自民の中堅・シニアがコロナ後のマクロ経済をリカレント|第四回『ポストコロナの経済政策を考える議連』

【政経・財政報道】 令和三年三月二十四日に国会にて自民党「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟(会長:安倍晋三)」は、第四回目となる勉強会を実施した。今回の講師は、第一生命経済研究所・永濱利廣(辛亥)首席エコノミスト。


結論は、政府の債務額が増大しているものの、財政出動の余地が日本にはある点。


冒頭に安倍会長(甲午)は「非正規・中小企業・小規模事業者の皆様は大変に厳しい状況であるという事で御座います。その中で如何に経済を支えていくか。マクロ政策がどうあるべきかを皆でしっかりと考えていきたい。」と述べた。


次期総裁候補の岸田文雄(丁酉)代表代行は「新たな経済政策が必要であると、先日に(菅総理へ)提言させて頂いた所ですが、何れにせよ、これからコロナとの戦いに打ち勝ち、アフタコロナ時代を迎える。その際は再び日本経済、しっかりとした成長を確保していかなければならない。これからも安倍総理と共にアフタコロナ時代の経済を皆さんと共に考えていきたい。」と勇ましく語った。

政界では総理経験者を前・元を付けずに、そのまま総理と呼ぶ。


<コロナ後は総需要の刺激策>

 確かに現在はコロナ期であるが、コロナ後を見据えて菅内閣以外が動く。コロナ期を支える菅内閣とその後の内閣の連携だ。もし、準備無しでコロナ後を日本が迎えたならば、世界経済の超回復に追い付けずに失墜するだろう。永濱首席は何を話したのか。齢五、六十代の国会議員を前に高度な経済学を披露。自民の国会議員達は真剣に学んでいた。


コロナ後の政策は今とは異なり、「金融・財政政策を強調した総需要刺激策。これが非常に重要。」と永濱首席は話す。そもそもの日本の問題は「企業部門がお金を貯め込んで使わない。」と断言。IS(貯蓄投資)バランス等を例に説明した。


世界経済は構造的に変わってきている。永濱首席は繰り返した。先進国を筆頭にのインフレ率が上がり難くなっている。依って「財政を拡大する余地がある。」と述べる。日本は金融政策「流動性の罠(IS-LM分析)」に陥っている。政府・日銀はインフレ率の二㌫をずっと目指しているが、現在よりもプラス十兆円の需要超過をもって二㌫に達すと計算。この分を財政拡大の余地とする。

金融政策の方は各種限界に達している為、財政政策となる。



経済較差を止められない理由

 コロナ期においては、国民への「資金繰り支援」「生活保障」を重要とした。現・菅内閣の方向性は正しいものの、給付金等の保障の観点で不足気味である点を指摘した。GDPの規模が日本の四倍ある米国と比べた場合、国民への保障分としてプラス十兆円の計上が可能とした(報道現在)。


雇用政策に対しては、スキルアップの為の「就業支援」強化を推した。


世界経済が構造的に変わってきている理由も伝えた。「社会主義国のグローバル市場参入」である。それまで世界は東西に分かれていたが、平成バブル崩壊時にソ連が解体。以降、ロシアと中国等が新たなプレイヤとしてグローバル市場に参入し、現在に至っている。


社会主義国は人件費等が資本主義陣営よりも安く、当時の日本企業も大いに社会主義陣営の国々に流れた。その結果、物価・賃金等が上がり難くなっている。「そうなると、先進国の中で経済の較差が拡大する。」と較差拡大が社会主義国の市場参入である点、消費性向の低い富裕層による過剰貯蓄が起こり易い点を説明した。後者への政府投資が問題である。


更に後者に関しては岡村健司(辛丑)財務官も認識している様で、非・富裕層へ財政政策をターゲッティング移行させたい模様。



建設国債に並ぶ新説「人財国債」

 コロナ後においては、総需要の刺激策。「今の日本経済の需要不足の状況というのは、経済を人の身体に例えたら、栄養失調の様な状況。栄養失調の人達に対して肥満を恐れて、栄養を与えない。」と比喩。財政緊縮派を一蹴した。経済が正常化しない理由は、企業部門の貯蓄なので、その間は政府が下支えする事を念押した。日本経済は政府債務だけではない。企業・家計部門を合算(ISバランス等)して勘案すべきとの当たり前の論だ。


また「MMT理論」に関しては主流の「ケインズ経済学」と考え方が然程、変わらない点も伝えた。世界の経済学は「新古典派経済学」「マルクス経済学」「ケインズ経済学」の三つ。


振向けるべき財政は、菅内閣が推す「グリーン」「DX」と「人財投資」。ここで永濱首席は「建設国債」を例に挙げ、人財へ投資をする国債(人財国債)への提案も行った。これは新説。現状では、「特例公債」と呼ばれる赤字国債で人財へ投資しており、規模も小さい。建設国債は赤字国債ではない。依って、黒字国債である「人財国債」ならば大胆な投資が可能という考えだろう。


最後に財政に影響を与えるエネルギ問題の触れ、エネルギ立国の可能性を伝えた。詳細は講義内容は以下の動画より。


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