第一審の憲法判断は?「東京都は違法。」と|判決期日『コロナ特措法』違憲訴訟

【社会・政治報道】 令和四年五月十六日にグローバルダイニング(7625.Ts)は、東京地裁司法記者クラブにて『特措法違憲訴訟』の判決直後に記者会見を開いた。東京地裁(裁判長:松田典浩)の判決は請求棄却。


小池百合子(壬辰)都知事の過失責任は否定。但し、東京都の同社への時短命令は『コロナ特措法』に違法とした。原告・同社は即日控訴。現職都知事が実質的に違法、とされた大変に稀有な判例。弁護団は「形式敗訴、実質勝訴」とした。



二つの最高裁判例

 都は同三年三月十八日に時短命令を発出。地裁は、当時が緊急事態であった点を認めつつも、時短命令が『特措法』四十五条三項の要件「特に必要があると認める時」に該当せず違法である、と断じた。


併せて、百合子都知事の過失責任につき、「同命令の発出に当たり、都知事が裁量の範囲を著しく逸脱したとまでは言い難い。」とし、二つの最高裁判例(『国家賠償法』一条一項の過失が無いとされた判例)を挙げた。


  1. 昭和63(行ツ)41「面会不許可処分取消等」:平成3年7月9日 第三小法廷 判決;破棄自判/東京高裁
  2. 平成14(受)687「損害賠償請求事件」:平成16年1月15日 第一小法廷 判決;棄却/東京高裁


上記に判例より、「都知事が本件命令を発出するに当たり、過失が有るとまでは言えず、職務上の注意義務違反に違反した、とは認められない。」と判断した。併し、地裁は百合子都知事を証人尋問しなかった。報道界に照らすと、本人に直接確認(取材)せずに決め打ち報道する、という事になる。これでは法理に悖(モト)る。




<違憲性>

 本件では違憲性も訴えていた。地裁は『特措法』及び時短命令について判断した。先ず、違憲には以下の四類型がある。説明は粗野に簡略化。


  1. 法令違憲:法令そのものが違憲
  2. 適用違憲:法令の使い方(適用の仕方)が違憲
  3. 処分違憲:法令の合憲性は無視、権力の行使(行政権の処分)自体が違憲
  4. 運用違憲:法令は合憲とし、法令を違憲運用。よって法令執行は違憲



今回、地裁は一と二・三に分けて判断した。

法令違憲

営業の自由;『特措法』四十五条二項・三項の規制は、同法の目的に照らして不合理な手段であるとは言えないから、これら各条項が原告の「営業の自由」を侵害し、法令違憲であるとは認められない



適用・処分違憲

営業の自由;本件命令発出日に緊急事態ではなかった、との原告の主張は採用する事ができない事。

都知事が本件対象施設において実施されていた感染防止対策の検討を怠ったとしても、『特措法』七十二条二項により、立入り検査等を行う義務を負う、とは言えない事等に照らし、原告の主張は採用する事ができない


表現の自由:都知事は原告の意見表明を問題視し、他の飲食店の夜間の営業を誘発する恐れ等ないのに、本件命令を行う理由において、これがある旨、断定したとして原告の「表現の自由」が侵害された旨、主張する。

併し、上記部分は、本件命令に係る措置命令書に付記された理由の一部であり、原告の考え方に対する批判や攻撃を目的とするものではなかった。

また、「対策審議会の委員から原告が本件要請に応じない状況は、営業時間短縮の協力要請に応じている多数の飲食店との不公平を生じさせる等の意見を出された事」と「原告の売上は増加し、他の飲食店の営業の短縮により、原告の店舗に顧客が流れ込んでいる旨の報道もみられた事」によれば、本件命令発出日の頃、不公平感を募らせた他の飲食店が売上を増やそうとして、夜間の営業を継続する可能性が全く無かった、とまでは言い難い。


上記部分がおよそ根拠を欠くものであった、とは言えず、行政手続上、著しく不相当な理由の付記であったとも認められない。

更に、本件命令は原告に対する報復や見せしめではなく、同命令に違法な目的があったとは認められない。

従って、本件命令を行う理由の内、上記部分が原告の「表現の自由」に対する過度な干渉として『憲法』二十一条一項に違反する、と認める事はできない



法の下の平等;都知事が夜間の営業を継続していた二千余りの店舗中、本件対象施設の他には数店舗に対してしか、四十五条三項命令を発出しなかった事は、本件命令の違法性の判断において事情として考慮した通り、更に「平等原則(法の下の平等)」違反の有無を判断する必要性を認めない。



尚、同日の夜に百合子都知事が「今回の命令は都としては、感染防止対策上、必要且つ適正なものであったと認識している。」とのコメントを出した。続く第二審では、百合子都知事の過失を改めて問われる。


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