SNSで勝った比のロドリゴ・ドゥテルテ 次期大統領が及ぼす日米中への影響

【社会・政治ニュース】 平成二十八年五月九日にフィリピンの『第十六代 大統領選』が行われ、犯罪の撲滅や汚職の一掃と経済成長に注力を掲げる、現ダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ(乙酉)が六百万票の次点との大差で当選した。七十一歳のドゥテルテは、選挙戦で過激な発言を何度も発し、「フィリピンのドナルド・トランプ」とも呼ばれた。フィリピンにおいて、大統領は現職が立候補出来ない制度だ。任期は六年と、日本に比べ長い。ドゥテルテの主な過激発言は以下の通り。


  • (犯罪者は)必要であれば、殺す
  • 人権を保護する法律などないと思え


本選挙で大勝した理由の一つに、他のエリート政治家にはないカジュアル感があったとされる。終盤では、庶民的なジーンズやシャツで選挙活動を行っていた。フィリピンの選挙はSNS戦(FBとTw)でもあり、JBpressが記事「フィリピン、親中の"死刑執行人"がついに大統領へ」で若い二十代の層が積極的に政治へ接触してる事実を伝えた。特にダンサーズ「モカ・ガールズ(写真下)」と元プロポクサ世界王者のパッキャオ国会議員が公然と支持した点は大きかった。


AFP通信は、選挙以前の四月二十一日に記事『フィリピン大統領選の有力候補、米豪大使に「黙れ」と警告』を配信。現政権のアキノ大統領の親米に対し、ドゥテルテは大統領になった際には、米豪との国交を断絶する用意がある旨を伝えた。ドゥテルテは六月三十日に大統領に就任する。憲法改正を含め、薬物・汚職の一掃、貧富較差の是正等の大胆な施策の六年間が始まる。




=解説=

 フィリピンは、世界GDPランクで四十位であるが、世界有数の出稼ぎ大国でもある。国民の十人に一人、一千万人以上が海外就労し国内GDPの一割を占める。GDP成長率は、近年、六から七㌫で推移。やや鈍化がみられるものの、引き続き未来有望な東南アジアの一国に数えられる。その好調な原因は、若者の多さと積極性だ。人口比でみると、日本等の先進国と異なりシニアの割合が圧倒的に少ない。正しく若者の国なのだ。鋭敏なセンスをもつ国内ビジネスマン(特に女性)が活躍し、シニアの古い慣習に引っ張られずに新規ビジネスをとめどなく立ち上げ続けている。


そんな彼らが、ドゥテルテを支持した。ダバオ市で通算二十二年間、市長として治安を良くし、外貨を獲得。強引ながらも実績を評価された。然しながら選挙期間中には、具体的な経済政策と南シナ海を焦点とした対中の外交政策は披露されなかった。経済的にフィリピンは日米のTPPと中英シルクロード構想(海)に未だ入っておらず、有望市場の為に注視されている。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設国メンバとしては、フィリピンは名を連ねている。現状で、フィリピンは中英寄りだ。


軍事的にも南シナ海の東側、太平洋の壁となっているフィリピンは要衝で、中露対日米豪の戦局を決定付ける程の重要性をもっている。国内においては、治安上で支持をされたドゥテルテだが、経済・軍事外交の点において世界を揺るがす可能性を秘めている。中国の習近平(癸巳)国家主席の任期は五年で後一年半。米国は来年よりドナルド・トランプ(丙戌)かヒラリー・クリントン(丁亥)が大統領となる。日本の総理大臣に任期がないが、自民党総裁任期は最長六年で現状では安倍晋三(甲午)総理大臣は後一年半(衆院解散等を除く)。ドゥテルテ次期大統領の治世は、日米中に大きな影響を及ぼす。


画像:

上;『フィリピン大統領選の有力候補、米豪大使に「黙れ」と警告/AFP』より引用

下;MOCA GIRLS公式FBより引用

記者:岡本早百合・金剛正臣

0コメント

  • 1000 / 1000