「給食費」「高校授業料」は無償化、「大学授業料」も減免拡充|立憲『子ども総合基本法』

【教育・政治報道】 立憲民主党(代表:枝野幸男)は、令和三年五月三十一日に議員立法で『子ども総合基本法』を衆院に提出した。二十七日に骨子素案を発表していた。正式名称は「子どもの最善の利益が図られるための子ども施策総合推進法案(仮称)」。


子ども省の設置検討が核。庁ではなく、省。担当する大臣は内閣総理大臣。


国民の努力義務や財政上の措置も記した。予算は、子ども関連費のGDP比を一つの基準とする。子育て世代が安心できるものとして小中の「学校給食の無償化」、高校等の「授業料等の無償化」、大学等の「授業料等の減免措置」拡充、「給付型奨学金」拡充を記した。同党は、保護者の子ども教育費を大幅に減額したい。


以下に五章構成の法律文を簡略化し、全容を掲載する。


第一 総則

  1. 目的;この法律は、子どもの最善の利益を図る。併せて人権が保障され、子育て支援社会を実現する為に『児童の権利に関する条約』の理念に則って子ども施策に関する基本理念を定める。国等の責務も決め、基本的施策や子ども省の設置の検討等を定め、子ども施策を総合的に推進する事を目的とする。
  2. 定義;「子ども施策」とは子育て、教育、福祉、保健、医療、雇用、少子化対策、その他の分野における子どもに関する施策。子どもが成人になった後の関連する施策を含む。
  3. 基本理念;子ども施策は、下記事項を基本理念として行われなければならない。{① 全ての子どもの最善の利益が図られる事が前提。② 全ての子どもの命を守り、その生存と安全を保障。③ 全ての子どもの教育を受ける権利を生まれ育った環境に関わらず保障、併せて子どもが成長する環境を整える。④ 全ての子どもの人権を保障し、子ども一人ひとりが個人としての尊厳が重んぜられ、その意見を十分に尊重。⑤ 全ての子どもが不当な差別的取扱いを受ける事がない様にする。⑥ 子どもが成人になった後でも①から⑤までの事項の趣旨を踏まえて行う。}
  4. 国の責務;国は基本理念に則り、子ども施策を策定し、及び実施する責務を負う。
  5. 地方公共団体の責務;地方公共団体は基本理念に則り、その区域内における子ども施策を策定し、及び実施する責務を負う。
  6. 国民の責務;国民は、子どもの最善の利益が図られると共に、その人権が保障され、子育て支援社会の実現に寄与する様に努めなければならない。
  7. 法制上の措置等;政府は基本理念に則り、子ども施策を策定し、及び実施する為に必要な法制上・財政上の措置、その他の必要な措置を講ずる。



第二 基本的施策等

  1. 予算の確保;国・地方公共団体は、我が国の国内総生産(GDP)の額に占める子ども施策関連費の支出割合が諸外国に比べ低い事をも踏まえ、子ども施策に係る十分な予算を確保する。
  2. 児童手当の拡充等;国は、社会全体で全ての子育てを支援する為、下記事項を旨として児童手当の拡充等を行う。{① 全子育て世帯に対して支給。② 高校等卒業までの養育している子どもを支給対象に拡大。③ 独立して生計を営む子どもに対する経済的支援の在り方についても検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。}
  3. 子どもの貧困対策;一項 国・地方公共団体は、子どもの現在及び将来が保護者の経済的困難、その他の生まれ育った環境によって左右されない様に、子どもの貧困対策に必要な施策を講ずる。二項 国が一項の施策を講ずるに当たっては、将来において達成すべき子どもの貧困率についての具体的な削減目標を設ける。
  4. 低所得者世帯の子育て支援;国は、低所得者世帯の子育て負担の軽減を図る為、下記事項を旨として「児童扶養手当」の制度を改める。{① 児童の属する全低所得者世帯に対して支給。② 支給する手当の額を増額。}
  5. 養育費の支払いの確保等;国・地方公共団体は、子ども扶養義務(離婚後)の履行確保の為、非・監護の親が支払うべき「養育費 支払確保制度」の整備、その他の必要な施策を講ずる。
  6. 子育て(妊娠・出産・育児等)の切れ目ない支援;国・地方公共団体は、希望する者が安心して子どもを産み育てる事ができる社会の実現を図る為、子育てに関する医療、福祉、保健、教育に係る支援が切れ目なく行われる様に必要な施策を講ずる。
  7. 不妊治療支援;国・地方公共団体は、希望する者が安心して子どもを産み育てる事ができる社会の実現を図る為、不妊治療費の負担軽減、休暇制度の整備、その他の必要な施策を講ずる。
  8. 待機児童問題の解消等;{一項}国・地方公共団体は、待機児童問題の早急な解消の為に必要な施策を講ずる。{二項}国・地方公共団体は、子ども・子育て支援の水準の向上を図る為、保育・幼児教育等の従業者確保の為に従業者の賃金等の処遇改善、その他の必要な施策を講ずる。
  9. 仕事と子育ての両立可な環境整備;国・地方公共団体は、子どもの保護者の仕事と子育ての両立が可能な環境整備を行う為、適正な労働時間の確保、子どもやその他の家族の為の休暇制度の整備、その他の必要な施策を講ずる。
  10. 児童虐待の防止等;{一項}国・地方公共団体は、虐待によって子どもの生命等が侵害され、又はその心身の成長や人格の形成が阻害される事のない様に、子どもに対する虐待(性的虐待を含む)の防止・早期発見、虐待を受けた子どもの保護等の為の必要な施策を講ずる。{二項}国・地方公共団体は、虐待・事故・犯罪・災害等の事象において死亡した子どもの死亡原因を明らかにする為の調査を関係機関の連携の下で行う体制整備、その他の当該事象における子どもの死亡の防止を図る為に必要な施策を講ずる。
  11. 社会的養護の拡充等;{一項}国・地方公共団体は、児童虐待を受けた子ども等の社会的養護に関し、「特別養子縁組」やその他の養子縁組、里親への委託等により家庭における養育が確保される様に必要な施策を講ずる。{二項}国・地方公共団体は、一項の他、社会的養護ができる限り家庭的な環境において確保される様に必要な施策を講ずる。{三項}国・地方公共団体は、社会的養護を要する子ども及び「ケアリーバー(児童養護施設の退所者等の社会的養護に係る措置解除者等を言う)」が学び、成長し、自立する為の支援、環境の整備、その他の必要な施策を講ずる。
  12. 特別支援を必要とする子どもが学び成長する為の支援、環境整備等;国・地方公共団体は、障がい児、発達障がい児、医療的ケア児、その他の特別支援を必要とする子どもが一般的な子どもと同様に学び成長する為の支援、環境整備、その他の必要な施策を講ずる。
  13. ヤングケアラの負担軽減支援;国・地方公共団体は、ヤングケアラの負担を軽減する為、ヤングケアラの属する家庭の家事の支援、ヤングケアラに対する相談体制の充実、その他の必要な施策を講ずる。
  14. 学校教育に係る支援等;{一項}国・地方公共団体は、全ての子どもの教育を受ける権利を生まれ育った環境に関わらず保障する為、義務教育諸学校における「学校給食の無償化」、高校等の全生徒の「授業料等の無償化」、大学等における「授業料等の減免措置」の拡充、「給付型奨学金」の拡充等による修学支援、その他の必要な施策を講ずる。{二項}国・地方公共団体は、全ての子どもがきめ細やかな教育を受けられる様に、小・中・高等における少人数の児童又は生徒による学級編制、その他の必要な施策を講ずる。
  15. いじめの防止;国・地方公共団体は、いじめによって子どもの生命、心身及びその教育を受ける権利等が侵害され、又はその成長や人格の形成が阻害される事のない様に、いじめの防止・早期発見といじめを受けた子どもに対する心身のケア、その他のいじめへの対処等の為の必要な施策を講ずる。
  16. 子どもが性犯罪・性暴力の当事者とならない為の取組み;国・地方公共団体は、子どもが性犯罪・性暴力の被害者、加害者・傍観者とならない様にする為に、子どもの発達段階に応じて必要な教育・啓発・相談支援等が行われる様に必要な施策を講ずる。
  17. 子どもの居場所の確保;{一項}国・地方公共団体は、学校が子どもの生活において多くの時間を過ごす場所であるという観点から、子どもが学校で安心して過ごせる様に「スクール カウンセラ」、「同ソーシャルワーカ」等の配置、その他の必要な施策を講ずる。{二項}国・地方公共団体は、子どもが成長する過程に応じて安全で安心な居場所を確保する為、児童館等の「児童厚生施設」の整備、「放課後 児童健全育成事業」、「子どもの学習・生活支援事業」、「放課後等デイサービス」、その他の学校以外の子どもの居場所に係る施策の子どもの成長する過程に応じた総合的な策定、中・高等の生徒等の居場所の整備、その他の必要な施策を講ずる。
  18. 未修学・未就業の子ども・若者支援;国・地方公共団体は、中学校卒業後又は高校中退後に修学・就業の何れもしていない子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有する者に対して必要な支援が行われる様に、それらの者の実態把握の為の措置、子ども・若者育成支援の充実、その他の必要な施策を講ずる。
  19. 高度情報通信ネットワークの利用・ITを用いた情報の活用;国・地方公共団体は子育て、教育、福祉、その他の分野において高度情報通信ネットワークの利用・ITを用いた情報の活用が図られる様に必要な施策を構ずる。
  20. 子どもの権利利益を保護する独立性が確保された機関設置;国・地方公共団体は、子どもの権利利益を保護する為、子どもの現状に関する調査、子どもの権利利益の代弁、行政機関に対する監視等の権限を有する独立性が確保された機関を設置する。



第三 子ども省の設置の検討

  1. 子ども省の設置検討;政府は、子ども施策の総合的な推進を図る為、子ども省の設置について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置、その他の措置を講ずる。
  2. 子ども省の事務;下記事務を子ども省において行う。政府は一条の検討を行う。{① 子ども施策に関する行政各部の施策の統一を図る為に、必要となる企画・立案と総合調整に関する事務。② 内閣府が所掌する事務の内、次の事項(ⅰ)青少年の健全な育成(ⅱ)子ども・若者育成支援施策(ⅲ)少子化の進展への対処(ⅳ)子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援(ⅴ)認定こども園に関する制度(ⅵ)大学等における修学の支援(ⅶ)子どもの貧困対策。③ 文科省が所掌する事務の内、次のもの(ⅰ)生涯学習(ⅱ)地方教育行政(ⅲ)初等中等教育(ⅳ)学校保健、学校安全、学校給食・災害共済給付(ⅴ)社会教育。④ 厚労省が所掌する事務の内、次のもの(ⅰ)育児・家族介護を行う労働者の福祉増進、その他の労働者の仕事と生活の両立(ⅱ)児童保育(ⅲ)児童養護、その他児童保護・虐待防止(ⅳ)児童のある家庭の福祉増進(ⅴ)福祉に欠ける母子・父子と寡婦の福祉増進(ⅵ)児童保健・妊産婦、その他母性の保健向上(ⅶ)障がい児の福祉増進。⑤ ①から④までと一元的に行う事が政府全体の業務の効率化・国民の利便性の向上に資する事務。}



第四 子ども省設置推進本部(仮称)

  1. 設置;同省の設置を総合的且つ集中的に推進する為、内閣に同省設置 推進本部(以下「本部」)を置く。
  2. 所掌事務;本部は次の事務を司る。{① 第三(同省の設置の検討)に基づいて同省設置の検討を行う。② 同省設置・設置に伴う国の行政機関の再編成で重要なものの企画・立案と総合調整。
  3. 組織;本部は同省設置推進本部長、副本部長・本部員を以て組織する。
  4. 推進本部長;{一項}本部の長は、同省設置推進本部長とし、内閣総理大臣を以て充てる。{二項}本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
  5. 副本部長;{一項}本部に副本部長を置き、国務大臣を以て充てる。{二項}副本部長は本部長の職務を助ける。
  6. 本部員;{一項}本部に本部員を置く。二項 本部員は、本部長・副本部長以外の全国務大臣を以て充てる。
  7. 資料の提出とその他の協力;{一項}本部は、その所掌事務を遂行する為に必要があると認める時、関係行政機関等に対して資料提出、意見表明、説明、その他必要な協力を求める事ができる。{二項}本部は、その所掌事務を遂行する為に特に必要があると認める時、一項以外の者に対しても必要な協力を依頼する事ができる。
  8. 事務;本部の事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房 副長官補が掌理する。
  9. 主任の大臣;本部に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
  10. 政令への委任;この法律に定めるものの他、本部に関し必要な事項は、政令で定める。



第五 施行期日

 この法律は、公布の日から施行する事。但し、第三(同省の設置検討)・第四(同省設置推進本部)は公布の日から起算して一ヶ月を経過した日から施行する。


条文意訳:羽田野正法(法学士)

写真:立憲民主党

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