華道のスポーツ『全国高校生花いけバトル』開幕、関東大会は麻総高の女子高生

【社会報道】 華道のスポーツに位置付けられる「花いけバトル」。初となる高校生大会が平成二十九年六月三日に横浜・関東大会と福井・北陸大会から始まった。八月十八日の高松・四国大会まで各地区の代表を選ぶ大会が行われる。決勝大会は予選を含め、八月十九日と二十日の両日に香川・高松で開催。『第一回 全国高校生花いけバトル 栗林公園杯二〇一七』の本実行委の会長は浜田恵造(壬辰)香川県知事。


ルールはシンプル。一チーム二名の二チームがそれぞれ器を決めて、制限時間の五分以内に花等を選び生け、三十秒の観賞タイムの後に観客が勝敗を決める。この大会は国内の高校に在学中の生徒が対象。華道部やフラワーアレンジメント部等に加えて、部活動に属していない生徒も参加が可能だ。神奈川県花き植木振興地域協会が行った関東大会では神奈川・麻総高校から二チーム、神奈川・桜陽高校華道部、男子組のでっかちんが予選・決勝を行い、麻総一が優勝した。




<決勝者は何を想っていたか>

 「薔薇を使いたかったので、薔薇を大量に入れようと思って生けました。」と、決勝戦での花生けを麻総一の女子高生二名は振り返った。各々が一つずつ生けた。頭の中で閃いたイメージを花生けで形にしていく。その過程を聞くと「生けていく途中で、こうしよう、こうしようと変わっていく事もあります。」と、残り三十秒までは最終的なヴィジョンが決定しない旨を話した。八月の全国大会に向け、関東代表として練習を重ねていく。



一方の決勝で敗退した桜陽高校華道部の女子高生二名は、「ダイナミックを目標にしつつ、目に付いた物を取っていく感じで。洋館を意識して生けていきました。」と開催場所の横浜市イギリス館との相性に拘り、横浜の花でもある薔薇を取り入れた。ヴィジョンが決まるタイミングは、大きな花や葉等の骨格が決まった時と述べた。今大会は大きく長い葉が多かった点が特徴的だったという。敗因を「気持ちが固まってなかった事だったと思います。」「全体的に花が淡い色で纏まってしまった。」と冷静に分析した。



儚き美

 予め選んでおいた器を前に、スタートの合図が響くと高校生達は花材が豊富に置かれている場所へ走り、思い思いに花や木、葉を選び器に入れ込んでいく。スタートから一分半、二分までは最終的な形が観客席からは全く見えない。読めない。思っていた通りに枝や葉が立たなく、ヴィジョンを再構築しなければならない場面もあったが、少しずつおぼろげながらもヴィジョンが仕上がっていく。高校生達はディスプレイで進む時計には殆ど目もくれずに、作品創りに勤しんだ。三分から四分では俯瞰する、ふとした間が一瞬の静寂を漂う。これで良いのか、このまま進むのか、変えるべきか。


四分を超えたあたりから、高校生達の手のスピードが更に早くなる。ラストスパートに向けて、残り十秒前で作品の細やかな部分を調える。その作品は僅か三十秒の観賞タイムでばらばらにされる。器から想像する力に花材を前にした時の瞬時に取捨選択する力、ヴィジョンを実現する技術と高いスピード感。五分間に没入された高校生の若きエネルギが美として昇華し、間もなく散る。その儚さも含めて、美しい華道のスポーツ「花生け」なのであろう。



最後に花生けの良さを四名に聞いた。「花を見て癒される。愉しい。」「自分を表現する。」「最初は型があるのですけれど、だんだん自由になっていくんですね。自分らしさを身近な物で出し易い。」「日本ってこういう良さ、華やかさがあるんだよって伝えていく為には、華道のお持て成しの一つだと思います。」と、個性が出る点や日本文化の発信を魅力に挙げた。


八月、香川に全国九ブロックから十八名の代表高校生がスピードと美を競う。


『「全国高校生花いけバトル」関東大会/神奈川県花き植木振興地域協議会』

撮影記事:金剛正臣

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