六十代以上の経営者は三十歳未満の経営者と同じ「売上高/従業員」|経産省

【ビジネス考察】 令和元年九月十七日に開催された第一回『成長戦略部会/経産省』にて事務局の参考資料として以下の三部が委員へ配布された。

  1. 第一回 成長戦略部会 議論の参考資料(七十九頁)
  2. 業種・規模別の企業分析(六頁)
  3. 新興国企業との共創による新事業創出 ~アジア・デジタルトランスフォーメーション(ADX)~(五頁)


非常に優れた参考資料である。一では、「日本企業の利益の動向」「マークアップ率(粗利/売上原価)」「経営の質」「既存企業とスタートアップとの協働・M&A、事業再編」「研究開発」の五つに大別。主に経済大国世界一位の米国を相手に「時間当たり実質労働生産性の平均伸び率」や「営業利益率(ROA)」等の各種経営指標を並べ、現在の日本が首位と比べて如何様であるかを指し示している。中小・零細企業が読み込むべき資料であろう。


終わりに同省は、マークアップ率の向上や研究開発の質・硬直性、スタートアップとの連携、パイオニア(先駆者)企業への集中投資を挙げた。



二では、日本の大企業と中小企業を比べる。「グローバル・バリューチェーンの再構築」による経済全体のパイの拡大が必要とし、売上高・粗利益の伸び率や人件費・設備投資額の増減を産業別に比較。中小では広告業と生活関連・娯楽業が直近十年で深刻だ。自社の業界の現状を知れる。


三では、東南アジアとインドに対する「ADXパートナーシップ構想」として提言。日本の大企業とベンチャの可能性を探っている。


中小・零細は、経済のトレンドである大局を俯瞰する点に大企業よりも劣っている。身の回りの取引先だけでは自社の成長は難しい。積極的な取引先の拡大を示唆しているとも言える。


特に一の「経営者の年齢の国際比較(上図)」は重要であろう。経営者の年齢分布で、日本企業は六十代以降が欧米に比べて多い、と同省は断じる。欧米と比較し、日本では四十五歳から六十歳未満の経営者ボリュームが圧倒的に少ない。米国のスタートアップでは、創業時の平均年齢が四十二歳。アラフォー近辺が創業し易い環境を整える行政施策が求められる。



また「経営者の年齢と企業業績」では、経営者が六十歳を超えると「売上高/従業員」は三十歳未満の経営者以下に落ち込む。同伸び率に至っては完全な負の一次関数で、経営者が四十八歳以上だと、マイナス成長を進めてしまっている。労働生産性で考えれば、シニアの経営者は統計的に害悪であり、早期の若返りが求められるだろう。


恐らく、この統計的事象は経営に限った事ではなく、政治の世界にも適用ができそうだ。それは人間の能力の限界ではなく、一にある「知の深化」と「知の探索」への近視眼であろう。新たなモノを許容・学習・利用できる脳の退化だ。だが脳科学上では、脳は進化を続ける事が可能で、一部のシニア経営者は異なり、「両利き経営(知の深化・探索)」が可能であるのだろう。


日本の労働生産性を高め、GDP(国民の所得)を増やす為には、経営・省庁・政党等からシニアを大幅に削減し、若手を投入し、新たな事業ドメインのパイオニア(先駆者・開拓者)を支援する事が近道である、という統計データである。


平成の失敗は、中堅・シニアが若手を萎縮させた事に他ならない。

よって令和の成功は、若手を伸長させれば良い。中堅・シニアはサポートに回れば良い。それが適材適所となる。


記事:羽田野正法

画像:前述参考資料

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