これから小中学校はどう変わるのか|経団連の第一次提言『Society 5.0に向けて求められる初等中等教育改革』

【教育報道】 経団連(会長:中西宏明)は、令和二年七月十四日に第一次提言『Society5.0に向けて求められる初等中等教育改革』を公表した。第四革命下において情報社会(S4)から創造社会(S5)へ現在は移行している。経団連は九月入学に慎重派だ。


第一次提言では以下の四章に分けた。

  1. S5で求められる能力と教育の方向性
  2. withコロナ時代の初等中等教育に求められる取組み
  3. 高大接続の改善と大学入試改革
  4. 企業に求められる取組み


 一では、初等中等教育と高等教育にて育成する能力・素質を図で指し示した(上図)。前者では素質、基礎学力とリテラシ(判断能力や識別能力等)。後者ではリテラシ、論理的思考力・規範的判断力、課題発見・解決力と未来社会の構想・設計力となる。


教育の方向性も次の四つの様に変えたい。「ICTやEdTechを活用した児童・生徒の理解度に応じた個別最適な学習」、「オンラインによって全国で学校と家庭・学習塾等が機動的に連携し、質の高い教育を提供」、「探究型学習により『主体的・対話的で深い学び』を実現」と「社会人が大学等でいつでも学び直せるリカレント教育が充実」の四つをS5の教育と定める。



<小中にも「修得主義」を>

 二では、リモート教育の環境整備や改訂「学習指導要領」が目指す教育の実現、新・教育様式に対応できる教員の養成等を挙げる。環境整備は昨年十二月の「GIGAスクール構想」により、着実に整備を進めている。


経団連は「学習指導要領」があるものの、現状の教育現場では目標と方法が一致してないとみている。教育現場では、『学校教育法』が「年齢主義」「履修主義」の考え方を採っている為、必要な素質・能力を保障する仕組みがない。基盤となる学力が身につかないまま、小中学校を卒業する子ども達が一定割合で存在していると指摘。

目標に関して「修得主義(高校等)」をより重視した教育が重要と訴える。


S5では教員の在り方も変わる。教員は、教科を一方的に教える存在からコーチやファシリテータの役割へ変わる。来年度より「教員養成フラッグシップ大学」が開始。これは国が選定する。教科横断的なSTEAM(科学・技術・工学・リベラルアーツないし芸術・数学)教育やAI・ビッグデータ等を活用した指導法等、S5に相応しい教員養成カリキュラムを研究・開発する大学の事だ。

教員免許更新時にICTリテラシの確認も求める。


他の専門スタッフ等と連携する「チーム学校」も整備し、子ども達に必要な資質・能力を確実に身に付けさせたい。併せて、校務の効率化もICTで図る。


外部人材も活用する。「特別免許状」の活用促進に向けた規制緩和を望む。これは教員定数の加配や社会人の特別選考枠の拡大、採用年齢の上限(およそ四十歳程度)撤廃、特別免許の有効期間の延長等を指す。またIT企業等の現役社員やOB・OGをGIGAスクール サポータとICT支援員として派遣する。



求められる企業の知見

 三では、平成二十七年度から高校教育・大学教育・大学入試制度改革の一体的改革「高大接続改革」が進められおり、大学入試改革の目指すべき方向性を示した。「全大学は文理を問わず、個別入試で数学の試験や記述式問題を課すべき」や「英語四技能(聞く・話す・読む・書く)を測定する民間英語資格・検定試験の活用を大学入試に早急に導入すべき」等。


四は企業向け。「デジタル技術やハードウェアの提供」と「企業人の派遣による貢献」を求める。前者では、リモート・オンライン学習や体験型・参加型教育(AR、VR等)の為に企業がデジタル教育コンテンツの開発・提供や教育用端末の貸与・提供等を行う。後者では、小中高校におけるキャリア教育、インターンシップと自発性・能動性が重視の問題解決(PBL)型教育にも積極的に企業が協力する。


以上をS5の初等中等教育改革の第一次提言とした。


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