岸田内閣の重点投資先の基礎を知る|「量子技術」「AI」「再生・細胞医療・遺伝子治療」「バイオものづくり」「クリーンエネルギ」

【政治・経済考察】 岸田総理(丁酉)は、令和四年三月八日に第四回『新しい資本主義実現会議』を開催(既報)。テーマは科学技術で、重点投資「量子技術」「AI」「再生・細胞医療・遺伝子治療」「バイオものづくり」「クリーンエネルギ」の五分野を提示した。B2G案件。


最新の行政府の重要情報を知る事が情報強者の基本。


平成二十一年より日本のR&D投資額は欧米に劣っている。論文発表では、米中の十分の一まで下がり、欧州だけでなく豪印にも劣る。GDP(分配・所得)が上がらない根本的な理由だ。若者・若手は、当該五分野を把握されたい。


基礎資料では、冒頭に米「MIT」「スタンフォード大」等の経済学者による研究に依った。個々の企業の「研究開発費」増に因る「売上高」増(私的な限界収益率)と他社の会社全体への正・負の外部効果(社会全体の限界収益率)を比較。外部効果は正で、且つ、社会全体の収益率は私的な収益率の二.五倍以上と推計(上図)。

この為、R&Dは私企業のみに任せると過少投資となり易く、官民で取組む事を重要とする。




量子技術

 量子とは、電子や光子(光の最小単位)等の原子レベル以下の極めて小さな物質・エネルギ単位の事。量子レベルの極めて小さな環境では、一般的な物理法則(ニュートン力学電磁気学)は成立せず、特殊な物理法則(量子力学)に従った挙動が観察される。


以下が量子の特徴。

  1. 二重性;“粒子”と“波”の二つの性質を併せ持つ。粒子の性質として最小単位があり、直進・反射する。波の性質として干渉(強め合い、弱め合い)する
  2. 重ね合わせ;一つの量子で複数の状態を同時に表現可。例えば、ある量子の右回りのスピンを「〇」、左回りのスピンを「一」とした時、重ね合わせ状態にある量子は「〇」と「一」を同時に持つ事ができる
  3. もつれ;複数の量子が、例えどれだけ空間的に離れていても、互いに影響を及ぼし合う。この性質により、ある量子の状態を測定すると、離れている他の量子の状態が同時に判明する


量子技術の例に「量子コンピュータ(ゲート型・アニーリング等)」や「量子暗号通信」がある。



AI

 AI技術の社会実装の例として「創薬」「農業」がある。前者では、動物実験頼みから診療情報(カルテ)や遺伝子情報を集約し、AI分析で適切な患者を選出可。後者では、被害画像を収集し、AIによる画像診断を活用する事で、効率的な防除が可。

米国では四割強の企業がAI導入済み、日本は二割。



再生・細胞医療・遺伝子治療

 再生・細胞医療は、機能障害に陥った臓器等に対し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)等を用い、臓器又はその部分を作り出して移植する。又は、治療機能を搭載した細胞を投与し、機能障害部分の治療を行うもの。創薬研究のツールとしても期待。遺伝子治療は、機能障害部分に外部から正常な遺伝子の導入等により、治療するもの。


iPS細胞に関する論文では、米国の十分の一程度だが中欧に勝っている。特許数ならば、米国の三分の一で世界優位。



バイオものづくり

 バイオモノづくり(合成生物学)とは、遺伝子改変技術によって微生物が生成する目的物質の生産量を増加させたり、新しい目的物質を生産させる技術。


応用として「バイオプラスチック」や「高機能素材」がある。米マッキンゼーの分析では、同十二(二〇三〇)年から同二十二(二〇四〇)年にバイオものづくり(素材やエネルギ等の工業分野)がバイオエコノミの三割程度を占めると予測。低位予測で二百兆円、高位で四百兆円。


画像:基礎資料/内閣官房

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