「不登校」の原因は『無気力・不安』、大人が知るべき無気力へメカニズム(自己効力感)|メンタルヘルス予防教育プログラム

【教育・ビジネス・社会報道】 令和四年十月二十八日に国立研究開発法人「科学技術振興機構」の社会技術研究開発センター(RISTEX、センター長:小林傳司)は、『研究開発プロジェクト メディア説明会』を実施した。既報。


同プロジェクトの研究者である「同志社大」心理学部・石川信一(己未)教授は、臨床心理士・公認心理師・認知行動療法師。「臨床心理学」博士。「青少年のための心理療法研究所」理事。


主な研究分野は「子どもの不安に対する認知行動療法に関する研究」や「学校で実施するメンタルヘルスの予防教育プログラムの実装」等。



<無気力への対策は?>

 前回は子どもの自殺の急増に関するデータ等を報じた。今回は「不登校」に関して。その要因の大半を占めるものは、「イジメ」ではなく、「無気力・不安」の四十九.七㌫だった。上図の様にイジメによる不登校は略最下位であった。

※令和三年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果/文科省


QAにてハイムは、以下二点を問うた。

  1. 子どもへのメンタルヘルスの予防における家庭内「親(父母の別)」の貢献度合いは?
  2. 家庭における「無気力・不安(効力予期・結果予期が共にマイナス)」への対策、予防策は?


石川教授は一につき、「学校と家庭は、メンタルヘルス予防について非常に大切になってくる。」と。子どもを円の中心に据えると、その外側に家庭、更に外側に学校とのイメージだった。以下がポイント。

  • 貢献度合い:子どもにより異なる
  • 家族:子どもにとって一般的に近しい人←子どもへの影響は非常に強い(幼ければ、幼い程)
  • 父母:役割分担が大切(例;片方が話を聴く、もう片方がルール等を守る)←ツーボスシステム/経営学


二につき、「対策・予防策は一言では言えない。」と答え、以下のポイントを指し示した。

  • 無気力・不安に関し、しっかりと話し合う機会が非常に大切
  • 特に不安は口に出す事が大切。漠然としていればいる程に、悪くなる傾向
  • 何が「怖い・恐い」のかを冷静に話し合う
  • 家庭でできる事と学校でできる事を分ける←子どもの“強み”にフォーカス



自己効力感

 ウェビナでは「効力予期」「結果予期」という専門用語が出てきた。これは『自己効力感(セルフ エフィカシ)』に関するものだ。以下を自己効力感とした。

ある結果を生み出す為に必要な行動を、どの程度うまく行う事ができるか、という個人の確信


人が行動する前に「効力予期」がある。行動して結果が出る前に「結果予期」がある。

  • 効力予期:自己効力感の予期
  • 結果予期:ある行動が、どの様な結果を生み出すか、という予期


石川教授は「営業」を例に挙げた。営業という行動ができそうか否かが前者。営業した結果、出世するのか(給与は上がるか)否か等が後者。



<効力予期・結果予期の四象限>

 前者及び後者の「両方が備わっている時(効力予期・結果予期が共にプラス)は、自信に満ちた適切な行動をして、積極的に行動をする訳です。」と説明。上図・四象限の左上。右下の象限は「一番、マズイ状態。やってもやらなくても褒められないし、自信が無い(効力予期・結果予期が共にマイナス)。」と伝えた。


石川教授は「学力」を例に挙げた。勉強が苦手と感じており、でも勉強をしてもしなくても、褒められないと無気力等になる。


学校の先生が、効力予期を高め、校内で何かを行動すれば褒められる環境(プラスの結果予期)をつくれば、「自信に満ちた適切な行動をしてくれる。」と助言。



ケチ過ぎる日本社会

 不登校の無気力・不安につき、「学校に行ってうまくやれる自信が無い状態。そして行ったとしても中々認めてもらえない状態が続いてしまうと、人はそれに対して、やる気を失ってしまう。」と。重ねて「学校の中に居ても、その人にとって充実したものが無く、且つ、その中で自分が自信をもてる行動も無いと考えてしまうと、無気力になってしまう可能性が出てくる。」と経緯を説明した。


今回のウェビナは子どもに関しての内容であったが、この自己効力感は、現代の大人にも通じるものがあるのではないか。ブラックとされる企業や学校、霞が関等に勤める、ないし勤めていた大人達が「結果予期」をマイナスと捉えている可能性がある。その結果が早期退職だろう。


結果予期がマイナスであれば“報酬不足”であり、「期待予期」がマイナスであれば“サポート(関与)不足”と見做せるのではないだろうか。報酬も少ない、サポートも無ければ、やる気を失って当然だろう。石川教授は、心の専門家として現代の日本社会へ一石を投じたと言っても過言ではない。


記事:金剛正臣

スライド:石川信一

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