“賢い主権者”を育てる授業、玉川学園で十六回目の模擬選挙

【社会ニュース】 平成二十八年七月五日に玉川学園にて主権者教育の一環として、模擬選挙の公開授業がメディア向けに行われた。今回公開が行われたのは高校三年生にあたる、十二年生のワールド・スタディーズのクラスの生徒二十二名と中学三年生にあたる九年生の三十一名の授業だ。玉川学園では十四年から模擬選挙の授業が行われており、今回で十六回目の模擬選挙となる。


十二年生は、授業前から生徒達の会話内で政党名やTPPの話題が飛び交う。大人でも圧倒されるだろう。五十分二コマの授業でも、集中力の切れる事がなかった。そんな生徒達は、各政党の政策を見ながら、彼女達目線での意見が述べられていた。


  • 自民の保育の受け皿を増やす?そもそも保育士が足りないのにそんな事が本当にできるのか?
  • 女性の活躍に期待する、という党が少なすぎる
  • 野与党の政策が似すぎて、差が分からない




<中学生も真剣に論議>

 彼女達の年齢でこの様な議論が飛び交うのは、少し早いのであろうか。しかし、そうしなければならない時代になってしまったのだ。各々の疑問点について討論を行った後に投票を行った生徒達へインタビュを試み、「この授業を通して、政治への関心が高まった。以前は人気やインパクトだけで決めていたのが、“本当にこの政党なら自分の意見を反映してくれるか”という意識になり、十八歳選挙の重みも同時に感じるようになった。」と話した。既に十八歳を迎えた一部の生徒達は、「期日前投票」に行った生徒もいた。これからの日本の政治を動かしてくれる事に期待したい。


一方、九年生の授業では、メディアでも大きく取り上げられている争点等に対しての議題が中心となった。


  • なぜ増税が延期になったのか?そもそも、なぜ増税を行うのか?
  • 新安保法制で、再び戦争が始まるのではないか?
  • 復興に関して東北ばかりで、熊本がないのはなぜか?


投票を終えた生徒は、どこか満足げな様子で「教育や貧困等、一つ一つの政策に対してしっかり考えながら投票した。本当の選挙に参加する様になった時も、具体策がある政党に投票したいと思う。」と話し、三年後の選挙権に向けた気持ちを明かした。



大人の視点をもつ重要性

 今回の十八歳選挙権では、新たに二百四十万人に選挙権が与えられ、七十年振りとなる大幅変更となった。授業を行った硤合宗隆 教諭は「学年によって視点が様々。それでも大人の視点をもとうとする視線が大事である。“賢い有権者”を育てる為に、この模擬選挙は大事な授業である。」とインタビュに答えた。


今回の授業で初めて保護者会にも声をかけ参加してもらう等、家族を巻き込んだこの授業が、全ての学校で行われれば、日本の未来も明るくなっていくかもしれない。


=解説=

 大人達は総じて間違っている事がある。それは年齢で知識や思考力を量る事だ。大戦後、青空教育に始まり、日本の教育は何はともあれ奏功した。知的レベルは年々、向上し大学進学率も上昇の一途。下の世代に下れば下る程、理論的な思考力が上がっている。胆力や健康面等には問題があるであろうが、知力は上がっている。


十七歳や十八歳だけでなく、十四歳や十五歳も模擬選挙を通じて、社会(公民)を学ぶ。その品質は当時のユーザ世代よりも優れている、と云えよう。故に、年齢で判断してはならない。反論せずとも心で色々思っていたのが、思春期であった筈だ。


十八歳選挙権が施行されて、一番問われているのは、彼らの先輩である大人だ。さて、我々は彼らが認める程に、政党間の公約の中身や違い、TPP、新安保法制を語れるだろうか。そもそも選挙の仕組み(参院選や衆院選、統一地方選)等を把握しているだろうか。彼らからみて、ダメな大人になっていないだろうか。

想像を絶する程、下は賢い。


記者:原田眞吾×撮影:金剛正臣(解説部記事)

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