重大;大メディアが報じない緊急事態宣言のデメリット

【政治考察】 改正『新型インフルエンザ等対策特別措置法』によれば、政府対策本部長たる総理大臣が「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行う事ができる(第三十二条)。


同法の目的は、新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となる様にする事(第一条)。


一週間前の三月二十八日の安倍晋三(甲午)首相は記者会見にて、「正に医療崩壊とも呼ぶべき事態も発生しています。」と国民の健康面への危惧を示しつつも、緊急事態宣言については「ぎりぎり持ちこたえている状況であると認識しています。」と記者からの質問に答えていた。


四月一日の第二十五回「新型コロナウイルス感染症対策本部」でも、安倍首相は「爆発的感染拡大いわゆるオーバーシュートが見られている諸外国に比べ、感染者数の拡大スピードは緩慢であるものの、既に医療提供体制が逼迫しつつある地域もあるとの事であります。」と先月末と同様に健康面へ危惧。緊急事態宣言の根拠となる爆発的拡大には否定的だ。


五日には「日曜討論/NHK」に加藤勝信(乙未)厚労相が出演し、「人々の暮らし、経済や社会に対する影響を最小限にしながらやっていく事が大事だ。」と述べ、緊急事態宣言による負の面、パニック等の問題を指摘した。


緊急事態宣言には、大別して二つの根拠が必要だ。健康(爆発的感染拡大・医療逼迫)と経済が根拠となる。報道現在では、各都道府県知事が自粛要請を実施し、爆発的感染の拡大は防がれていると言える。前者の根拠を満たしていない。


そして後者が重要だ。同法第一条にある通り、「国民経済に及ぼす影響が最小となる」様に本部長はしなければならない。詰まり、緊急事態宣言によって国民経済が悪化する事は本末転倒である。ここを国民は理解していないし、TV等の大手媒体は報じていない。



知事達の自粛要請でも既に経済に甚大な影響を与えてしまっている。これに国(安倍首相)が緊急事態宣言を行ってしまえば、更に経済停滞が悪化する事は受けあいだ。この事実が武漢肺炎の収束後に確定してまえば、安倍首相が法の目的を外れた違法行為を行った事になってしまいかねない。


特に同法では宣言に対し、地域を指定する。現状では東京や大阪等の大都市が対象となる為に、宣言後の経済停滞の度合いが弩級である。あくまでも宣言は、最悪な状況を踏み留める為のものだ。


だから知事達は緊急事態宣言を欲する。現状の知事達の要請は違憲性・違法性がまとわりつく。収束後に責任追及される為だ。例えば、都等への損害賠償請求の嵐となる(「自粛要請、業種指定のせいで倒産した。売り上げが激減した」)。



宣言後に国は緊急事態措置を講ずる事になる。だが同法は国民の主権を脅かす強権的との見方もある。基本的人権の尊重の条文も入っている(第五条)。

国民の自由と権利が尊重されるべきことに鑑み、新型インフルエンザ等対策を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられる時であっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施する為必要最小限のものでなければならない。


第五条における必要最小限とは、何か。

既に報道各社が伝えている様に、国ができる多くの事は事業者及び国民への要請でしかない。これでは今と大しては変わらない(第四条;事業者と国民の責務)。だが特定知事は国とは異なり、一部の事業者に対して命令する事ができる(第五十五条第三項等)。この命令等に従わない場合には懲役・罰金が科せられる。立入検査を拒んだりする個人及び法人も罰金を科せられる。



また立法府・国会では付帯決議も同法に付いた。

  • 新型インフルエンザ等緊急事態宣言を行うに当たっては、科学的根拠を明確にし、恣意的に行う事のない様にする事
  • 新型インフルエンザ等緊急事態の要件を政令で定めるに当たっては、新型インフルエンザ等が国民生活及び国民経済に甚大な影響を与える恐れの判断基準である感染者の状況、感染地域の広がり方等を明確にする事
  • 新型インフルエンザ等緊急事態宣言の決定に至る記録については、会議録等の経過記録と科学的根拠となるデータは完全に保存し、国民への説明責任を果たすと共に、次代への教訓として活用できる様にする事
  • 新型インフルエンザ等緊急事態宣言については、ウイルスの病原性、感染力等の科学的知見に基づき、感染者の状況、感染地域を考慮し、慎重に行い、その際、医学・公衆衛生等の専門家の意見を十分踏まえる

以上より同法は諸外国の緊急事態関連法規とは異なり、後手である。


緊急事態宣言には、明確な科学的根拠が欠かせない。宣言は慎重に行わなければならない。宣言時には確からしい専門家の意見を踏まえなければならない。


そして、その宣言に至る意志決定はデータで完全に残し、収束後に精査できる


特に「宣言する時期は適切だったのか」「宣言の基となった科学的根拠に間違いはなかったのか」「専門家は間違ってなかったのか」「そもそも宣言する必要性が本当にあったのか」。


現下の日本人の行動特性を鑑みれば、慎重になって当たり前だろう。斯様な条件でも、緊急事態宣言を出せる者がいるだろうか。宣言を一度出せば、「解除」にも科学的根拠が必要だ。米統領が声高に叫んだ通り、武漢肺炎は戦時だ。戦時には金融危機とは違い、経済だけでなく生命も奪われる。


緊急事態宣言を発する事は、戦時である事を発するに同じ効果・作用を生み出す。


戦時下では決して稚拙な世論で動いてはならない。それが第二次大戦の反省であろう。大戦の罪は国民にあった。

如何に世の国民や著名人が安易であるかが分かる。責任を問われないものだから言いたい放題だ。



武漢肺炎による死亡者は百人にさえ達していない。

日本の国民経済と引き替えにできる数字ではないだろう。

現段階で宣言し、経済が急降下(大暴落等)すれば、今の国民に回復できる力(胆力)はない。


世論は日本国の緊急事態宣言が、東証・大証大暴落の引き金となりかねない事を知らない。


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