内閣府『中長期の経済財政に関する試算』では最良で令和十一年までGDP三㌫成長

【経済・財政考察】 令和二年七月三十一日に経済財政諮問会議/内閣府は、『中長期の経済財政に関する試算』を公表した。本年で二回目の公表。


はじめにの前に

試算の内容は、種々の不確実性を伴うため相当な幅を持って理解される必要がある

と記す。


「法政大」経済学・小黒一正(甲寅)教授は近著「日本経済の再構築/日本経済新聞出版社」において、内閣府の成長予測、的中率は二十八㌫しかないと比較している。


本府は十一年までの試算を「成長実現(政策効果;大)ケース」「ベースライン(政策効果;中)ケース」の二つで行っている。先ず、名目GDPから。二年度はマイナス四.一㌫の予測。三年度は三.五㌫。良い場合だと、十年ちかく三㌫成長を続ける事になる。平成時代は一度も実現しなかった好景気だ。この流れだと五年度にはGDPが六百兆円に達する。


普通の場合だと今まで通りの一㌫成長へ落ち込んでいく。実質GDPは二㌫近辺と一㌫未満へ落ち込む。


消費者物価上昇率は、二年度でマイナス〇.三㌫から三年度に〇.五㌫、そして二.〇㌫で推移。一方は、〇.七㌫近辺で推移。


良い場合の前提は、全要素生産性(TFP)上昇率が現状の〇.四㌫程度から一.三㌫程度まで上昇等。一定の歳出増も含む。普通の場合の前提はTFP上昇率が〇.七㌫程度。このTFPの意味は、以下の野村證券より。

経済成長(GDP成長)を生み出す要因のひとつで、資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因のこと。技術進歩や生産の効率化などがTFPに該当する。TFPは直接計測することができないため、全体の変化率からTFP以外の要因を控除した残差として推計される

また十一年度には名目長期金利(十年物国債利回り)が二.八㌫と一.五㌫と、現状のゼロ金利から共に向上する予測。



現状のデフレ(緊縮財政)策では成長実現は不可だが

 この通り、日本経済は好景気に入る余地を残している。小黒教授は的中率が低い点を指摘しており、二年八月十一日の記事『内閣府「中長期試算」(二〇二〇年七月版)をどう読むか―成長実現ケースの達成確率は概ねゼロ―/Yahoo!JAPANニュース』に良い場合の「TFP上昇率=一.三㌫以上」となる割合を計算。五年連続で一.三㌫を上回る確率は〇.二八㌫となり、この計算では実現不可。

普通の場合ならば、五年連続で〇.五㌫を上回る確率は五十八.二㌫であった。


但し、デフレ(財政緊縮)派である小黒教授は、元年度以前からの財政緊縮データで計算。インフレ(財政拡張)の場合と第四革命の成功時を検討してなかった。詰まり、今まで通りデフレ(財政緊縮)策でいくならば、上記の確率となる。経済学者は経営学者と比べ、現場の経験値が低い為、往々にして誤るもの。


本府が試算する以上、あり得ない数字ではない。好景気を実現するのは中堅・シニアではなく、若手。好景気を肌で感じた事がある最後の世代「氷河期世代」が腕を捲くる時であろう。


追記すれば、小黒教授は「世代会計」を財政的幼児虐待と称する程に若手世代を慮る学者でもある。


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