イタリア映画「Fukushima: A Nuclear Story」の八つの間違い

【社会ニュース】 平成二十八年五月十日、東京・イタリア文化会館にて映画『Fukushima:A Nuclear Story』の上映会が行われ、監督のマッテオ・ガリアルディ、原作者のピオ・デミリア(写真上;右)が登壇した。ゲストには元・総理大臣の菅直人とイタリアのドメニコ・ジョルジ 特命全権大使(写真下)が訪れ、上映後には三名による質疑応答の時間も設けられた。


同作は、二十三年三月から二十七年三月にかけて撮影されたドキュメンタリー映画。二十三年三月十一日に東北地方を襲った未曾有の巨大地震によって引き起こされた原発事故についての作品となっている。イタリア人記者として事故後の原子力発電所に最初に入ったデミリアが取材した様子や、ビデオカメラに収めた衝撃的な映像、被災者や行政当局、政治家達へのインタビュから得た証言等により構成。漫画を挿入するという独自のスタイルで制作された。




<残酷な映像で真実を伝える>

 映画の中に使われた漫画に対し、デミリアは「日本の文化の一つである漫画をソリューションとして、よくある映像を使わない様に工夫した。」と述べ、ガリアルディは「災害の部分を描く面で、うまく表現できる様に使用した。」と話した。本編の中では漫画とは真逆である残酷な取材映像も使われており、被災者の人々は心を痛めるような内容のものや、中には動物たちが餓死したり共食いをしているもの、大量に殺されるというものもあり、動物愛好者にも辛い現実が含まれていた。


本編終了後は観客席からは拍手が起こり、それだけ心に響く映画だった事を物語った。同作はイタリアを含む十四ヶ国で放映がされた、と伝えた。しかし日本でも、という声に「すでに各民放に送ったが、返事がない。」とデミリアは残念そうな表情を浮かべた。デミリアは続けて「エンタメにしか興味のないキー局をほっておいてインターネットで正しい、良い情報を自分で見つけないといけない。」と一記者としての見解を述べた。



第三の原子力被災地

 観客からは「(日本政府は)反省していないのではないか、福島は広島・長崎に続いた第三の原子力被災地だ。」という意見が寄せられ、デミリアは「本当にその通り、これでは『政府による強制麻酔』であり無責任である。国民に、福島県民に真実を伝えるべきだ。」と政府へ正しい対応をするように訴えた。


ガリアルディは「三年前から始めたこの道のりの、ある到着点に達した、たくさんの協力のおかげでこの作品ができた事に感謝している。」と話し、デミリアも「関わってくれた全ての方々にありがたく思う。」と感謝の意を述べた。また映画を観覧した菅は、「(この映画を)大勢の日本人に見てもらいたい。アグレッシブなジャーナリスト精神がベースになっているこの作品を、一人でも多くの方が観てもらえる様にしたい。」と語った。




=解説=

 同映画の伝えたい真実について、社会性の高い内容にも関わらず若い人でも飽きがこなく観れる編集は評価に値する。然しながら、記者として基本的に押さえるべき点が欠けていた。以下に列挙する。


  1. 字幕の漢字フォントが中国フォント;読めない文字を含む
  2. 今上天皇を字幕で“平成天皇”と表記;在位中に元号を付した称号を使う事はない
  3. 今上天皇を諱でデミリオが作中で呼び捨て;到底、日本国民には受け入れられない
  4. 安倍晋三総理大臣の名の漢字を二回以上間違えて字幕;日本に対し訴えたいのであれば、行政府の長の名を間違える事は記者として劣位である
  5. 当時、政府が立ち入り禁止区域に指定した場所へ、「こういう時は、ジャーナリストは(侵入が)許される」と違法行為を行い取材;記者でも違法は違法である
  6. 全体としてイメージが多く、数値的根拠が少ない;一部、ガイガーカウンタを使用しているものの、あからさまに中国製と分かり信頼性に欠ける
  7. 東電の社員が復旧作業を行う際のアニメで、社員が額に日章旗の鉢巻きをし作業に掛かる;決してあり得ないので、意図的にイメージを誘導している
  8. 終了後にハイムの記者が挨拶するも、デミリアの第一声は「は?誰?」と社会人としての資質を疑う


以上より同映画は、社会的エンタメとしての自主制作映画の値であろう。報道資料としてのドキュメンタリ映画とは云えない。日本の報道機関から返答がなかったのは、報道資料としての質の問題や社会人的資質ではないだろうか。日本で放映したいのであれば、日本人の心情・文化に合わせて主張するべきだろう。

精査せず、自身の過ちの可能性を探らずに、一方的に日本の報道機関を否定する事には、会議的にならざるを得ないだろう。イタリア共和国の外交使節団の長で最上階級の閣下も同上映会で褒めていただけに、無念である。

但し、映画の志向性は悪くなかった。


映画『Fukushima:A Nuclear Story』上映会

 

記者:原田眞吾×撮影:金剛正臣(解説部)

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