【社会報道】 皇后陛下(甲戌)は、平成三十年十月二十日にお誕生日を迎えられ、八十四歳となられた。陛下は宮内記者会の質問に対する文書にご回答なされた。来年の御代替わりにより、皇后陛下のお誕生日としての御回答は最後となる。文字数は三千字程に認められた。
記者会はご心境を伺った。陛下は、この一年間をお振返りになり、自然災害に触れられた。「バックウォーター、走錨等、災害がなければ決して知る事のなかった語彙にも悲しい事ですが慣れていかなくてはなりません。」と被災者を悼まれた。バックウォータは河川等の開水路で、下流の水位変化が上流に及ぶ事。走錨は錨を下ろした船が流れる事。
訪れられた被災地では「被災者の静かに物事に耐える姿、そして恐らくは一人ひとりが大きな心の試練を経験しているだろう中で、健気に生きている子ども達の姿にいつも胸を打たれています。」と御心境を語られた。
来年五月の御譲位を前に「約三十年に亘る陛下の「天皇」としてのお仕事への献身も、後半年程で一つの区切りの時を迎えます。これまで『全身』と『全霊』双方をもって務めに当たっていらっしゃいましたが、加齢と共に徐々に『全身』をもって、という部分が果たせなくなる事をお感じになり、政府と国民にそのお気持ちをお伝えになりました。五月からは皇太子が、陛下のこれまでと変わらず、心を込めてお役を果たしていく事を確信しています。」と皇太子殿下(庚子)に期待をお寄せになる。
天皇陛下(癸酉)との人生に関しては「あの御成婚の日以来今日まで、どの様な時にもお立場としての義務は最優先であり、私事はそれに次ぐもの、というその時に伺ったお言葉のままに、陛下はこの六十年に近い年月を過ごしていらっしゃいました。義務を一つ一つ果たしつつ、次第に国と国民への信頼と敬愛を深めていかれる御様子をお近くで感じとると共に、新憲法で定められた『象徴(皇太子時代は将来の象徴)』のお立場を如何に生きるかを模索し続ける御姿を見上げつつ過ごした日々を今深い感慨と共に思い起こしています。」とお振り返りになられた。
また学生時代に「経験するだけでは足りない。経験した事に思いを巡らす様に。」と学長から云われた事を皇后陛下は御自身に云い聞かせられた。育児は眠さとの戦いと表現なされたが、大きな喜びとされた。
公務を離れられた後には、本を時間を掛けて読まれる事を愉しみになさっている。特にイギリスの作家P・G・ウッドハウスの探偵小説「ジーヴスの事件簿」等の探偵小説に興味を抱かれている。
両陛下は御譲位後に東宮御所の仙洞御所に移られる。最後に皇后陛下は「暫く離れていた懐かしい御用地が、今どの様になっているか。日本タンポポはどのくらい残っているか、その増減がいつも気になっている日本蜜蜂は無事に生息し続けているか等を見廻り、陛下が関心をお持ちの狸の好きなイヌビワの木等も御一緒に植えながら、残された日々を静かに心豊かに過ごしていける様願っています。」と結ばれた。
写真提供:宮内庁
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