国境なき記者団、福島関連報道に対する当局の圧力を批判

【社会報道】 東京電力福島第一原子力発電所事故から令和二年が九年を迎えるに当たり、国境なき記者団(RSF)は、福島関連のテーマについてジャーナリストの自由な報道を妨害しない様に日本当局に要請した。


東日本大震災に伴う津波によって引き起こされた福島原発事故は、チェルノブイリ原発事故以来最悪のものであり、一万八千五百人が死亡・行方不明、十六万人が避難を余儀なくされた。また、大量の放射性物質の放出は今日も続いている。原発事故以来、この問題について取組もうとするメディアは常に圧力と検閲に晒されてきた。


RSFは日本政府・当局に対し、福島関連の話題を取材するメディアの自由な報道を保証する様に要求した。また海外特派員・フリーランス記者を含む全てのジャーナリストが、汚染された地域や発電所及び全ての入手可能な一次データにアクセスできる様に求めた。


RSFの東アジア支局長のセドリック・アルビアニは「市民にとって、放射線レベルに関する独立した、且つ正確な情報へのアクセスは必要不可欠なものである。」と述べている。「政府は現在、九年経って尚、未だ最終的な居住地が定まっていない避難住民の汚染地域への帰還を推奨しているが、彼等が直面するであろう放射能による健康被害について、完全なる透明性が確保されなければならない。」と主張。


政府や原発関連の団体は、今夏の東京五輪開催を妨げる様な情報を封じ込めようとしており、日本のジャーナリストの多くが、それに起因する報道機関内部の忖度による激しい自己検閲の蔓延を非難している。


主要ニュース番組の作成に関わっていた元・TV番組制作者は「政府や広告主からの多大な圧力」により、最早、当該部署では福島原発からの放射性物質が与える長期的影響に関して報道をする事ができなくなった、と言う。制作者は「安倍晋三内閣から(TV局の)経営陣に対し、気に入らないジャーナリスト等を他の部署に異動させる様に求める電話が何度もかかっていた。」と語った。


平成二十六年に朝日新聞は、福島第一原発にいた所員の約九割が、事故対応の最中に待機命令が出ていたにも関わらず撤退していた事を指摘する記事を掲載して、当時の社長は公的な謝罪に追い込まれた。受賞歴もあるジャーナリストで、記事を執筆した木村英昭と宮﨑知己は、記事を書く事が出来ない部署への異動を余儀なくされ、その後に辞職。


平成二十一年から二十七年までNYタイムズ東京支局長を務めたMartin Facklerは、当局の福島に関する情報は「明らかに透明性を欠いている」と指摘。また、朝日新聞の記事取り消しは「他の主要メディアの福島に纏わる調査や報道を萎縮させる重要な契機となった。」とコメントしている。二十九年に表現の自由に関する国連特別報告者であるDavid Kayeは、日本における報道の自由に関する深刻な懸念を表明。令和元年には、報道の自由への侵害が更に深刻化していると指摘。

日本は、元年に「世界報道の自由ランキング」で百八十ヶ国中で六十七位だった。


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