【社会報道】 令和二年四月二十四日にナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA、代表理事:齋藤貴弘)は、夜間文化価値調査『Creative Footprint TOKYO(全四十七頁)』の報告書を取りまとめて公表した。
調査では、東京における夜間経済の現状と課題を多角的な視点から分析し、観光施策と文化振興、まちづくりを有機的に連結させていく事を目的に実施。具体的には、夜間経済における中核的文化拠点であるミュージック ベニューの調査、観光・文化・まちづくりに関わる多様なステークホルダ(事業者、クリエイ
ター、プロデューサー、行政)五十人超とのディスカッションとワークショップを実施した。
今回の調査は独・ベルリン、米・NYに続き三都市目。欧州のナイトライフに特化したコンサル企業と米「ペンシルバニア大」が共同で開発した調査手法を用いた。
調査は、都市における夜間経済の状況を分析する上で、ミュージック ベニューを一義的な調査対象とした。音楽はアート、ファッション等の他分野の分化と融合しやすく、ミュージック ベニューが都市のコミュニティハブとしての機能を果たすケースが多い。ベルリンとNYに比べて東京は総合スコアで劣るものの、「コンテンツ(プロモーション、コミュニティの存在、創造性、実験性、多様性)」に関する評価は二都市をやや上回る結果になった。
職人的な情熱に基づく創造性、独自のオーセンティックな文化コンテンツが様々な領域に存在する事が東京の魅力、という意見が多くの有識者から寄せられた。一方、文化を表現する為の「スペース(規模、ロケーション、運用年数、多目的性、SNS評価)」と文化活動を支える基盤や社会的環境である「フレームワーク(公共空間での文化的活動、夜間の公共交通機関、財政支援全般、政策全般、行政機関・意思決定機関へのアクセスのし易さ)」の評価は両都市に劣る。特に後者については多くの課題があり、文化コミュニティから行政機関へのアクセス、深夜の公共交通、文化的活動の為の公共空間の活用等が、要改善の項目として明らかになった。
調査レポートの執筆後に世界を襲ったコロナ禍の中で、我が国の夜間経済は完全に停止。アーティストや技術者は活動の場と収入を失い、ベニューやイベント関連の事業者は廃業の危機を迎えていると同協議会は危惧。存続の危機に瀕する文化コミュニティをアフターコロナに繋ぐ為に、「フレームワーク」で焦点となった文化支援体制を拡充し、社会全体で文化を支えて行く必要性を訴えた。
「世界から訪れる人々をもてなす文化・観光の基盤は、今手を打たなければ数ヶ月で崩壊・消失してしまうでしょう。」と危機感を募らせる。
特に劣っているのは、フレームワークの行政機関・意思決定機関へのアクセスのし易さ(一㌽/十㌽)と同じく夜間の公共交通機関(三㌽)。平成二十八年の改正『風営法』により、深夜十二時以降の営業が可能となった。だが客室面積が三十三平方㍍未満の小規模ベニュー(小箱)は「特定遊興飲食営業/風営法」の免許取得が厳しい。法的規制要件の緩和や基準の明確化を求めている。
また「地域によって異なるが地方公共団体や警察のナイトライフ産業に対する理解不足は依然として残っており、閉鎖的だと感じる。」との意見も。若者は悪という観念は現・都知事においても根強い。多様性を否定している。行政に関しては「意思決定者へのアクセスは容易ではなく、行政と現場との認識の乖離を実感している。」「ナイトシーンの代表者又は組織が行政機関と問題を共有し、相互理解を深める事が重要。」等が挙がった。
画像:㈳ナイトタイムエコノミー推進協議会
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