簿記が分からない百合子都政の限界、実質収支は+〇.三一㌫・通常収支は▲〇.三六㌫|令和元年度『東京都 年次財務報告書』

【財政報道】 東京都(知事:小池百合子)は、令和二年九月十六日に元年度『東京都 年次財務報告書』及び『東京都の財務諸表(概要版)』を公表した。


平成三十年度と比較し、実質収支は〇.三一㌫の増、通常収支は〇.三六㌫の減、資産は一.八一㌫の増、全資産は一.三〇㌫の増となった。実質収支は「歳入-歳出-繰越財源」、通常収支は「行政コスト計算書(PLに値)」、資産は「一般会計の総資産(BS)」、全資産は一般会計に特別会計等を加減したもの。


東京が二月に発表していた「都民経済計算(都内総生産等)」の元年度見込みは、前年度比で一.〇三㌫の増。あくまでもコロナ前の数字だ。百合子都政は悉く、東京経済に結果を残さない。年収一千万円ならば、年で十万円しか収入が増えてない。生産性が低過ぎる。東京を成長させる事ができない。一部、数値が増えている点はエリートの都職員達のお陰だろう。


歳入は八.一兆円。歳出が七.六兆円。実質収⽀は一千二百七十七億円の⿊字だった。「経常収⽀ ⽐率」「公債費負担 ⽐率」は低い⽔準で、財政の弾⼒性が⾼い状況を東京は維持している。



<東京の資産は三十五兆円、資本は二十九兆円>

 行政コスト計算書は、PLなので東京の財政運営が良く分かる。大別して「行政収支の部」と「金融収支の部」の二つ。前者では地方税等の行政収入と給与等の行政費用がある。元年度は後者の数値が下がった。金融収入も微減の百三十八億円だが、金融費用を占める公債費(利子)が六十五億円減り、五百八十億円となった。金融収支だけで視ると、四百五十九億円のマイナスである。


元年度の特徴は、都内総生産の見込み増加率よりも資産の増加率が勝った点。流動資産・現預金の五千五百三十九億円、固定財産・普通財産の一兆五千九百七十七億円と前年度比で十㌫ちかく増加させた。一方の負債は、流動負債・その他以外は軒並み減少。都債に至っては十六.七㌫も減らし、三千二百六十七億円となった。資産自体は、三十五兆一千八百八十二億円。


資本の部に値する「正味財産の部」は、二十八兆六千七百七十四億円で、三.一㌫の増。


CF計算書も概ね良好。「社会資本 投資整備活動」と「財務活動」はマイナスだが、「行政サービス活動」の税収でしっかりと回収。差額は四百十九億円で、二百二十七.三四㌫の増。前年度までの繰越金を合算すると、五千三百十七億円で、八.五八㌫の増。


政策が如実に出てくるのが、PL。BSとCFは歴代の政策を都職員がきちんと受け継いで仕事をしている証である。よってPLを視る限り、百合子都政は経済的な結果を残してない。


 ある程度は良好な財務諸表だが、懸念も示している。コロナ禍だ。「都は、景気変動に伴う⼤幅な税収減や将来の財政需要等に備え、基⾦を計画的に積み⽴てると共に、都債残⾼を継続して圧縮。これまでに培ってきた財政対応⼒を発揮し、新型コロナウイルス感染症対策を迅速に実⾏」としている。


都の貯金である「財政調整基金」は、元年度末時点での残高は九千三百四十五億円だった。だがコロナ禍で、総額一.六兆円規模の緊急対策を実施。内、八千六百三億円を本基金より繰入れ。差し引くと、七百四十二億円。百合子都知事が一兆円を略使い切った事を報じた。


一方、概要版では二年度末の残高見込みは一千七百四十一億円。九百九十九億円も多い。これは元年度決算剰余金の義務積立額・七百二億円を含む。それ以外に、緊急対策の核である緊急融資の貸し渋り等により、実現できるものと思われる。事実、国の緊急融資よりも数段、東京の審査基準の方が厳しい。



最悪は都債増発と増税

 また他の基金を含めて「三つのシティ実現に向けた基⾦等を含む残⾼は、財政再建期(平成十一年から)を上回る⽔準を確保」としているものの、この基金は元々「社会資本等整備基」という勘定科目(区分)。その名の通り、特定目的なので用途は概ね決まっている。先の「財政調整基金」の様なフリーハンドでは行えない。


東京の職員も愚かではなく、きちんと「将来の(税の)減収局⾯等に備え、都債の発⾏抑制基調を継続し、都債発⾏余⼒を蓄積」と、基金で不足する部分については都債を発行する意向がある。都債は国債とは異なり、都民が直接に返済をしなければならない。


将来世代に⼤きな負担を負わせずに、都債の機能を最⼤限発揮する事が可能」とあるが、これは誤解を招く。今回の様な野放図な緊急対策を打てば、都債の償還期限に借り換えで伸びていき、支払利息の分だけ、総支払額が増加の一途を辿る。この場合、受益を上回り、氷河期世代以降の負担は大幅に増加する(都税の増税等)。既に氷河期世代とゆとり世代は負担超過。ここに更に東京の負担が圧し掛かる可能性が百合子都政ではある。


結びに「基⾦や都債といったこれまでに培ってきた財政対応⼒を発揮すると共に、事業評価の取組を⼀層強化し、健全な財政基盤を堅持していく事で、都政に課された使命を確実に果たしていく」と都職員の力が欠かせない。財務・会計に疎い百合子都知事が大人しくしていれば、次代都知事と都職員で乗り越えられるだろう。


何よりも、来年に発表される二年度の財務諸表が如何様な結果となるかを若き都民は注目されたい。

問題児の後処理をするのは、若手なのだから。


次は最低でも簿記が分かる、帳簿を読める政治家を推そう。


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