【書籍】 平成二十九年十月五日にハヤカワ文庫は、オースティン・ライト(壬戌)の文庫新刊『ノクターナル・アニマルズ(訳:吉野美恵子)/早川書房』を発売した。九年に「ミステリ原稿」のタイトルで邦訳刊行した小説を改題。この小説は十一月三日より公開される映画『同名/ビターズ・エンド、パルコ』の原作だ。
標題は“夜行性動物”の意。米テキサスが舞台の物語りは、元夫が元妻へ暴力的な小説を送るミステリアスなもの。映画ではファッション デザイナのトム・フォード(辛丑)が監督を務めた話題作。フォードは伊グッチや仏イヴ・サンローランを担当した。本作で二本目の長編映画となり七年振り。そして本作は昨年の「第七十三回 ヴェネツィア国際映画祭」のコンペ部門に出品し、審査員大賞を受賞した。
<ミステリアス且つ、アーティスティック>
小説・過去・現在が複雑に絡み合い、曖昧になっていくミステリアスな物語を細部にまで拘り抜かれた映像美が特徴だ。フォード監督は脚本も担った。モノローグ(独白)で語られる原作小説を大胆に脚色し、一切のモノローグ無しで小説世界を再現した。その結果、「第二十回 ラスベガス映画批評家協会賞」で見事に脚色賞を受賞した。
芸術家らしくアート作品が多々、出てくる点もポイントだ。ジョン・カリン(壬寅)の「Nude in Convex Mirror(二〇一五、画像上)」や当時五十八億円で落札されたジェフ・クーンズ(乙未)の「Balloon Dog(一九九四‐二〇〇〇)」等の十点以上が登場する。オリジナルに拘るフォード監督が所有者に直接電話し、使用許可を貰った。自身が所有する美術コレクションも登場する。
主演は「メッセージ(二〇一七)/SPE」や「マン・オブ・スティール(二〇一三)/ワーナー・ブラザース」で恋人役を演じたエイミー・アダムス(甲寅)と「ナイトクローラー(二〇一五)/ギャガ」のジェイク・ギレンホール(庚申)の実力派二人。脇は「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(二〇一六)/ワーナー・ブラザース」でゾット将軍を務めたマイケル・シャノン(甲寅)と「GODZAILLA ゴジラ(二〇一四)/東宝」や「ザ・ウォール(二〇一七)/プレシディオ」に出演したアーロン・テイラー=ジョンソン(庚午)。各国の映画祭で受賞を重ねている。
一方、小説を読んだ書店員は『ノクターナル・アニマルズ』を観て思い浮かんだ作品を挙げた。映画は「ゴーンガール(二〇一四)/20世紀フォックス」「めまい(一九五八)/パラマウント映画」、本は「エミリー/嶽本野ばら」「みづうみ/川端康成」。
=ストーリー=
スーザン(エイミー・アダムス)は夫とともに経済的には恵まれながらも心は満たされない生活を送っていた。
ある週末、20年前に離婚した元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。彼女に捧げられたその小説は暴力的で衝撃的な内容だった。才能のなさや精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。
彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか――。
=クレジット=
監督・脚本:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー/ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン
原作:「ノクターナル・アニマルズ」(オースティン・ライト著/ハヤカワ文庫)
2016年/アメリカ/116分/PG-12
ユニバーサル作品
配給:ビターズ・エンド、パルコ
©Universal Pictures
画像提供:㈲ビターズ・エンド
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