【社会報道】 平成二十九年十二月十九日付けで最高裁の第三小法廷(裁判長:木内道祥)は、神戸市の男性が近隣の保育園を提訴していた事件を決定により棄却した。七月の二審・大阪高裁は判決で一審を支持。二月の一審・神戸地裁は原告の主張を認めない判決だった。最高裁の棄却により、原告は敗訴が確定した。
原告の男性は被告の保育園を相手取って、防音設備の設置と併せて慰謝料として百万円を求めた。争点は園児の声は騒音か否か。一審では騒音に関する国の環境基準(『環境基本法』第十六条 第一項)で判断。基準では地域の類型として居住エリアのA及びBに該当する為、昼間は五十五デシベル以下となる。この数値を超えれば騒音となる。保育園周辺における騒音を測定したが、昼間の平均値は基準を超えなかった。但し、園児が外で遊んでいる時間帯のみ基準を超えた。結果、一審は忍耐限度を超えた騒音と認めなかった。
二審では保育園等の反社会性に言及。園児の元気な声を不愉快に感じる人と微笑ましく感じる人に分かつ点を挙げ、保育園や幼稚園等の公共施設は反社会性が低いと一審を支持していた。一審と二審は事実問題と法律問題を扱う事実審。三審の最高裁は法律問題のみを扱う法律審。今回、最高裁は原告の上告理由では審理に値しないと決定(棄却)した。
最高裁判例とはならなかったが、一審の判決と二審の支持は一定の司法効果を有す。騒音は昼間の平均値が重要となる。一時的に環境基準が上回ったとしても、平均値が環境基準以下であれば、忍耐の範囲。さすれば、全国の保育園及び幼稚園の大概が平均値以下となるだろう。今回の最高裁の棄却は一審・二審の判決に問題無しと見做せる。今後、同様な訴訟が起きても、平均値を下回っていれば、騒音と認定されない可能性が高い。子ども達の騒音問題に決着の目途が立った。
(了)
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