「約束の岸田」「信用の岸田」を『アジア安保会議』へ売り込む

【政治報道】 岸田総理(丁酉)は、令和四年六月十日にシンガポールにて開催された第十九回『アジア安保会議(シャングリラ・ダイアローグ)/英・国際戦略研究所』内で基調講演を三十分に亘り行った。講演後に記者からの質疑に応答した。


本年は日中国交正常化の五十周年に当たる。中国記者から、世界の平和と繁栄に影響を齎す日中関係について問われた。総理は「(両国間に)難しい問題は存在しますが、両国の関係を建設的で安定的な関係として構築する必要がある。」と、習近平(癸巳)主席との電話会談で一致した部分を伝えた。


続けて「大切な二国間関係を安定させる為にも、意思疎通・対話が重要であると思います。少しでも信頼関係をつくっていく。こうした努力を私はしていきたいと思います。是非、様々な関係者にご協力を頂きたい。」と答えた。


本会議は、アジア太平洋地域・欧州各国の国防大臣等が出席。アジアは世界経済の三十五㌫ちかくを占め、ASEANを核に拡大し続けている。



<中国へ手厳しく>

 総理は、出席者達が目指すべき未来の姿を展望した。現在を冷戦が終結して三十年振りの転換期とし、自身の自民派閥「宏池会」の先輩である宮澤喜一(己未)元・総理の当時の言葉を引用した。冷戦終結後の国会にて「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりと認識したい。」と述べた点を伝えた。


露鳥戦争を念頭に、令和時代で新しい世界平和の秩序を構築する、の意。


東南アジアという事もあり、「南シナ海・東シナ海問題」を挙げた。「ルールは果たして守られているでしょうか。長年に亘る対話と努力の末に、皆が合意した『国連海洋法条約』を始めとする国際法、そして、この条約の下の仲裁裁判の判断が守られていません。我が国が位置する東シナ海でも、国際法に従わず、力を背景とした一方的な現状変更の試みが続いており、我が国は断固とした態度で立ち向かっています。」と中国を名指ししなかったが、極めて強い口調で非難。

北朝鮮へも非難した。



平和の為の岸田ビジョン

 「世界第三位の経済大国であり、そして、この地域で戦後一貫して平和と繁栄を追求し、経済面を中心に貢献してきた、日本。その日本が果たすべき責任は大きい。そうした認識の下、歴史の岐路に直面する我々の平和を実現する為に、日本が果たすべき役割とは何なのか。誰もが尊重し、守るべき普遍的価値を重視しながら、“核兵器の無い世界”を目指す、といった未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、併し、時には強かに果断に対応する。


私はこうした徹底的な現実主義を貫く“新時代リアリズム外交”を掲げています。その中でも、日本は謙虚さ・多様性を重視する柔軟性、相手方の主体性を尊重する寛容さを失う事はありません。併し、日本・アジア・世界に迫り来る挑戦・危機には、これまで以上に積極的に取組みます。」と約束した。



その具体は、アジア太平洋の平和秩序を維持・強化していく為の五本柱『平和の為の岸田ビジョン』。

  1. ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化;特にFOIPの新たな展開を進める
  2. 安保強化;日本の防衛力の抜本的強化、日米同盟・有志国との安全保障協力の強化
  3. 核兵器の無い世界”に向けた現実的な取組み推進
  4. 連合国「安保理」改革等
  5. 新分野での国際的な連携強化;経済安保等  

日本が放つアジア太平洋の平和戦略

 総理は「ルールは守られなければなりません自らに都合が悪くなったとしても、恰(アタカ)もそれが無いかの様に振舞う事は許されません一方的に変更する事も許されません。変更したいのであれば新たな合意が必要です。」と、約束絶対の岸田を強調した。



一では、ASEANと並び、太平洋島嶼国もFOIPの為の大切なパートナとした。有志国が連携してリソース投入増の必要性を説いた。そしてFOIPを更に推進する為に「平和の為の『FOIP』プラン」を来年春までに示す旨を約した。


今後三年間で、二十ヶ国以上へ「海上法 執行能力強化(技術協力・研修等)」として、八百人以上の海上安保分野の人材育成・人材ネットワークの強化の取組みを推進していく。併せて「海上安保設備」の供与(二十億㌦の巡視船を含む)や「海上輸送インフラ」の支援を行う。加えて「法の支配」や「ガバナンス分野」において一千五百人以上の人材育成を行う。



二では、「平和国家である日本の総理大臣として、私は対立を求めず、対話による安定した国際秩序の構築を追求します。」と宣言。日本の防衛力を五年以内に抜本的に強化する。「反撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除しない。


日米同盟を一層強化し、同時に、豪州や有志国との安保協力も積極的に進める。ASEAN各国とも「防衛装備品」「技術移転協定の締結」を進める。「円滑化協定(RAA)」では欧州・アジア同志国との協定締結に向け、関係国と緊密に連携していく。



三では、米国と現実的な核軍縮の取組みを進める。併せて、全核兵器国へ核戦力の情報開示を求める。本年中を目途に「核兵器の無い世界に向けた国際賢人会議」を立上げ、第一回会合を広島で開催する。



四では、日本が来年から安保理入りする事(非常任、任期二年)が決まり、国際社会の新たな課題に対応したグローバル ガバナンスの在り方についても模索する。  



五では、今後五年間で百件超の「サプライチェーン強靭化プロジェクト」を支援する。



講演末尾には「この困難な時代において繁栄を実現する為には、ASEANが、インド太平洋地域が、世界の成長エンジンであり続ける必要があります。大きく困難な挑戦に直面しようとも、それを乗り越える強靱な国造りに日本は貢献していきます。


皆さん、改めて我々の未来を思い浮かべて下さい。今日、私が皆さんと共有したビジョン・ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の構築に向け、皆で取組む。“自由で開かれたインド太平洋”を次のステージに引上げていく。そうすれば、平和と繁栄を享受する未来が、希望に満ちた、互いを信頼し合い、共感し合える明るく輝かしい世界が必ず待っている。私は、そう信じています。有難う御座いました。」と締め括った。



記事:金剛正臣

写真:総理大臣官邸

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