総理官邸で「生成AI」を議論|第十七回『新しい資本主義実現会議』

【経済・ビジネス報道】 岸田総理(丁酉)は、令和五年四月二十五日に第十七回『新しい資本主義実現会議』を開催(既報)。各委員は、「生成AI」に関して論じた。


「東大」松尾豊(乙卯)教授は、用語を整理した。


  1. 生成AI(generative AI):画像を生成する拡散モデル(diffusion model)や自然言語を扱う大規模言語モデル(large language model; LLM)等を指す。従来から「識別モデル」に対して「生成モデル」という分類法があり、その生成の側面に注目した呼び方
  2. 基盤モデル(foundation model):自然言語や画像等に共通して事前に学習したモデルを用い、継続タスクに適用可能にしたもの。主に「トランスフォーマ(平成二十九年に米Googleの研究者らによって提案された手法)」が使われる。LLMも含まれるが、自然言語や画像を跨る「マルチモーダル(複数データ種の組合せ)」なものが想定される事が多い
  3. LLM:言語データを対象に、「深層学習(主にトランスフォーマ)」を用い、「自己教師アリ学習」によって訓練された大規模なモデル。有名なものとして、米OpenAIの開発する「GPT-4」、Googleの「PaLM」、米Metaの「Llama」等がある。「ChatGPT」は、GPT-4(或いはGPT-3, GPT3.5)を対話用にチューニングしたもの




<第三次産業革命で遅れを取った日本にチャンス>

 松尾教授は生成AI、或いはLLMが進展しており、AIの言語能力の大幅な向上によって今後、社会全体を大きく変える事を予想。米国では、労働者の八割に影響があるとされ、生産性向上へ大きく寄与する可能性があり、日本も様々な形で利用していくべきとした。


既にビッグテックから様々なウェブサービスやAPIが提供されており、それを使ったサービス開発の奨励を求めた。


同時に、個人・企業・行政等でも活用の推進も訴えた。DXが進んでいない日本においては、「リープフロッグ(デジタル技術の一気普及)」的な意味合いを持ち、DXの決め手になる可能性を示唆。デジタル・AIの新技術としてはこれまでになく、日本の経営層とトップ層の理解や動きが早く、希望が持てるとした。



キラーアプリが不在

 またLLMを日本でも作るべきと訴え、OpenAIが米マイクロソフトから一兆円の投資を受け、人材面でもデータや計算機環境の整備の面でも、相当に進んでいる点を指摘。短期的に日本がこの競争に勝つ事は略不可能であるが、報道現在は「技術の勃興期」で、今後の社会的インパクトの大きさや産業への波及効果、サイバセキュリティ、経済安保等における重要性を考えれば、国内でもLLM開発をしっかりとやっていくべきとした。


考えるべきポイントは「コストパフォーマンス」。一、二年遅れの技術であれば、そこそこの投資額で付いて行く事が可能とし、マラソンを例に「先頭集団の最後方に付ける」事であり、風を切っていかないといけない先頭に比べると、効率的に開発を進める事ができると諭した。


特にLLMの「キラーアプリ(経済的に最も成功する応用事例)」は未だ見付かっておらず、医療や行政等の日本でも業務効率の改善の余地の大きい領域が応用事例になるかもしれない点を突いた。


以下が、国家として注力すべき三点。

  1. 計算資源への投資;数百億円(或いはそれ以 上)の投資が望ましい。GPT-3は「パラメータ」が 一千七百五十億あり、学習に必要な計算量は数百ゼタFLPと試算
  2. 日本語データの整備・提供
  3. LLMの開発・活用における競争環境の整備;ノウハウ共有の環境整備




<「国際的なルールづくり」への参画>

 消費税等の増税賛成派の「日商」小林健(己丑)会頭は、生成AIを始めとするイノベに適応する事が不可欠とし、AIの開発・利活用についての「国際的なルールづくり」に主体的に参画するべきと訴えた。


併せて、「事業成長担保権」の創出や「知的資産」を信用材料とした公的融資制度等、新たな資金調達手法の確立と「イノベ・ボックス税制」の創設(知財収益に対する法人税軽減の優遇措置)を挙げた。


「日本総研」翁百合(庚子)理事長は、「特に深刻な人手不足に直面する各事業者が、生産性向上の為に活用する事」を予想。著作権等の課題を整理し、国際的な議論も踏まえ、考え方を示していく必要性を訴え、AI分野の新しいイノベが日本発で次々と起こる様な環境整備と支援の重要性を説いた。



AI活用大国へ

 「Zホールディングス」川邊健太郎(甲寅)代取は、LLMやGPTの開発よりも、これらを活用する事を強力推進し、世界で有数の「AI活用大国」となるべきと説いた。行政や中小企業において「最も効果的ではないか?」と指摘。


また事前規制ではなく、「ロボット工学三原則」の様に社会共有し、活用を促進させるべきとした。併せて、報道現在で原則が各省庁縦割りで乱立。デジタル庁への主導を求めた。


「経営共創基盤」冨山和彦(庚子)代取は、 生成AIが大半のホワイトカラー業務(極めて高度なマネジメント業務や知的プロフェッショナル業務以外)を破壊する可能性が高く、「ジョブ型」「プロ型」両雇用への移行を更に先鋭的に進める必要があると説いた。



規制・ルール

 消費税の十四㌫以上増税を望む「同友会」櫻田謙悟(代表幹事)は、規制は最小限に留める事を原則とし、「社会的に好ましくない意図での利用のみ規制すべき」とした。民間各社の利用状況を調査・公表を求めた。


「連合」芳野友子(丙午)会長は、AIの使用の在り方につき、AIはそのアルゴリズムや学習プロセスによっては偏った判断基準が形成され、誤った判断が行われる可能性がある点や機密情報・個人情報が外部に漏れる恐れがある点より、安全性を第一に据え、プライバシ保護や人権の尊重等の倫理的課題の取扱いについて、予(アラカジ)めルールを定める事を重要とした。


AIの社会実装に当たっては、「雇用の劣化」や「雇用の二極化」が生じる事が無い様に、教育訓練を活用する等とAIと調和できる環境を整備していく事を訴えた。


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