求められるシティ・ポップ、Juice=Juice『プラスティック・ラブ』

【芸能考察】 日本が高度経済成長期の一九七十年代から八十年代に『シティ・ポップ』という音楽ジャンルがTOKYOを席捲した。洋楽「ニューミュージック」を日本的なセンスで新たなモノに創り上げた。


山下達郎(癸巳)や竹内まりや(乙未)、荒井由実(甲午)等が挙げられる。菊池桃子(戊申)等のアイドルもシティ・ポップを歌った。当時は「シティーハンター」や「YAWARA」等の子ども向けアニメのOP曲としても使われた。


二〇〇〇年代に入ると欧州を起点に日本のシティ・ポップが掘り起こされ、YT等で多数のシティ・ポップが世界的にアップロードされている。


日本でも一部のアーティスト達がシティ・ポップへ回帰し始めている。令和三年十一月十二日にワーナーミュージック・ジャパン(代取:小林和之)は、竹内まりやのMV「プラスティック・ラブ」をフルでYTへ公開。この曲は山下達郎も歌った。



 そして同日に森高千里(己酉)やシャ乱Q、モ娘。等と輩出したアップフロントグループ(代取:山崎直樹、蔭山茂樹)の完全子会社であるアップフロントワークス(代取:小西玲子)は、九名の女子アイドルG「Juice=Juice/ハロプロ」のMV「プラスティック・ラブ(プロモ版)」をフルでYTへ公開。発売日は同年十二月二十二日だった。


同日に同じ楽曲をまりやとJuiceがフルMVを公開。非常に稀有。


勿論、楽曲の雰囲気は両者で変えている。最も異なる点はMV。まりやの方は、ゆとり世代・林響太朗(己巳)が同楽曲の新たな解釈として令和元年に作っていた。フルMVの公開は初。一方、Juiceの方は、倖田來未(壬戌)や鈴木愛理(甲戌)等のMVを手掛けた杉山弘樹。林は、とある男女の一つの物語りに仕立て上げた。



 杉山は、アイドルを軸に一九八十年代と二〇二十年代を混ぜ合わせた。現在のアイドルのMVでは出てこない電話ボックスやCDのカーオディオ等を脱ゆとり世代以下のJuiceメンバと自然に絡めた。


Juiceの最低年齢は十四歳、平均年齢は十九歳(報道現在)。更に映像描写も四対三・低画質・無照明を杉山は入れ込み、楽曲の世界観(ハイセンス昭和)を令和に馴染ませる。


特筆すべきは、今の女子にとっては高難易度の楽曲を歌い上げたJuice。矢張り、ここは歌唱力のハロプロだろうか。今の女子にありがちな幼さは消し去り、色香を放つ大人の女性へと昇華させている。シティ・ポップには欠かせない大人観をJuiceは体現。素直に「凄い。」と震わせる一本だ。


不景気が長く続いた為、数多の大人が幼稚化してしまっている。以前に考察した九十年代「トレンディドラマ」に続き、精神年齢をきちんと重ねる事ができる音楽がシティ・ポップだろう。シティ・ポップを知っているか否かは、人生に大きな影響を与える。特に女性は。このジャンルを現代女子が歌うのは大変だろうが、今後にとても期待したい。素晴らしい二作品。


記事:金剛正臣

画像:Juice=Juice『プラスティック・ラブ』(Juice=Juice [Plastic Love]) Promotion Edit/アップフロントワークス、竹内まりや - Plastic Love (Official Music Video)/ワーナーミュージック・ジャパン

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