制度としての年金「百年安心」が二十五年後には崩壊している理由

【社会考察】 未だ本質を理解していない記事が多いので、論証したい。よく見られるのが、J-castニュース等が伝える生活の「百年安心」と年金制度の「百年安心」は異なる、という見解だ。これ自体に間違いはない。だが若手世代にとっての年金制度は崩壊している。以下の三点が理由となる。


  1. 特殊出生率を基礎とする算定
  2. 二十五年後の「マクロ経済スライド」の結果
  3. アマチュアによる年金原資の運用


特殊出生率を基礎とする算定

 平成十六年に小泉政権下で『年金改革法』が成立。厚生年金保険料の労使折半化や「マクロ経済スライド」による所得代替率で五割を保障、積立金の計画的な取り崩し等を改正した。


当時は令和六年までを想定し、計算しているが、将来の合計特殊出生率を一.三九の前提で全てを計算してしまっている。昨年は一.四八であったが、今の四十歳が年金を受け取れる六十五歳までには二十五年間もある。その間に低下していく点は国民が至極、納得するであろう。厚労省も「日本の将来推計人口(平成二十九年推計)の概要」で令和四十六年には中位の仮定が一.四四、低位は一.二五と試算。十五歳から四十九歳までの女性が平均で一人以上を産む計算だ。


若手の収入は落ち込み、婚姻率も下がり、子どもの教育費用も上がる中、今後二十年以上も現状維持の出生率を維持できるだろうか。平成十九年以降は出生率は増加しているものの、出生数は減少。シニア数は増加中。現役世代が年金受給者のシニアを支える現行の制度では、出生数で計算すべきだろう。



二十五年後の「マクロ経済スライド」の結果

 次に「マクロ経済スライド」であるが、令和元年六月十日の参院・決算委において共産・小池晃 参議が平成二十六年の「年金財政検証(五年に一度、本年分は公表延期中)」に基づき、若手の年金受給の開始の場合を指し示した。「基礎年金は三割カット。今、四十一歳か、それよりも若い方は夫婦で二千万円どころか、三千六百万円の差額が出てくる。」と今後、二十五年で平均赤字額が一千六百二十万円増える点を指摘した。


生涯年収は大卒でニ億円程度、高卒で一.三億円程度。この内に平均三千六百万円の比率は、大卒が十八.〇㌫、高卒は二十七.七㌫。大まかにざっと大卒が二割、高卒は三割を貯蓄・運用に回した方が良い平均になる。だが年功序列も崩壊し、過去のデータから算出している生涯年収も未来には当てにならない。転職経験者なら分かるだろうが、年収の維持や増加は安易ではない。働き方が変わり、非正規が増加する中、六十五歳になるまでの状況は大きく変わっている。

何よりも年金の受給開始年齢を七十五歳まで引き上げる政府案があるので、プラス十年は心構えしなければならない。



アマチュアによる年金原資の運用

 最後は原資となる年金の運用だ。先の『年金改革法』において「年金積立金の運用の在り方の見直し」として国内債券を中心とし、国内外の株式を一定程度組み入れた分散投資を「年金積立金 管理運用 独立行政法人(GPIF)行っている。本年一月末の発表で昨年第三・四半期(十月から十二月期)の運用実績は過去最大の十五兆円の損失を出した。第一と第二は二.六兆円、五.四兆円の利益だったが吹き飛んだ。第四の公表は参院選後に見送る方針。


原資に関して「運用・専門性の徹底や責任の明確化を基本」と謳うが、運用している現場はアマチュアそのもの。同独立行政法人の職員等が独学で運用を行っているに等しい。資産運用のプロでは無い点は断言できる。市場は甘くないので、日本の年金原資はかっこうの餌食だ。詰まり、年金原資は減る。



以上より、二十五年後以降、実質三十五年後以降に年金受給者への「所得代替率が五十㌫」の給付は不可能である。もし可能にするのであれば、国民負担分を今回の消費増税の様に増やし続ける事になる。だが、国民医療の上昇には歯止めが効いてない現状では、こちらの追加負担が優先であろう。


今は年金制度の「百年安心」が崩壊してないが、若手世代の未来には制度が崩壊する事が確定したのだ。実際の責任を負わないシニア達の意見は参考にはならない。何故なら、その時に年金受給者でない可能性が高いからだ。責任を負う若手世代が論じた意見こそが、全うである。


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