【芸能ニュース】 平成二十八年五月十四日、東京・新宿にて映画『ひそひそ星/日活』の初日舞台挨拶が行われ、監督の園子温(辛丑)、元Busty系グラドルでプロデューサ兼主演の神楽坂恵(辛酉)が登壇した。本作は二十五年に設立された園が立ち上げた映画制作会社「シオン プロダクション」の記念すべき第一作品目の作品となり、園が二十代の時に書き留めていたオリジナルの物語が、二十五年を経て結実したモノクロームのSF作品として誕生した。
本作は、二十七年「トロント国際映画祭」でNETPAC賞(アジア最高賞)を受賞、「第十六回 東京フィルメックス」のオープニング作品に選出された。ロケ地は震災後の福島。アンドロイドの女性・鈴木洋子“マシンナンバー七二二”(神楽坂)が、昭和風のレトロな内装の宇宙船「レンタルナンバーZ」に乗り込む。既に滅びゆく絶滅種と認定されている人間達へ大切な思い出の品を届ける為に、静寂に包まれた宇宙を何年も旅する。
<撮影・照明等のスタッフは超一流>
二十六年十月に撮影された本作は、日本映画の最前線で活躍する馴染みの超一流スタッフ達で創り上げられた。東宝スタジオに大きな宇宙船のセットを組むと同時に、“三.一一”の傷跡濃い福島の富岡町と南相馬、浪江町に赴きロケを敢行。地元住民の協力を得て、記憶と時間、距離への焦燥を、“ひそひそ”と声のトーンを落とした特異なセリフ回しで描き出した。風景で語らせる映画を、園は福島で撮りたかった。また全編アフレコで、音楽的な映画でもあると自負した。
”何故、二十五年の時を経て制作されたのか?”というMCの問いに園は、「元々この映画でデビューをしようと思っていたが、費用もなく地味で変わった作品の為、自主で制作する事が出来なかった。それでも全シーンの絵コンテを書き続け、自分の制作会社が出来上がったこの機会に発表する事となった。」と、本作が商用を意識した作品である旨も明かした。
神楽坂はシオン プロダクションの代表に
「全編ヒソヒソ声で誰も作ったコトのない、見たコトのない映画を作りたい。」という園の思いが詰まった本作は、予告編を見るだけでも十分映画の世界に引き込まれるだろう。また園の伴侶でもあり、初の主演を飾った神楽坂(園いずみ)は「いつも出演する側として関わっていたので、見た事のない大変さを味わい勉強になった。」と、プロデューサ業の大変さを痛感したとも語った。
これから本格的に始動していく「シオン プロダクション」は神楽坂が代表を務める。園は「僕は給料制なんです。」と会場の笑いも誘った。待機作には映画「新宿スワン2/同社」等もあり、これからの真・園子温の映画監督としての活躍に注目である。映画は五月十四日より公開。映画だけではなく、ワタリウム美術館で行われている「ひそひそ星」展や、映画が出来るまでの写真入り小説でもひそひそ星の世界を味わえる。
アンドロイドの鈴木洋子は、昭和レトロな内装の宇宙船レンタルナンバーZに乗り込み、相棒のコンピューターと共に、星々を巡り人間の荷物を届ける宇宙宅配便の配達員をしている。宇宙船での旅はたいくつ極まりない。しかし、マシンである洋子は退屈を感じないし、まめに船内を掃除したり、旅を記録したり、相棒のきかい6・7・マーMの故障を修理したりで長い宇宙時間をマシンらしく過ごしている。
人間に届ける荷物は、帽子だったり、えんぴつや、洋服だったりとさほど重要に見えるものはない。配達には何年もの年月がかかるのだが、マシンである洋子には、なぜ人間が物体をどんな距離にでも瞬時に移動できるテレポーテーションがある時代に、数年もの時間をかけて物を届けるのか理解ができない。荷物を受け取る人々の反応は様々だが、誰もがとても大切そうに、荷物をひきとっていく。30デシベル以上の音をたてると人間が死ぬおそれがあるという“ひそひそ星”では、人間は影絵のような存在だ。洋子は注意深く音をたてないように、ある女性に配達をする。すると・・・。
映画『ひそひそ星/日活㈱』初日舞台挨拶
記者:原田眞吾×撮影:金剛正臣
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