生涯学習を実現する二十年後の高等教育|文科省『二〇四〇年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』

【社会報道】 文科省(大臣:柴山昌彦)は、平成三十年十一月二十六日の第百十九回総会において『二〇四〇年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』を取り纏めた。


これは、二十九年三月の中央教育審議会総会にて「我が国の高等教育の将来構想について」諮問を行い、第四革命の進展や本格的な人口減少社会の到来等の経済社会の大きな変化の中で、高等教育機関が求められる役割を真に果たす事ができる様に概ね二十年後を見据えた時代の高等教育の将来構想につき、総合的な検討を要請していたもの。中央教育審議会では、大学分科会将来構想部会を中心に審議を進めていた。


答申は大別して六つ。

  1. 二〇四〇年の展望と高等教育が目指すべき姿;学修者本位の教育への転換
  2. 教育研究体制;多様性と柔軟性の確保
  3. 教育の質の保証と情報公表;「学び」の質保証の再構築
  4. 十八歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置;あらゆる世代が学ぶ「知の基盤」
  5. 各高等教育機関の役割等;多様な機関による多様な教育の提供
  6. 高等教育を支える投資;コストの可視化とあらゆるセクターからの支援の拡充


一では先ず「予測不可能な時代を生きる人材像」として、普遍的な知識・理解と汎用的技能を文理横断的に身に付けていく事と時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、論理的思考力をもって社会を改善していく資質を有する事とした。学修者本位の教育への転換としては、「何を学び、身に付ける事ができたのか」、個々人の学修成果の可視化と生涯学び続けられる為の多様で柔軟な仕組みと流動性を挙げた。


二では学生・教員・教育プログラム・ガバナンス等・大学の強みの強化を多様化させたい。例えばリカレント教育、留学生交流の推進、高等教育の国際展開、研修、業績評価等、学位プログラム中心の大学制度、複数大の人的・物的資源の共有、ICT教育促進、国立大学の一法人複数大学制の導入、経営判断を促す早期指導、「大学等連携推進法人(仮称)」制度の導入、学外理事の登用を挙げた。


三では全学的な教学マネジメントの確立としての指針作成、一覧化を含む学修成果の可視化と情報公表の促進、設置基準の見直し、認証評価制度の充実。


四では社会人と留学生を含めたキャンパス実現、複数の高等教育機関・地方公共団体・産業界で構成する「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築、地域における高等教育の在り方の再構築、国立大学の役割と一定の方向性の検討。


五では各学校種(大学、専門大・専門短大、短大、高等専門、専門、大学院) における特有の課題の検討、転入学や編入学等の各高等教育機関間の接続を含めた流動性を高めて多様なキャリアパスの実現。


六では高等教育への公的支援の充実、 民間投資や社会寄附等の支援の重要性(財源の多様化)も挙げた。


本文末尾「この改革は(中略)「学び続けること」こそが、価値であるということを共有できて、初めて実現されることである。」とある様に、二十代での学び終えから生涯学習へ国全体が移行していく。その為の二十年後に向けた高等教育となる。国は「地域連携プラットフォーム(仮称)」と国公私立の枠組みを越えた連携の仕組み「大学等連携推進法人制度(仮称)」に着手する。


撮影:金剛正臣

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