一円=一㌦、為替の歴史|若きエリートが知っておくべき基礎知識

【政経考察】 人生百年時代。今が三十歳なら後七十年、今が二十歳なら後八十年もある。グローバル社会は超短期の刹那に振り回す。問題は今ではなく、圧倒的に長い未来に他ならない。


社会は政治と経済で廻っている。長期の人生では、中長期で政経を眺める必要性がある。


一つの可能性として、今から五十年後に円㌦の為替レートは、一円=一㌦になる可能性を秘める。報道現在では百三十円台/㌦。令和三年は百三円台で始まったので、本年は円安基調。それが五十年後には超円高基調になる可能性を秘める。




<五十年間で大幅に変わる為替>

 何故か。未来を眺める場合には過去を参照する。今から凡(オヨ)そ五十年程前のレートを知っているだろうか。三百六十円/㌦。今とは異なり、固定相場制であった。三倍も円安。強引な言い方をすると、米国等の海外へ今より三倍も日本製品を売り易い。強い価格競争力。


今の七十代以上は、海外へ売り易い時代を生きた。理解し易い様に最上図のグラフを逆さにした。高度経済成長期とバブル期の日本GDPの様ではないだろうか。本年は円安傾向だが、長期で眺めると戦後の日本は円高基調である事に違いは無い。


リーマンショック後の平成二十三年には、戦後で最円高の七十五円台/㌦を付けた。海外へ売り難い。では、戦前を含めた日本史上での最円高は幾らか。一円/㌦。明治七年から一円/㌦で為替取引が始まった。昭和「大東亜戦争」まで円安が進み、こちらも五十年程度の期間で、四分の一である四円/㌦になった。



戦前の為替

 貿易経済が無いと世界は成り立たない。その経済の基礎は為替である。その為替を実質左右するのが、政治である。故にグラフだけ追っていても未来は見えない。明治時代から順を追うと、円安基調の『日清戦争』後、明治三十年に日本が「金本位制」を確立。為替は二円台/㌦で安定した。


凡そ為替が安定していたが、昭和四年「世界恐慌」をきっかけに急速な円安が進み五円/㌦を覗いた。各国政府が金本位制を放棄。管理通貨制に素早く以降した日本の経済打撃は軽微だった。当時の高橋是清(甲寅)大蔵大臣が大型の財政出動を行い、先進国に先駆けて不況から脱出。「ケインズ経済学」はこの後の同十一年。円安なので、日本は輸出が好調であった(GNP増)。


好調な日本を傍目に、植民国家・英仏等が自国の経済を回復させる為に『ブロック経済』を導入。被植民国家である日本は輸出先を細られる。同じく非植民地国家・独伊も英仏等に締め出されて経済疲弊。国民を食べさせる為に、食料や資源を求めるが、更に英米等が日本へ超経済制裁『ABCD包囲網』を展開。現在の北朝鮮への経済制裁とは比較にならない。国が自然と死滅するレベルの超経済制裁である。

『第二次世界大戦』が勃発する。




<戦後の為替>

 戦中の為替レートは四円/㌦で変わらず。戦後間際の同十九年、日本を米国の新たな経済パートナとすべく「ブレトン・ウッズ協定(上図)」が締結。米㌦を基軸通貨とした固定相場制となる。三百六十円/㌦で輸出による経済復興が可。西独も同様。金本位制は復活。


その後の日本は、白物家電等で高度経済成長期(同二十九年~四十八年)へ突入。日本が高度経済成長期中の同四十六年に米「第二次ニクソン・ショック」により、先の協定が終焉。変動相場制へ移行する。米国は日本の好景気にブレーキを掛けるべく、円高基調へ注力する。


高度経済成長期後の日本の成長率は、やや鈍化するものの、車等の輸出は強くプラス成長を続ける。貿易赤字と財政赤字(双子の赤字)に苦しむ米国は、同六十年の「プラザ合意」にて二百三十五円/㌦から一日で約二十円も円高に振らした。日本製品の輸出を阻みたかった。これを機に日本の名目金利は低下。投機主体の平成バブル期(同六十一年~平成三年)へ入る。



これからの為替

 その後、バブル崩壊まで円高基調が続き、バブル崩壊後の平成時代の為替レートは、百円以内の変動幅に収まって今に至る。先進国の政治決定により、為替は大きく変動する。戦後は日米の政治決定が世界を牽引してきた。しかし、令和の現在では基軸通貨を未だ目指す中国「元」がいる。「デジタル人民元」での覇権を狙っている。


令和時代は、日米中の三ヶ国による政治決定が為替を大きく左右する。特に自由陣営である日米と共産陣営である中国は相容れない。故に、日本社会も不安定化している。同じ自由陣営である英国「ポンド」はEUから離脱し、くびきが取れた。


現在の中国は充分な経済成長を経て、まるで明治時代の「清」の様である。中国マーケットを日本を含めて先進国が狙っている。それは全て中国共産党の一党独裁体制が何時まで保つか。もし中共が瓦解すると、民主主義の移植により、巨大なマーケットの扉が開く。但し、若き東南アジアも大いに有望な市場に違いない。


戦後は、円高基調。日本が経済成長すると、円高に振れる。これから経済成長をする場合、日本は再び円高に振れ、その成長角度によって主導国の政治決定により、五十年程度で一円/㌦まで到達する可能性がある。その観点から未来の自身の人生を眺める。


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