経済評論家・加谷珪一『貧乏国ニッポン』はエリートが抑えるべき経済知識

【書籍コラム】 経済評論家は信用ならない。これが定説だろう。だが、加谷珪一(己酉)は異なりそうだ。五月に出した『貧乏国ニッポン/幻冬舎』は、平成三年からのバブル崩壊による失われた二十年を分かり易く、紐解いている。元・日経BPの記者。


とても具体的で、打開策も記した。ほんの少しの経済学の知識があれば、大丈夫。もし知らない経済学用語でも調べれば充分な量しか、専門用語を使用してない。エリート ビジネスマンやエリート 官僚、大臣を狙う政治家には打ってつけの入門書だろう。一日かけずに読む事ができる。


ただ、この入門書は全てを俯瞰できる。「何故、不景気に陥ったのか」「何故、不景気から抜け出せないのか」「何故、ときの政権は失敗し続けているのか」等に明瞭に答える。大変に優れた一冊だ。


 例えば、「一九六〇年代の後半には、初の建設国債発行が行われ、これによる公共事業の拡大をきっかけに日本経済は『いざなぎ景気』に突入。」と政府による新規国債発行(貨幣発行・日本国増資)の重要性を伝える。


増税論に関しても、「筆者は政府の増税方針について積極的に支持する立場ではありませんが、消費増税が経済成長を阻害するというのは、経済学的に見た場合、正しい認識とはいえません。」と徴収した税金が、政府支出で国民所得に成る点を伝える。


今はシニアの社会保障に政府支出が寄り過ぎており、若者・若手どころか子ども(教育費)にも政府支出が割り当てられていない点を財務省のHPにある国家予算から指摘。だが、その社会保障でさえ米国の水準を下回っているので、原資(国債)不足である。日本国は先に資本金である国債を発行した後に、税金を徴収している。税金だけが原資ではない。



<二極化の正体>

 デフレも結果であり、重要なのは経済自体が回る事を主張。インフレになれば良いという話でもない点を「ディマンドプル・インフレ」と「コストプッシュ・インフレ」で説明。ハイパーインフレについては可能性が限りなく薄いものの、警戒心を求める。ここでは、政府・日銀が求めるインフレ率(現在は二㌫)を上限に国債発行ができる点が抜けた。

国債が簿記的に資本金の要素である点も抜けた。


それ以外に関しては、為替や物価の決まり方等を丁寧に説明しており、申し分ない。書名の通り、日本国民は一部を除き、総じて貧乏になっていっている。これは端的にアベノミクスを失敗と見做している。理由は一言で、政府が主権者ではないからだ。加谷は、これを側面支援と表現した。


詰まり、今までの長い日本の失敗は「企業の経営者と消費者自身」=「主権者」。

主権者が、そもそもやる気が無い、ないし過去の栄光のやり方を続けている事が主因。


シニアだけが悪いのではない。保身により、成果をずっと出せないシニア(ブランド ネーム)に追随する若手も悪いのだ。良い仕事をすれば、報酬(給与)は必ず上がる。組織に金銭的に貢献しても、報酬(給与)を上げない経営者の下に、居続ける者が悪い。


機会は大いにある。人権に真っ当なだけの経営者ではなく、適正どころか多くの報酬(給与)をくれる経営者を望もう。常に記録を更新できる様に探そう。合う、合わないは必ずある。人権に真っ当でも適正な報酬(給与)を与えなかったのが、この失われた二十年なのだから。これでは、お金を稼ぐという本末転倒ではないのか。


そして、巻末の加谷の言葉には、熱い想いがあったのであった。


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