都は複式簿記・発生主義会計「B/S」「A/C」「C/F」|都財務の入門.1

【社会考察】 都知事の仕事は『地方自治法』第百四十九条に書かれている。一番目は条例案の提出で、二番目は予算の調製と執行だ。都知事が良い仕事をしているか否かは、良い条例と優れた予算を作る事だ。その為には都の財務諸表を理解しなければ、都知事が優れた仕事をしているか否かは判断できないだろう。


小池都知事は平成二十八年八月に就任したので、本年度の半分も担任してない。補正予算を提出したものの、真の実力は来年度の予算からとなる。昨年度の『東京都年次財務報告書』は九月に公表された。来年九月で本年度、再来年九月で来年度に仕事振りが判明する。それまでに都知事を解職できる者(地自法 第十三条第二項)として、『東京都年次財務報告書』を理解し分析できる様になれば、彼女の仕事の善し悪しを判断できるだろう。

審判するのは都民である。




<ROEは二.五㌫>

 まず都は国と異なり複式簿記・発生主義会計を採用している為、通常の企業の様に簿記レベルで、ある程度が把握できる筈だ。「貸借対照表(B/S)」と「キャッシュフロー計算書(C/F)」はそのまま、「損益計算書(P/L)」は「行政コスト計算書A/C)」となっている。また「株主資本等変動計算書」は「正味財産変動計算書」となる。尚、『東京都年次財務報告書』は普通会計だ。特別会計は含まれてない。

以下の全数値を百億円未満で四捨五入。



決算概要

 二十七年度の歳入総額は七兆一千九百億円で、前年比で四.九㌫増えた。歳出総額は六兆九千三百億円で、五.八㌫増えた。歳入から歳出を引いた内、九十九.八㌫を繰越し、実質収支は六億円となった。



B/S(三月三十一日現在)

 総資産額は前年度比で四千億円が増加し、三十三兆四千七百億円。負債は三千三百億円が減少し、七兆三千七百億円。いわゆる純資産に相当する「正味財産」は、七千四百億円も増加し、二十六兆一千億円(後述)。

自己資本比率は、七十八㌫と非常に安全性が高い。都の自己資本比率は「原油、天然ガス鉱業」の業種平均に値する。




A/C(二十七年四月一日から二十八年三月三十一日)

 通常と特別収支に分けられる。内、通常収支は行政と金融収支に分ける。地方税を核とする行政収入は六兆五百億円。給料等を含む行政費用は五兆三千二百億円。金融収入は百五十三億円で、都債の支払利息を含む金融費用は八百九十三億円。通常収支の差額は六千六百億円。特別収支と合算し、当期の収支差額は六千四百億円となった。

所謂、売上高対経常利益率は、都の収入合計対通常収支差額で計算し、十.九㌫。銀行・信託業には及ばないものの、運輸サービス業の平均を超える数値だ。




C/F(同上)

 企業は営業活動、投資活動、財務活動の三類で計算する。都はそれぞれ行政サービス活動、社会資本整備等投資活動、財務活動の三類。本業によって稼ぎ出した資金の増減である行政活動は、収入が六兆七百億円、支出が五兆二千五百億円。差額は八千百億円とプラス。都の取組み状況を把握できる投資活動は、収入が六千六百億円、支出が一兆二千四百億円。差額は五千六百億円のマイナス。行政・投資活動の資金繰りを表わす財務活動は、収入が千六百億円、支出が四千四百億円。差額は二千八百億円のマイナス。

FCF等の分析指標は税金が絡むので、割愛する。現状の都は、五輪に向けて投資を強め、借金である公債費の元本を減らしている。その為に投資と財務活動がマイナスだ。この流れは一時、変わらないだろう。だが、投資の結果としての行政活動はプラス成長をしており、現状では悲観するものではない。



正味財産変動計算書(同上)

 企業では株主資本の書類だ。都の正味財産は二十六兆一千百億円。前年度比で七千四百億円の増加。勘定項目は七つ。「開始残高相当」「国庫支出金」「負担金・繰入金等」「受贈財産 評価額」「区市町村等 移管評価額」「内部取引勘定」「その他剰余金」。「開始残高相当」は本書を導入した十八年度のもの。この内、「その他剰余金」が六千四百億円も増加している。

ROE(自己資本利益率)は、当期収支差額を正味財産で除し百を乗じ、二.五㌫。非常に効率が悪い組織だ。マネジメント効率が中小企業並みである。正に都の生産性が問われる根源だ。



 都の財産は都民の財産でもある。都民の財産を預かる都の職員達が、上場企業並みの仕事を出来る様になれば、世界都市トップの都内総生産は大いに高まり、日本GDPに貢献する事であろう。その為には都職員が各々、現状の仕事レベルを認識する必要がある。


画像引用:平成27年度「東京都年次財務報告書」<本編>

記者:羽田野正法

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