【社会報道】 東京都(知事:小池百合子)は令和三年五月二十一日に原告・グローバルダイニンググローバルダイニング(7625.T2)、被告・都とする『憲法違反事件』について答弁書を東京地裁へ提出した。結語は「原告の請求には理由が無いから、速やかに棄却されるべきである。」とした。
都の要請に対し、原告は正当な理由(『特措法』四十五.二及び三)を以て営業。この主張を都は「失当(的を射てない)である」とし、「原告は、本件要請に対して応ぜずに、その経営する飲食店において二十時以降の営業を継続したが、本件要請に応じなかった事について正当な理由はなかった。」と反論した。
また「厚労大臣告示の規定は、法律の委任の範囲を超えている事、又は立法事実を欠く事」と「『特措法(同)』の規定は、営業の自由に対する過剰な規制であって違憲である事」との原告主張を都は「主張自体失当と言うべきである。」とした。
原告は適用違憲として以下の四点を主張。
- 都の命令は、緊急事態宣言発出の基準(ステージⅣ)を下回った状況で発出。“緊急事態において”の要件を欠く事
- 原告の感染症対策を検討する事なく発出されており、『特措法』の適用において営業の自由を侵害し違憲である事
- 原告の発信について理由として挙げる事柄は表現の自由を侵害する事
- 時短要請に従わなかった店舗中、原告店舗を狙い打ちしたものであり、公平ではない事
以下は都の反論。番号は上記に符合。
- 緊急事態宣言は政府対策本部長の権限。「緊急事態措置期間」の命令発出であるから、何ら違法ではない
- 本件命令には高度の必要性がある。営業の自由に対する制約は必要最低限に止まるから合理性がある(基本対処方針)。過剰規制である旨の原告の主張には理由が無いと言うべきである
- 何ら原告の表現の自由を侵害するものではない(以下、考察にて)
- 法の下の平等に反する旨の主張は失当である(同上)
=考察=
一では期間内であるが、宣言解除が判明している段階での時短命令なので、“緊急事態において”の要件を欠くと原告は主張している。詰まり、命令時に命令を出す程に緊急事態であったのか、否か。命令の必要性を問われている。これに都は答えてない。
二では都が原告の感染症対策を検討したか、否か。公共の福祉を掲げて「都内全ての飲食店等に対する立入検査は実現性がない」と都は反論。今回の命令先は三十二店舗なので、命令以前に立入検査する事が可能。次に「仮に行ったとしても営業時間の短縮と同等の結果を得られる事の保障はない」との反論。営業時間の短縮(二十時閉店)の科学的結果・効果とは何であろうか。
三で都は以下で反論。
- 「(原告は)二十時以降も対象施設を使用して飲食店の営業を継続し、客の来店を促す事で、飲食に繋がる人の流れを増大させ、市中の感染リスクを高めている」
- 「緊急事態に応じない旨を強く発信する等、他の飲食店の二十時以降の営業継続を誘発する恐れがある」
- 「社会的影響力も大きい上場企業である原告が時短要請に応じない事を発信して公然と営業して売上を伸ばし、不公平感から他の事業者も時短要請に応じない者も出てきかねない事、時短要請という緊急事態の実効性が低下する懸念がある事を指摘したものであって、何ら原告の表現の自由を侵害するものではない」
下線部は営業の自由及び表現の自由であるが、原告の両自由を以て都は反論してしまっている。国民の自由の制限について合理的(科学的)根拠が無いと論理が破綻する。『憲法』十三(公共の福祉に反しない限り)及び二十五(公衆衛生の向上・増進)に基づき、「市中の感染リスクを高めている」とあるとしても、二十時以降で開店した場合の科学的根拠が求められる。
個別命令自体が不公平である。公平を期するのであれば、一律命令となるべき。要請に応じる応じないは、そもそも自由である。
四では「時短命令は事業者の規模(経営する店舗数)等を考慮して段階的に行った。時短命令を発出できたのは、七事業者、三十二店舗。内、二十六店舗が原告の経営するものであった。従って、原告店舗を初めから“狙い撃ち”して本件命令を発出した事実はなく、法の下の平等に反する旨の主張は失当である」と都は反論。
下線部で「規模等を考慮して」とある。都は狙って命令を行った旨を記している。詰まり、公平ではない旨を自ら主張している。公平と主張したいのであれば、考慮時の科学的データが必要だろう。
都の指定代理人は松下博之(都職員)、石澤秦彦(同)、加登屋毅(弁護士)等。
記事:羽田野正法
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