ブラジルのエレガンスと女の情熱|サンパウロ・ファッションウィーク

【高級ファッション報道】 平成三十一年四月二十二日から二十七日までブラジル・サンパウロにて『ファッション ウィーク』が開催された。東京等とは異なり、サンパウロは年に一回。通期でのファッションショーとなる。南米では最大の経済大国であり、世界ランクは九位。カナダ・ロシア・韓国よりも上位だ。ファッションは経済を写し出す。現在のブラジルは景気回復局面。


本年は三十六ブランド。全体的に派手で厳かな雰囲気は削ぎ落とされ、リアルクローズとは異なる五大コレクションとは一線を画す独自の方向性を見出している。リアルクローズとオートクチュールの中間の位置付けであろうか。だが、ブラジルのパーティ現場では、ショーに出てくるような衣装を着る機会がふんだんにあるのも事実。内、ハイムは六ブランドを選んだ。


まずは水着ブランドの「BORANA」。アフリカの民族調と太平洋の民族衣装を混ぜ合わせたようなコレクション。かなり攻め感の強いデザインで、女性の逞しさを表現している。足元はゴツめのブーツで統一している点も興味深い。もう一方はデニムのシリーズ。肩をすっきり魅せる肩出しのドレス調でスリーブはバルーン。シルエットだけ見ると、日本のアニメのキャラクタのような雰囲気さえもある。勿論、ボトムスはブラジリアン カットでヒップラインを美しく。


「APARTAMENTO 03」はインスタを中心に展開。強気の姿勢だ。比較的、大人しく見えるものの、各デザインは相当な個性を発している。色身もサンパウロらしさがあり、南米独自のエレガンスの一つを体現しているのではないだろうか。今回は白やベージュ等が多かったが、目を惹く綺麗な青紫系のルックを写真に選定。中東のアラブのような雰囲気があるが、腰回りには和服の帯のようなマークも見える。靴はプレーントゥをややスポーツっぽく見せている。


「AMIR SLAMA」はショーは大いに攻めた。二部制で一部では、モデルにターゲットである中高年を登用。二部では色は紺、ベージュ、灼熱を想定するオレンジ等、布地の大きいものと小さいものに大別される。大きくとも品性高いSEXYさを纏っている点がポイントだろう。メンズも披露しているが、こちらも太めの男性がランウェイを歩いていた。あらゆる体系の人にファッションを愉しんでもらいたい、とのデザイナの純粋な想いからであろう。ハイムも大いに賛同ができる趣だ。


「PROJETO ESTUFA/ALUF」は今回の中では一番品性を追及しているように感じた。女性のデザイナはギリシアやローマ等の世界の文明の中から、様々な要素をスパイスとしてファッションに落とし込んでいる雰囲気だ。ルックの発色も反射する糸等で独自性の高いデザインを綺麗に仕立て上げる。他にも「PROJETO ESTUFA」の名義で今回は計七ブランドがランウェイショーを行った。


「LENNY NIEMEYER」もアフリカ調で攻めた。現代西洋に接した、とあるアフリカの王室・王族の衣裳群のようなコレクション。ニットのスウィム ウェア風は逸品。テキスタイルやカッティングのバランスなのだろうか。全体的に揺ら揺らとする箇所があり、正に着るだけで一つのオーラを纏う事ができるルックが多数。東京のファッションに大いに欠けている本質を現実化している。


最後は水着ブランドの「TRIYA」。今回は女性三人でショーを創り上げた。民族性が統一コンセプトであるが、色彩が派手なマルチボーダーやタイダイ等と華やかな一方で、愛らしいピンク遣いやオーシャン系、黒地と非常に多彩で目移りするコレクション。特に水着のボトムスは見逃せない。ハイレグは腰骨の上から、とフロントのIゾーンをかなり狭くしている。バックはブラジリアン気味だが、その高さが異なる。通常よりも上の方から布地が広がっている。つまり股布(シック部)が後ろに長いのだろう。


記事:金剛正臣

写真:FFW Fashion Forward

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