大阪市民は更に貧困へ、若手が鍛えるべき政治リテラシ|住民権利が最大の大阪市解体(大阪都)構想

【政治考察】 令和二年十一月一日に『大阪市解体』に関する住民投票が実施される。十月十二日が告示。特別区を設置する為の住民投票だ。過半数の賛成を以て、現・大阪市(市長:松井一郎)を廃止し、特別区を設置できる。「大阪都」とはならない。


大阪都となる為には、特別法の制定が必要となり、国会が決める。大阪府議会や大阪市会がつくれるのは、条例。特別法はつくれない。六大市(東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)は、市議会ではなく「市会」が正式名称。東京市は廃止済み。


大阪都は単なる名称の変更で行政の実務に関しては、何ら市民の権利的影響を与えない。だが、大阪市解体となると、大阪市民は現行法で最大の自治権を有す「政令指定都市」の権利を大阪府(知事:吉村洋文)に譲渡ないし差し戻す事になる。大阪市の住民にとっては自治権の大幅な縮小だ。


東京都(知事:小池百合子)の特別区が典型的だろう。二十三の特別区は国内で住民の自治権が最小。基本は都が決める。区の住民である区民は、中央区の「築地移転問題」や江東区の「地下鉄延伸問題」等の様に自身達で決める事ができない。都、特に都知事が決める。



<大阪市民の意見は十割から三割に減少>

 大阪維新の会(代表:松井一郎)が声高に叫ぶ「二重行政」は、大阪市民に負の効果を与える。九月十九日に「京大」大学院・藤井聡(戊申)教授と中小企業診断士・三橋貴明(己酉)が、大阪府民が被る負の効果をYTにて説明している。


「年間で四千億円の経費削減を実現する。」と松井市長(甲辰)は、訴えていた。だが「京大」大学院・川端祐一郎(辛酉)助教授は「過去の法定協議会等で示された資料から、多くみても年十三億円程度しかない。精査すれば一億円程度になるという指摘すらある。」と、大阪維新の会の虚偽を暴いた。


大阪維新の会は、大阪市解体の為の地方政党。改憲の為の国政政党・自民党が例。


二十三の特別区とは異なり、大阪市は大阪府に占める人口が少ない。大阪市は二百八十万人であり、大阪府は八百八十万人。大阪市民の比率は三割程度。一方の二十三区は九百六十万人で、都は一千四百万人。区民の割合は七割。


この比率は何を表すかと言えば、議会で意見が通り易い比率だ。区民は都議会で二十三区の総意として意見を通し易い。七割を代弁する都議がいる。だが、大阪市を解体した後の府議会では、現・大阪市民の意見は三割しか通らないとみて良い。現・大阪市では十割通るのに、三割に意見を減らす事になる。

これは大阪市の若手にとってマイナスでしかない。



東条内閣と同じ様に

 そもそも二十三区は、昭和十八年まで東京市であった。地方議会「東京市会」があった。だが、東条内閣が内務省による統制強化の為、東京市民の自治権を奪った。東京市会の消滅である。東京市民の意見を直接に通す場が無くなった。


これは無論、大東亜戦争の為である。事実、都へ移行後の各区長は地方公務員「吏員」から国家公務員「官吏」に変わり、統制力が強まった。略、東条内閣の直轄地だ。


大阪市解体で「副首都ビジョン」も出しているが、明治元年に東京奠都され、京都との東西両京となっている。令和でも東西両京で、「奠都」は都を定める事を表す。その意味では東京が既に副首都だ。何よりも「帝都」でない都には違和感があるだろう。これは法律の問題ではない。日本人としての歴史・文化の問題。「みやこ(都・京)」の問題。首都機能と帝都は別だが、矢張り、切り離しがたいのではないだろうか。



この様に松井市長と吉村知事(乙卯)は、東条内閣時に起きた東京市の解体と同じ様な事をしようとしている。「大阪市会」の消滅によって、大阪市民は意見を通す場が事実上、無くなる。まだ吉村知事は若い為、自身が何をしようとしているのか、よく分かってないのかも知れない。


大阪市を解体し、大阪市民の権利を大阪府へ与えれば、市内の行政サービスが減少する。行政サービスが減少すれば、市民の所得は自ずと減少するもの。大阪市民は、更なる貧困化へと向かう。若き大阪市民は、自身が与えられている権利(自治権)を手放してはならないだろう。

東京の二十三区民より遥かに大きい権利(十割)を有しているのだから。


それを三割にして良いか、否かが十一月一日に決まる。


記事:羽田野正法

画像:FPhime、大阪都構想って何? 大阪ダブル選、推進・反対で激突/日本経済新聞

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