【ビジネス考察】 「東京の中小企業の現状(サービス産業編)」の考察。前回は「業界の財務平均値を知る;各論」にて経営指標を視た。今回は経営戦術的に視る。
先ずは顧客状況。現在の顧客の件数は四件以下が最多の二十一.二㌫。売上高が十㌫以上の大幅減となった企業は、この四件以下が最多の三十.二㌫。B2Bが前提であるが、営業力強化と顧客増に応対できる経営組織を求めたい。取引が三年以内の新規顧客の件数割合は〇.五㌫未満が五十七㌫と保守的である。現状維持の精神を省みられたい。
売上高の依存度も同じだ。上位三社の依存度では、八十㌫以上が最多の二十九.四㌫。四件以下の顧客に依存し経営をしている。これでは常時、綱渡りだ。顧客を増やしリスクを減らしていく経営姿勢に転換する。翻って、依存度が二十㌫未満の割合いは十九.四㌫もいる。こちらを目指すべきだろう。
<競合他社に戦略はあるか>
それは顧客満足度の把握方法にも分かれる。結果は大変にアナログ。「顧客との日常のコミュニケーションで把握」が突出して六十九.一㌫。次いで「注文のリピート状況で把握」が三十一.三㌫。「特に何も行っていない」が十六.一㌫と続く。自社調査や外部の調査会社に依頼する企業は、合わせても五㌫にも満たない。中長期で考えるならば、間違いなく第三者のアウトソースを利活用し、信頼性を向上させて確かな情報(ワンツ・ニーズ・不満等)を掴む。
次に競争戦略に関わるもの。競争激化の原因を「同業者の増加」が四十九.七㌫と最多。他にも「複数社に対する相見積の増加」や「異業種からの参入増加」と現代は、どこからでも参入者が顕れる。常時、新旧の競合を把握して自社を臨機応変的に差別化していく。顧客側の原因としては「顧客の業績悪化」や「顧客ニーズの高度化」、「顧客による業務の内製化」等がある。ニーズの高度化と内製化は見逃せない。先のアナログな顧客への調査では応対しきれないであろう。
驚くべきは競争戦略上の取組の集計で「特にない」が二十八.〇㌫もいる点だ。これでは場当たり的で経営の計画性が何も担保できない。だが選択式の回答であったので、行政が用意した回答(「サービス内容の向上」や「新規顧客の開拓等」)が戦術であって競争上の戦略でない点も問題がある。ポジショニングやマイケル・ポーターの三類型等を問うべきであろう。競争戦略を構築し、社内に徹底するだけも競合と差をつけられる可能性がある。
狙うべきはシニアが支配する業界
取引上の強みに関しても言える。こちらはSWOT分析なので競争戦略の上位である経営戦略の範疇だ。最多は「専門性が高い」の五十.六㌫。売上高の大幅増加の内では六十.四㌫が「専門性が高い」の強み。次いで「長年の取引」が四十.五㌫。「顧客ニーズの的確な把握」は二十一.四㌫。「独自サービスの提供」は十三.九㌫。一概には言えないが、恐らく競合他社はまともにSWOT分析と分析の更新を行っていない可能性がある。二位の「長年の取引」はコストダウンには効果的であろうが、強みではない。強みとは財を生み出す資産だ。故に機会と捉える事ができる。
社外との連携では「特に行っていない」が五十八.九㌫と、現状は機会である。他企業や学術機関との連携で差異を創れる。提供するサービスの改良や新たな開発への重視度では、「重視している」が六十八.九㌫と危機意識が高い。今後の事業展開の方向性では、現状維持が三十六.二㌫。既存事業に専念・拡充が二十六.三㌫。既存事業を縮小し新事業領域への進出が十八.六㌫。情報収集源は得意先・顧客が七十.二㌫と最多。順に同業他社、マスメディア、特にない、異業種仲間と内向きな収集方法となっている。
強化したい点については、「人材の確保育成」が四十四.八㌫と最多。「特に考えていない」「商品・サービスの開発」「財務体質の強化」が続く。「グローバル化への対応」は七.五㌫と機会だ。都内の中小企業の取締役会は老齢化している。危機意識はあるものの、思考停止な現状維持を選択し易く、新技術を新人材を嫌う傾向がある。若手が多い業界は消耗戦になり易い。その為、シニアが業界の上位に君臨する業界に目を配るべきであろう。その市場は奪取できる。
記事:羽田野正法
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