八千代エンジニヤが『ダム流入量の“予測学習”システム』の開発

【ビジネス報道】 令和三年十二月二十四日に大手総合建設コンサル・八千代エンジニヤリング(代取:出水重光)は、『ダム流入量の予測学習システム』の開発を発表した。


本システムを活用する事で、ダム貯水池の効果を最大限に活用し、気候変動による下流域の浸水被害軽減を実現できる。併せて、ダム自体の安全性を高めると共にダム管理者の負担軽減にも繋がる。


本システムは、ダム管理者等のパブリックセクタの導入を始めとして、気候変動による降雨環境の変化による対策を行う民間企業への活用も見込む。報道現在で本システムは特許出願中(特願2021-200216)。



<予測学習とは>

 近年の激甚化する大雨等の際、本システムは水害軽減に役立つダム流入量予測の精度向上を実現したもの。「予測学習(predictive learning)」とは、モデルが計算した予測値と実測値との差を学習し、予測精度を上げるアプローチ。


近年の想定を上回る豪雨により、ダムは「異常洪水時防災操作(緊急放流)」を行わなければならない場合も増えてきている。緊急放流では下流域の住民の避難時間を確保する為にも十分なリードタイム確保が必要。同元年十月に国交省は、台風等の豪雨災害で関東「利根川系」や「荒川系」のダムでも緊急放流する可能性があると発表していた。


一方、「ダム流入量の予測システム」と類似した河川水位の予測システムに関しては、国交省が昨年から国管理の洪水予報河川において六時間先までの予測水位の提供を始めた。



観測データvs予測データ

 今回の予測学習システムは、従来の現象再現性を追求した「観測データ」から構築する予測システムとは異なり、運用時の予測精度向上を追求した「予測データ」から構築する予測システム。深層学習(ディープラーニング)モデルを活用する事で、未来の不確実性を持つ「予測データ」からダム管理に扱える確実性の高いダム流入量へと変換していく。


予測データで予測モデルを確立する方法は、業界初の技術。従来とは全く異なる予測フレームワークにより、六時間先のダム流入量予測の劇的な精度向上の実現を強調した。



以下が本システムの特徴。

  1. 予測学習;従来の予測モデルは、これまで経験してきた既往雨量に対してモデルを構築。運用時は予測雨量を使う。しかし、気候変動の影響も考慮すると、これまで未経験の雨量に対して実測値(既往雨量)ベースのモデル構築では限界がある。モデル構築時と運用時でデータ環境格差を無くし、予測雨量に内包される不確実性を学習(予測学習)する事で、予測精度を確保
  2. 小流域でも六時間先の予測実現;本システムはダム流域最上流端に降った雨が、ダム地点に到達するまでの時間(洪水到達時間)が一時間未満の小さな流域についても、精度の高い六時間先の流入量の予測精度を実現。今まで洪水警戒体制のタイミングに、十分なリードタイムが確保できなかった小流域においても予測を可能にした
  3. 導入が容易;本システムは、通常的に計測しているダムの観測流量と水位データがあれば、直ぐにモデルを構築できる。導入時の「イニシャルコスト」や「工数」のハードルが低い

画像:八千代エンジニヤリング㈱

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