コロナ後の財政、戻る平時が違う|第七十回 財務省『政策評価懇談会』

【財政報道】 財務省(大臣:麻生太郎)は、令和三年四月九日に第七十回『政策評価懇談会』の議事録を公開した。同懇談会は三月八日に開催。メンバは略民間の十一名。同省の事務次官や国税庁の長官も出席。コロナ後を見据えた。


国際公共政策研究センターの田中直毅(乙酉)理事長は「既に皆さんから出ましたけれども、平時に戻るという事なんですが、従来の平時とはもう既に違う所に戻る訳です。(政府)債務のGDP比率は大変な事になっています。従来通りの平時の運用がこれから続くという事になりますと、どう考えても“財政の崖”というものを意識せざるを得ない。


戻る平時が従来とは全く違う様相になっているから、これまでの財政支出・金融政策運営そのものを今の時点で点検する必要があると思っています。ケインズ政策というのは我々、経済学の教科書で学んだ時から人為的な手段による不況の克服策という事であった訳ですが、日本に定着したケインズ主義は決してそういうものではなかった訳です。


不況を克服する為ではなくて、現在ある職場を維持する為の枠組みとして“日本型ケインズ主義”というものが定着してしまった。それから、ある時期からは金融政策についてリフレ派と言われる人達のボイスが非常に強くなる。日本型ケインズ主義にしろ、リフレ派の主張にしろ、クローズド エコノミを前提とした議論です。


私は、どこかで日本経済が崖か、少なくとも破綻の入り口に立たざるを得ないと思っている。この事自体を検討材料としてアカデミでもそうですが、もう少し広く国民的にも今までの財政とか金融の運営の仕方に戻る事が平時なのかというのを議論する必要がある。」と経済構造がコロナ前と変化している述べた。


四十年後の来る二〇六〇問題

 国立社会保障・人口問題研究所の田辺国昭(壬寅)所長は「財政に関わる更なる課題は、単にコロナという所の短期だけの問題ではなく、中長期の問題で御座います。間違いなく財政の問題を難しくしているのは、社会保障の問題です。


社会保障におきましては、二〇二五年問題というのと、二〇四〇年問題というものが言われております。それに二〇六〇年問題というのが第三フェーズとして出てきている所で御座います。二〇二五年問題というのは、要するにベビーブーマーが後期高齢者になるという事で、負担を二割にする方々をかなり大幅に出して頂いたという事で、一つ、完璧だとは思いませんけれども、展開した所で御座います。


ただ二〇四〇というのは、ある意味、高齢者人口がマックスになっている所、それから二〇六〇位になると、人口減少が全ての年齢階層でスタートしていつつも、高齢化率が上がり続けるという時期で御座います。こういう長期的なものと短期的なものとを評価の中に付け加えて頂いて、短期の施策が長期の解決に果たして寄与しているのかどうかという様な事も御検討頂ければと思っている所で御座います。」と述べた。


子ども・若者・若手

 座長を務める「慶大」の吉野直行(庚寅)名誉教授は「広報活動で、これからは今までの紙ベースとかインターネットで発信するというのではなくて、TwとかYTとか、若い人達がよく見る所の媒介手段を使って、財政の現状をきちんと説明していく事が重要ではないかと思います。


またデジタル化では、官と民の両方がやっていかなければいけないですし、特に教育の分野ではデジタル化を上手く使えるかどうかによって相当大きな影響が出てくると思います。御承知の様に、アジアの中で数理能力を比べると韓国が一番であり、二番目がシンガポールです。日本は三番目になってしまいました。


昔は数理能力では、日本がいつも断トツでトップだったんですけれども、だんだんに日本の折角の良い教育水準も落ちてきていますから、デジタル化を契機に、教育の所も高度利用を進めて頂く必要があると思います。」と若者・若手への財政説明と子どもの教育にも注意を払った。


文科省は国際学力調査として「PISA/経済協力開発機構」と小四・中二で分ける「TIMSS/国際教育到達度 評価学会」をHPにて公開している。前者の平成三十年調査で日本は「読解力」が十一位、「数学的リテラシ」は一位、「科学的リテラシ」は二位だった。後者の令和元年調査で「算数・数学」の平均得点は小四が五位、中二は四位。「理科」では小四が四位、中二は三位だった。


国債

 財務省の大鹿行宏(癸卯)理財局長は「令和三年度の国債発行総額は極めて大きく、過去最大となっています。規模で言いますと、二百三十六兆円で御座います。令和二年度は三次補正後までで二百六十三兆円。実は令和元年度以前が百五十兆円程度で推移しておりましたので、正にコロナ禍によって国債発行、或いは管理というのは、ちょっと違った局面を迎えたという様な認識をしております。


ただ幸いな事に、七月から大量増発をしている訳ですが、これまでの所、入札は順調に推移しておりまして超長期も含めて金利は安定的に推移しております。※上図は市中発行額。国債発行総額ではない。


令和三年度の国債発行計画の策定に当たっては、なるべく市場への影響を緩和するという観点から、昨年の二次までの補正で増発した年間の発行額の平年度化ベースよりも減額をするという事を一つの目標として取組みまして、その中でも短期国債・TBを減額して四十年債・超長期の国債を増やすといった対応を図りました。本当に小さな一歩を踏み出したと思っております。」と述べた。


 最後に同省の太田充(庚子)事務次官は「このメンバでお話を頂くと、大変有難い事に財政再建、或いは財政の健全化について大変御理解もあるし、御理解がある分、余計厳しく頑張れという叱咤激励を受けるという事だと思っているんですが、コロナだからこれだけ悪くなった面がある事は事実として、それ以上にもっと根本的に中長期的な人口構造の問題、或いは二十年に亘って長期金利が低下しているとおっしゃられましたけれども、そういう経済なり社会構造の問題の中でどうするかというのが最大の問題だという事だと思っています。」と述べた。


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