高校の新設科目『情報Ⅱ』は国家資格級か、ゆとり世代に次ぐ「情報(ネイティブ)世代」育成

【教育報道】 文科省(大臣:萩生田光一)は、令和二年六月二十三日に『高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編・演習回答等)』を公表した。情報Ⅱは現行の「社会と情報」「情報の科学」の二科目からの選択必履修を改め、共通必履修科目「情報Ⅰ」の発展的な選択履修科目。情報Ⅱを学び、S5「創造社会/経団連」に必要な力を養う。


情報技術の発展に関する理解を深め、情報システム・多様なデータ活用・コンテンツ創造を目指す。また、情報ⅡではⅠにない情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究を設定。情報Ⅱは情報の科学的な理解に一層迫る。

これからの高校生が何を学ぶのか。大人である社会人は知っておいた方が良いだろう。



情報Ⅱの身に付けるべき資質・能力は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三柱。以下の五章で構成される。括弧内はⅠ。

  1. 情報社会の進展と情報技術(情報社会の問題解決)
  2. コミュニケーションとコンテンツ(コミュニケーションと情報デザイン)
  3. 情報とデータサイエンス(コンピュータとプログラミング)
  4. 情報システムとプログラミング(情報通信ネットワークとデータの活用)
  5. 情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究(なし)



一では、情報技術の歴史やコミュニケーションの変化等を学ぶ。キーワードはSNSや情報デザイン、ユーザビリティ、音声対話、AIと人の役割、将来の情報システム、自動運手、マーケティング等。


二では、コミュニケーションの形態やコンテンツの制作を学ぶ。キーワードはメディア プランやメディア ミックス、ユーザ インタフェース、アクセシビリティ、プロトコル分析(認知科学)、ユーザの反応を得る方法等。


三では、ビックデータの役割やデータのモデリング・分析・評価を学ぶ。キーワードは関係DBやデータ クリーニング、重回帰分析、残差分析、主成分分析、k-近傍法、分類木、クラスタリング、機会学習、深層学習、テキスト マイニング等。


四では、情報システムの流れやシステムの制作・統合・テストを学ぶ。キーワードは情報セキュリティやサービス停止時の影響、要件定義、プロジェクト マネジメント、プログラミング言語の選択、動作テスト等。


五では、情報技術により社会が受ける影響やデータ活用の為のIT活用等を学ぶ。キーワードはAIの発達や人間に求められる能力の変化、VR・AR・MR、データ解析、物理現象や数学的事象のシミュレーション、機械学習等の外部プログラムの活用等。


最もボリュームがあるのは、第三章。こちらは「数学B」が基礎となる。

「情報Ⅱ」で学ぶデータサイエンスは,数学と連携して統計的な考え方を深めるとともに,データに基づいて科学的に考えることにより,「総合的な探究の時間」などの内容を深めることにつながる


平成二十四年に数学Bは、内容を変更している。以下の「数学C」を含む三項目中、二項目以上を選択履修。

  1. 数列(数学B):数列とその和;等差数列・等比数列・数列{n2}・階差数列、漸化式と数学的帰納法;隣接2項間の漸化式・数学的帰納法
  2. ベクトル(数学B):平面上のベクトル;ベクトルとその演算・ベクトルの成分・ベクトルの内積・ベクトルの応用、空間座標とベクトル;空間座標・空間におけるベクトル
  3. 確率分布統計的な推測(数学C):確率分布;確率変数と確率分布・確率変数の平均分散標準偏差・二項分布・正規分布、統計的な推測;母集団と標本・統計的な推測の考え(推定検定)


令和四年には以下の三項目中から選択履修。

  1. 数列(数学B):数列とその和;同上、漸化式と数学的帰納法;同上
  2. 統計的な推測(数学B):標本調査確率分布;上記数学Cに同じ、統計的な推測;区間推定・仮説検定へ変更)
  3. 数学と社会生活

この様に現在の若手世代の高校時代とは、学ぶ内容の質が異なる。基礎となる数学Bは一重に統計学であり、科学的人材を育成する。


また情報Ⅱでは、国家資格「ITストラテジスト試験(旧・初級システムアドミニストレータ試験)」や同格「基本情報技術者試験」の内容にも足を突っ込んでいる。


これらを十六歳から十八歳で学ぶ。「ゆとり(デジタル ネイティブ)世代」は名目では十三歳前後までだが、上記よりゆとり教育とは見做せないだろう。実質的には現在の十八歳前後までがゆとり教育の終焉となる。それほど科目「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」はインパクトが甚大だ。S5・創造社会において人生の核となる。英語よりも国語の重要度が格段に上がる(日本語が分からないと情報を扱えない、英語は瞬時翻訳デバイスができる)。


次の世代は『情報(ネイティブ)世代』とでも言っておこう。これから育つ新・若手は令和十年を待たずに社会へ出てくる。統計データに基づく科学的見地でなくば、その時の上司や会社は原始人扱いされるであろう。今回の都知事のコロナ対策は正に原始的だった。


幸い、高校生もこれから学ぶ。後、五年掛けて社会人のゆとり世代以上は、リカレント教育を受けられたい。


記事:金剛正臣

画像:表紙,はじめに,目次,序章/文部科学省

0コメント

  • 1000 / 1000