十.四に新国立劇場が再始動、シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』から

【芸能報道】 令和二年十月四日より東京・初台「新国立劇場/日本芸術文化振興会」は、八ヶ月間の公演中止を経て、オペラ公演を再開する。再開公演は喜劇『夏の夜の夢/ウィリアム・シェイクスピア』。


新型コロナウイルス感染症対策を講じた“ニューノーマル時代の新演出版”公演として、ソーシャル・ディスタンスや飛沫感染予防に配慮した形に演出を変更して上演する。シェイクスピアの言葉とブリテンのきらめく音楽、そして神秘的な舞台美術一体となって観客の心を魅了する最高のオペラを披露する。


大人数の出演者を要し、演出の条件下で歌唱と演技を行うオペラの上演は密集・密接・密閉を回避する必要のある新型コロナウイルス流行下では容易でなく、新国においても各種検証を踏まえ、上演の道を探ってきた。再開公演『夏の夜の夢』は、デイヴィッド・マクヴィカーの原演出に基づき、感染症対策を講じた“ニューノーマル時代の新演出”公演。マクヴィカー演出を熟知する演出家のレア・ハウスマンが、オリジナル演出の舞台装置・衣裳を使用し、ソーシャル・ディスタンスや飛沫感染予防に配慮した形で新たな舞台を創出する。


本作は、大野和士 芸術監督が注力する柱の中の一つ。二十世紀の名作オペラから「シーズン開幕に、 二十世紀オペラでも最も華やかで心から楽しめる作品を」との選択。妖精の気まぐれで起こる大騒動を描いたシェイクスピア馴染みの傑作喜劇が、ブリテンの多彩な音楽で展開する本作は、英国の叡智が結晶となった傑作オペラ。


ブリテンはシェイクスピアの戯曲のテキストをそのままに、約半分に圧縮してオペラを構成。動機や和声によるドラマ進行に長けたブリテンならではの手法で妖精・恋人達・職人達の三つの世界を鮮やかに展開させる。


親しみやすい色取り取りの幻想的な音楽が聴衆を魅了し、打楽器やハープ、チェレスタの神秘的な響きが妖精の世界へ誘う。ボーイ・ソプラノによる妖精達のアンサンブルやカウンターテナー(女声に相当する高音域を歌う男声歌手)の妖精の王オーベロンは、観客を一気に夢幻の世界へ引込む、特に印象的な存在。


マクヴィカー演出のプロダクションは平成十六年のクリスマス シーズンにベルギーのモネ劇場で初演されたもの。本作の奔放な男女の機微を現代的なタッチで描いた。古びた玩具や調度品が散在するカントリーハウスの屋根裏を登場させた美術・衣裳は、レイ・スミスのデザイン。レイはヨーロッパ各地で演劇やミュージカル、オペラのデザインを手掛ける。オリヴィエ賞やオービー賞、サウスバンク・アワード等の受賞歴を誇る女性デザイナで、世界的話題作「War Horse」ではトニー賞を受賞した。


本作でも幻想的な森、妖精達の魔法の世界という劇中の世界観は勿論、舞台ならではの遊び心や美しい中に毒もあるレイ独特のセンスに満ち、舞台やデザインに興味のある人をたちまち虜にしてしまう魅力が詰まっている。薄暗い屋根裏、月の光、森と、誰しも幼い日に怖れを感じ、イマジネーションを膨らませたであろう情景は、人間と自然の神秘的な側面に光を当て、観客の心の扉を開いていく。


=STORY=

貴族の娘ハーミアは、許嫁ディミートリアスとの結婚を拒絶し、相愛のライサンダーと共にアテネ近郊の森へ駆け落ちする。

ハーミアを追いかけるディミートリアスと、ディミートリアスに片思いするヘレナも二人の後を追いかけ森の中へ。

そこでは妖精の王オーベロンと妃タイターニアが、小姓をとりあって喧嘩の真っ最中。王の命令で惚れ薬を手に入れた妖精パックは、ディミートリアスと誤ってライサンダーの瞼に惚れ薬を塗る。一方、妃はパックのいたずらでロバ頭になった職人ボトムに夢中に…。


写真:㈶新国立劇場運営財団

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