだ。公演前には技芸員による文楽解説も用意。前者は歌舞伎でも作品化されている。徳川吉宗の次ぎの代である家重の代に初公演。


皇位継承争いが軸で、今回の「渡し場の段」は四段目の後半。皇位継承を巡る争いから、命を狙われる桜木親王が一夜の宿を借りるが、そこの一人娘・清姫は以前より親王を見初めていた。だが、親王には既に恋仲のおだ巻姫がいた。一夜の宿で親王とおだ巻姫は落ち合い、道成寺へ向う。これを知った清姫は嫉妬に狂い、二人の後を追う。その嫉妬は凄まじく、日高川で清姫は身を投げる。親王達は嫉妬の塊となった“蛇”へと変化した清姫と相対する。


文楽自体は語り手・太夫(たゆう)、三味線弾きと人形遣いの三業(さんぎょう)で構成。世界の人形劇と異なる点は「大人向け」である点。技芸員代表の人形遣いの三代目・桐竹勘十郎(癸巳、写真上)は、「(人形劇で)三人遣いは珍しい。何十年も修行しないと。」と、息を三業の三人が合わせる難しさを呟く。質疑応答で記者から文楽の魅力を問われると、「義太夫節の語りは独特。」と興味がはっきりする模様。また桐竹は太夫の事を「ありとあらゆるモノ、森羅万象を創る。」と、太夫の語りの魅力を伝えた。三味線がBGMではなく、太夫を助けてリードする存在との事。


人間国宝級の芸能

 そして演者の三業の各トップ級。「将来の日本国宝クラス。」と中村Pは自信をみせた。太夫は六代目・豊竹呂太夫(丁亥 )、三味線は鶴澤清介(乙酉)、そして人形が桐竹。内、鶴澤は既に人間国宝。本公演について明治神宮に問い合わせたところ、「特別な時に。」と鎮座百周年に関する企画として許諾した。現在も明治神宮には随所より様々な提案がある様で一件、一件を精査しながら特別企画を行っていく予定。


尚、公演に先立つ八日には原宿・竹下通りにて「お練り」を初めて行う。通常、人形は一体のところ、三体で十一時台に明治通り側の入り口から原宿側の入り口まで練り歩く。これは主催が中高生にも文楽を知って欲しいという想いから実施する。


撮影記事:金剛正臣

画像引用:にっぽん文楽プロジェクト

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