遠隔教育(オンライン教育)で日本は世界最下位、二十三区も実施にほど遠く

【教育考察】 緊急事態宣言の発令により学校は休校している。その間、子ども達の学力は向上するのか。答えは否。


令和二年四月二十一日の記事「【東京二十三区調査】オンライン授業、導入は港区のみ。セキュリティ対策や家庭環境の差に苦慮/ハフポスト」によれば、遠隔教育(テレ エデュケーション)のオンライン授業の実施は特別区の二十三区内で唯一、港区(区長:武井雅昭)のみとなった。千代田区(区長:石川雅己)、品川区(区長:濱野健)、中野区(区長:酒井直人)は未回答。


導入検討は十二区に留まる。オンライン授業を行わない理由はa「端末が用意できない」、b「家庭環境に差がある」、c「セキュリティ上、好ましくない」の順。導入課題ではb、c、aの順となった。


 「東大」大学院 情報学環・学際情報学府の伊東乾(乙巳)准教授は、二十九日に記事「日本を衰退させる低識字率世代出現の恐怖/JBプレス」、五月一日に記事「危うし日本:中国に圧倒的差をつけられた教育/同」を立て続けに寄稿。現下の教育機器に警鐘を鳴らしている。


前者の記事では「日本は先進国のみならず、発展途上国も含め、最も遠隔教育の準備が遅れています。」と指摘。原因は“対面指導の原則”とし、武漢肺炎の影響は三年程度は続くとの前提で小中学生の学力低下を危惧。識字率の低下さえも訴えている。


後者の記事では昭和四十一年から起こった中国「文化大革命」を例に当時、中国内の学校教育が破壊され(一年から五年程)、三十年を経て本格的な経済成長に至った点を「教育を失うことは、下手をすれば半世紀近く国を失うことに等しい影響を及ぼしかねない、国家の一大事にほかなりません。」と伝えている。


 伊東准教授が挙げた遠隔教育の遅れは、本年『Learning remotely when schools close: How well are students and schools prepared? Insights from PISA/経済協力開発機構(OECD)』内の「F4.教師のデジタル教育スキル」「F5.教師自身のデジタル機器へのレッスン時間」「F6.教師がプロから学べる可能性」と「F8.学校内の技術アシスタント」。この四項目で、日本は全七十七ヵ国・地域で最下位。


「F9.子ども達のオンライン学習の利用可能性」でも、日本は下から数えた方が早く七十二位。


原因も記した。世界の先生は遠隔授業への対応に時間をかけているが、日本の先生は十人中九人が「忙しくて時間がない」と、PTA中心主義の弊害が露骨に出てしまっている。


  日本は安倍政権により「ゆとり教育」から脱却したが、今回の武漢肺炎で遠隔教育の脆弱性が露呈してしまった。一年以内の短期的な収束は楽観的で、三年から五年の中期的な収束を主たるリスクとするべきであろう。さすれば学校は何月に入学の問題ではなく、断続的な自粛(休校)下における遠隔教育を逸早く始めるべきだ。だが首都の特別区でさえ、散々な実施結果だ。全国自粛で考えるならば、全国的に遠隔教育に舵を切るべきだろう。


このタイミングで遠隔教育へ舵を切らなければ、伊東准教授が最も危惧する識字率低下の問題が起こってしまう。日本経済は素より、今の子ども達の人生が大きく損なわれてしまう。保護者達は現在の危機に気付かなければならない。経済大国第三位の日本が教育において、複数も世界最下位を記録してしまう事実が何を意味するのか。子どもの未来が大丈夫な筈がない。


 そして根本的な原因である、疲弊し切った先生方に学びの時間をPTAを筆頭とする保護者は与える。PTAは散々、先生方の時間を奪ってきた。目先の要求だけを突き付け、保護者の要求へ真摯に応える為に人生そのものを割いてきた。余りにもPTAがわがまま過ぎた。こんな統計結果が出ないと理解できない程に、PTAは短絡的で幼稚であった。教育における諸悪の根源はPTAが占める所が多い。記者も一部、学生時代にPTAの自分勝手で学校教育を邪魔している事を体験してきている。


今すぐには遠隔教育ができなくとも、先生方に時間を与え、子どもの学ぶ機会を保護者達が保証する。遠隔教育が行き届くまでは保護者自身で子どもに教育を施す。人材は一朝一夕ではつくれない。今までのPTA・保護者は大いに反省されたい。学校経営に専門家でない者が口を挟むべきではない。あくまでもPTAの発言は意見であり、軽はずみな要求をしてはならない。教育委員会も同罪である。全て現場の先生のせいにしている。


学校はサービス業ではなく、憲法第二十六条に示されている通りに教育は国の義務(仕事)なのだ。教育を受ける権利、今ならば遠隔教育を受ける権利をPTA・保護者が奪っている事実を直視されたい。国に仕事をさせる為に、今一度「先生>生徒(PTA・保護者)」の上下関係に戻す事を望む。そうすれば、遠隔教育も早く実現できるだろう。


記事:金剛正臣

画像:経済協力開発機構

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