『ポストコロナ期における新たな学びの在り方』とは|教育再生実行会議

【教育報道】 令和三年六月三日に総理大臣官邸にて第四十八回「教育再生実行会議(座長:鎌田薫)」が開かれ、菅義偉(戊子)内閣総理大臣は鎌田座長(戊子)から第十二次提言『ポストコロナ期における新たな学びの在り方』を受取った。全四十七頁。


「令和の日本型学校教育」を目指す。小中学生の学力はPISA等の「科学」「数学」で十位以内に入るものの「読解」が弱い。日本の大学は世界ランクで三十位にも入れない。中国「清華大」は世界二十位になれる実力を有す。


菅総理は「今後、萩生田(文科)大臣を中心として関係閣僚の協力の下に、提言を着実に実行して頂きたいと思います。また有識者の皆様には、これまでの提言内容のフォローアップも行って頂く様お願い申し上げます。」と述べた。


コロナ後の教育への本提言は、以下の四章構成。

  1. 初等中等教育の姿
  2. 高等教育の姿、国際戦略
  3. 教育と社会全体の連携
  4. データ駆動型の教育への転換


同会議が設定する重要課題は、子ども達の「幸福度」「自己肯定感」「当事者意識」を高める事。これは大人も含めた社会全体の課題。過度な横並び意識を排し、一人ひとりの自律と多様性を高める事。「想定外の事象と向き合い対応する力」と「不透明な未来を切り拓く力」を高める事。


解決策は、個人と組織の「充実状態(ウェルビーイング)」の理念の実現を目指す事と結論付けた。


菅総理が本提言から採り上げたのは「高校・大学の授業オンライン化(総授業時間の半分まで)」「大学の早期卒業(飛び入学)」「入学前教育プログラムの開発」「データ活用教育」だった。


=(一)初等中等教育=

以下が重要三視点。

  1. 学校は、教師と児童生徒、児童生徒同士の直接的な関わり合い、多様な体験を通して学ぶ場としての「集う機能」に存在意義
  2. 対面指導が基本。児童生徒の発達段階や学ぶ内容に応じて遠隔・オンライン教育を適宜取り入れ、双方の良さを最大限に活かす
  3. 遠オン教育の効果等につき、データによる現状把握や教育実践の検証・評価を通じ、知見を蓄積



以下が初等中等教育でのポイント。

  • 「一人一台端末/GIGAスクール構想」の本格運用
  • 低所得世帯向けに通信費を支援
  • 視力低下防止
  • 高校生へ端末整備・通信支援
  • 今後整備する「Govクラウド」を全学校及び教育委等が活用できる準備
  • 学習eポータル(学習マネジシステム、初等中等教育版LMS)」の活用促進
  • 令和六年度に紙とデジタルの教科書の在り方を明確化
  • 政府はSTEAM学習に向け、オンライン探究型EdTech教材等を開発。オンライン・ライブラリを拡充。全国での活用推進
  • 小中高・家庭でのオンライン学習システム「MEXCBT(メクビット)」の活用
  • 乳児期・幼児期と小学校との連続性を意識した政府・自治体における「幼児教育 推進体制(幼児教育センタ等)」の充実・強化。スタートカリキュラムの充実促進
  • 「履修主義」が基盤。「修得主義」は組み合わせる
  • WWL(ワールドワイド ラーニング)コンソーシアム」構築の早期実現
  • 高校と大学等が連携した先取り履修等の学習プログラム等を開発
  • 世界レベルの文理横断型のリベラルアーツ教育等を推進する拠点校を整備。リベラルアーツはSTEAMの"A”。自由七科(言語系「文法・論理・修辞」と数学系「算術・幾何・天文・音楽」)の事
  • 飛び入学者へ「高校課程修了以上の学力」を有する事を文科大臣が認定し、高卒資格を付与する制度の創設
  • 教師に求められる資質能力を明らかに
  • 教員免許の在り方や教職課程の高度化、教員養成大学の在り方等について総合的な観点から見直す
  • 教師向けオンライン研修プログラム等の効果的な研修の展開
  • 学校の権限・予算等の裁量の拡大
  • 「特別免許状」を含む教員免許の在り方を見直す(大学の教職課程が未修了でも教師になれる様に多様なルートを確保。小中の両方の免許状を取り易くする制度的措置を講ずる)
  • 学校の実情に応じ、様々なスタッフ職の配置支援(「チーム学校」)
  • 小学校高学年における教科担任制の導入
  • 校務軽減。「統合型校務支援システム」の全自治体における導入促進

=(二)高等教育=

超強化対象である。以下が重要三視点。

  1. 遠オン教育は、高等教育の新たな可能性を拓くものであり、コロナ後でも後戻りをする事は有り得ない。学修ログを集めて学生の学修内容や理解度をデータとして可視化し、教育効果を評価。データに基づき教育改善
  2. 大学等は、教職員・学生間、留学生や社会人も含めた学生間における多様な協働・交流を通じた社会性や対人関係能力の涵養等が行われる事に価値。大学等の学び、経験の全てが遠オン教育に代替されるものではない
  3. 遠オン教育は黎明期。遠オン教育がどの様な授業に適しているのか、面接授業との効果的な組合わせ方はどの様なものか等につき、教育実践の検証や評価を通じて知見を蓄積


以下が高等教育でのポイント。

  • 高等教育のシステムを「入口での質保証」から「出口における質保証」へと転換
  • 社会人やシニア等へ「ユビキタス学修(リカレント教育)」の提供
  • 大学設置基準や設置認可制度、認証評価制度等の見直し
  • STEAM(科学・技術・工学・リベラルアーツ・数学)人材の育成
  • 学修管理システム(LMS)を利用した学生個人に応じた教育の実施
  • VR等を活用した効果的な実験・実習 ・臨床教育の導入
  • 政府が高等教育のDXに向けたアイデアを募集
  • 同一学生を長期に亘って追跡したデ ータを構築(税務情報等との連携、大学への投資効果を評価等)
  • 修業年限の柔軟化が可能となる様な制度改正(飛び入学
  • 実践的な教育を支える「実務家教員」を育成・活用するシステムの構築
  • 「学修歴証明書」のデジタル化
  • 政府が全学的な数理・データサイエンス・AI教育の教材等の開発、教育に活用可能な社会の実課題・実データの収集・整備等の実施を支援
  • 数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」と応用基礎レベルの認定制度の創設
  • 政府が徹底した国際化に取組む大学を重点支援
  • 政府が国際連携・学生交流等を推進(単位の相互認定や成績管理、学位授与等、教育交流プログラムの開発・実施を行う大学の支援)
  • 社会総掛かりで若者の海外留学の機運を醸成
  • 優秀な外国人留学生の戦略的な獲得
  • 秋季入学や四学期制等

=(三)教育と社会全体の連携、(四)データ駆動型の教育への転換=

  • 「学校雇用シェアリンク」や「学校・子ども応援サポータ人材バンク」の運用推進
  • 社会教育士(教育委に置く)」の活躍促進
  • 統計・会計・政策評価等が連携した「証拠に基づく政策(EBPM)」の推進体制の構築
  • 教育データ サイエンスセンタ」の設置(十月予定)
  • 各データの紐づけ;①子どもの成長過程を解明する為の長期的な縦断調査(学校卒業後のデータの把握を含む)、②学校単位の各データの紐づけと定点観測の為の継続的なデータ収集、③教師のデータの統合と調査、④ランダム化比較試験(RCT)や回帰不連続設計法(RD)を含む実証分析の積極的な活用の検討

画像:参考資料/総理大臣官邸

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