二年振りにQAを大幅変更した『「攻めの経営」を促す役員報酬』

【ビジネス報道】 経産省(大臣:世耕弘成)は、平成三十一年三月八日に『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』を改訂した。中長期の企業価値向上に対応する役員報酬プランの導入を促す為、本手引を作成している。今回は、手引の公表から二年が経過し、問合せが多かったQ&Aを中心に改訂した。


改訂のポイントは「Ⅱ.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A」につき、以下の三点。

  1. 役員報酬向けの株式交付信託に関する税務上の取扱いについて(Q16等)
  2. 事前確定届出給与である株式報酬に相当する金銭報酬(ファントムストック)を非居住者役員に交付する場合の取扱いについて(Q18)
  3. 役員の病気や不祥事により業績連動給与の一部を支給しない場合の損金算入の取扱いについて(Q73)


例えば、株式交付信託についての設問は、二十九年が「事前確定届出給与としてどのような株式報酬が対象となりますか。」、今回の改定では「株式交付信託の税務上の取扱いについて教えてください。」と変わった。以下が答えの全文。

法人税法上の受益者等課税信託に該当する株式交付信託では、税務上、受益権が役員に帰属するまでの間、委託者である導入企業のみが受益者とみなされる者として、信託財産に属する資産および負債を有し、かつ信託財産に生じた収益および費用が帰属するものとみなされます。
また、委託者である導入企業が信託財産として金銭を拠出した後、受託者(信託銀行等)が市場等から株式を取得しますが、税務上は委託者である導入企業において自社株式の取得として扱われます。

役員報酬規程(株式交付規程(規則)などの名称の場合もあります。以下同じ)の定めるところに従い、役員にはその役位や会社業績達成度等の指標に基づきポイントが付与され、退任または一定の役務の提供後、役員報酬規程及び信託契約の定めに従い、役員に株式が交付される権利が確定する日(以下「受益権確定日」といいます。)に、ポイントの累積数に応じた株式(及び株式に代えて一定の金銭、以下「株式等」といいます。)の交付を受ける権利(以下「受益権」といいます。)を取得します。

受益権の取得により、役員は株式等の財産の交付を受けることができる財産上の利益を得ますが、この財産上の利益は、役員の職務執行の対価であって、導入企業の役員報酬規程の定めるところに従い交付されるものであり、役員においては、退任時交付型の場合には、退職を起因として一時に支払われる報酬に該当するものとして退職所得(所得税法第30条)、退任時給付型以外(在職時給付型)の場合には給与所得(所得税法第28条)として扱われます。
なお、税務上は、受益権確定日に信託財産である株式が役員に帰属することとなりますので、役員において、退職所得又は給与所得として収入すべき日は受益権確定日となり、退職 所得又は給与所得の収入金額は受益権確定日における株式の時価等の金額となります。

また、導入企業においては、役員に交付される株式が事前確定届出給与や業績連動給与又は退職給与の損金算入要件を満たす場合には、受益権確定日の属する事業年度において損金算入することができます



併せて「攻めの経営」を促す役員報酬の概要につき、「未来投資戦略二〇一七」「未来投資戦略二〇一八」及び「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」の改訂等を踏まえたアップデートも行った。


本手引の概要は、以下の通り。

Ⅰ。「攻めの経営」を促す役員報酬の概要;役員にインセンティブ報酬の導入を促進する政策的意義や平成二十九年度の税制改正における措置の概要等を説明

Ⅱ.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A;株式報酬、業績連動報酬の導入を検討している企業の参考となるよう、類型毎にポイント等を解説

Ⅲ.株主総会報酬議案(例);株式報酬を付与する際に必要となる株主総会に付議する報酬議案について、一例

Ⅳ.譲渡制限付株式割当契約書(例);「特定譲渡制限付株式」を付与する際に会社と役員の間で締結する契約書について、一例

Ⅴ.株式報酬規程(例);事後交付型の株式報酬制度を導入する際に会社が定める株式報酬規程について、一例

Ⅵ.関係法令;法人税法、所得税法、金融商品取引法の関連条文(法律、政令、省令、府令)を掲載


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