経産省が『二〇二〇年版 中小企業白書・小規模企業白書』を公表、ビジネスのヒント

【ビジネス報道】 経産省(大臣:梶山弘志)は、令和二年四月二十四日に『二〇二〇年版 中小企業白書・小規模企業白書』を公表した。本年の白書では、中小・零細企業に期待される「役割・機能」やそれぞれが生み出す「価値」に着目し、経済的な付加価値の増大や地域の安定・雇用維持に資する取組みを調査・分析した。

また、武漢肺炎の影響や中小・零細企業における具体的な対応事例等についても掲載した。


サービス業ならば中小企業の定義は、資本金又は出資総額が五千万円以下ないし従業員が百人以下。零細(小規模)企業は、従業員が五人以下。



<黒字企業の休廃業・解散とグローバル型>

 総論として中小・零細企業の動向は二点。「企業の新陳代謝が進む一方で、生産性の高い企業の廃業」があり、「中小企業の目指す姿は多様で、期待される役割や機能を意識した支援の重要性の指摘」。


経営者の高齢化や後継者不足を背景に、年間四万以上の企業が休廃業・解散している。内、約六割は黒字企業だった。培ってきた技術や従業員等の中小企業の貴重な経営資源を、次世代の意欲ある経営者に引き継く事を重要とした。


企業を役割や機能に着目した四類型(グローバル型・サプライチェーン型・地域資源型・生活インフラ関連型)に分類して比較・分析。非製造業の中で生活インフラ関連型が最も多いが、労働生産性は上位四分の一を除き、四類型の中で最も低かった。今後五年間の事業方針としては、生活インフラ関連型は「現状維持」が六割と最多。「成長・拡大」が八割に迫っているのは、グローバル型だった。



同業種の中小と組む危険性

 日本の中小企業は「働き方改革(残業規制や同一労働同一賃金)」、最低賃金の継続的な引上げ、被用者保険の適用拡大等と相次ぐ制度変更への対応が必要とされている。武漢肺炎(新型コロナウィルス)下ではDX化も求められている。労働分配率は高止まりの傾向で、付加価値の増大が不可欠とした。労働分配率(人件費/付加価値額)では、大企業は五割に落ち込んでおり、中小は八割前後。


新製品・新サービスの開発等と顧客に新たな価値を提供する様な他社との差別化は、付加価値の増大に繋がり、生産性の向上に貢献している。販売数量と販売単価はトレードオフの関係と考えられているが、新たな事業領域に進出した企業の四割で、数量・単価が共に向上した。


外部の技術やノウハウの活用は、中小企業の可能性を拡大し、新たな技術開発や製品・サービ ス創出のきっかけになっている。特に、異業種企業大学と連携している企業で生産性が大きく向上した。同業種の国内中小と組む企業では、生産性が一人当たり一千円を切り、最も低かった。中小企業が最も重視している経営資源は「人材」。だが、人的資本投資(OFF-JT)は他国と比べて少ない。人材への投資に取り組む事で、生産性を更に伸ばせる可能性もある。



優位性の発信・地方進出・社外の相談相手の活用

 製品・サービスの優位性が「価格に十分に反映されていない」とする企業が、約半数だった。B2CよりもB2Bが十㌽も不満が多い。中小企業が最終的に獲得できる付加価値額を増やしていく為には、優位性を顧客に発信していく取組みや価格競争からの脱却、発注側事業者との取引条件の改善が重要となる。


人口密度が低い地方部程、暮らしの様々な面において零細の存在感が大きかった。年齢層を問わず、多くの地域住民が、零細を通じて地域との繋がりを感じており、地域の課題解決に向けた中心的な役割を担う存在としても零細への期待は大きい。リーンスタートアップを地方から始める等、一つのビジネス機会を示唆する。


経営者側から見た支援機関の有効活用策として、社外の相談相手からのアドバイスを受ける事で、自社の強みや経営課題がより明らかになる。単に経営計画を策定するだけでは不十分で、外部支援も有効に活用し、計画に基づくPDCAサイクルを回していく事を重要とした。


そして零細を主な支援対象とする商工団体(商工会・商工会議所・中央会)は、一人当たりの対応事業者数が多い為、伴走型支援を行っていく上で他の支援機関との連携を重要とした。



 

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