経団連がDXを定義し、定性指標を公表|Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~

【経済報道】 経団連(会長:中西宏明)は令和二年五月十一日に記者会見を開き、『Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~』を公表した。会長・副会長会議で審議・承認された。


新提言では「産業構造DX」「企業DX」「新たなルール、ガバナンスの確立~産学官協創による国際展開~」の三章構造(四十一頁)。中西会長(丙戌)は「S5.0を実現する上で鍵となるのはDXであるが、これは単にデジタル化を進めるのでなく、多様な人々の想像力と創造力を組合わせ、新しい価値を協創する事である。良いものを作れば売れるという単純な事ではなく、お客様や他の企業と一緒に価値を創り出していく事が重要である。また業界や組織、現場で働く人々の意識や見方も変えていく必要がある。」と会見で述べた。



<価値協創型を日本DXに>

 第一章ではDXを定義。「デジタル技術とデータの活用が進む事によって、社会・産業・生活の在り方が根本から革命的に変わる事。また、その革新に向けて産業・組織・個人が大転換を図る事」と決めた。これまでの産業は業種・製品起点での区分だったが、今後は生活者の体験価値・解決される課題別の産業へ換わる。産業構造もピラミッド型(頂点:大企業)の構造から、協創型(フラット:対等)へと転換する。


経団連は米・中・欧のDXも意識。日本発のDXは「価値協創型(多様な主体の協創による生活者の価値の実現)」を主軸にしたい。米国は巨大プラット フォーム主体、中国は国家主体、欧州はデジタルの単一市場戦略。日本発DXでは「協創」を中心に、ステーク ホルダを同業種・異業種・アカデミア・自治体・国・スタートアップの六者とした。この協創を以て「生活者価値(CX・UX)」を生み出したい。



第二章では協創DXの指標も示した。レベルを五段階とし、協創・経営・人材・組織・技術毎に参考例を例示。二段階目をDXの準備段階と定め、各社が二段階目を目指す事を推す。協創の方法は「サービス・製品」「データ」「人材」による三種の方法がある。経営では具体的な事業刷新の戦略策定の必要性を問う。人材では外部人材の活用も含め、社会全体での育成・活用を行う事を重要視。組織では「出島」型組織の有効性を主張。技術では会社そのものへの「DX実装力」を求めた。


第三章では、国内の制度・ルールと世界的なルール形成を不可欠とした。


今回、経済四団体の事実上のトップである経団連が、大企業を頂点とするピラミッド型を令和DX時代に否定した点は大きい。平成時代につくられた産業構造では、世界とは戦えないという事だ。


今までの大企業は、若い芽(スタートアップ等)を摘んできた観は否めない。だが令和時代では若い目を育てるどころか、対等に向き合っていく必要がある。それは、たった独りの起業家であったとしてもだ。S3「工業社会(明治・大正・昭和)」とS4「情報社会(平成)」では量産が拡大の基本戦術であり、取引先を規模で選ぶピラミッド型が適していた。「規模の経済・範囲の経済」の時代だ。


S5「創造社会(令和)」では、ピーター・F・ドラッカーが「ネクスト・ソサエティ」で三十年前に提唱してきた『社会起業家』の出番となる。一言で言えば、社会を変革する者である。それは、およそ各界、各業種毎に独りで存在している。だが、まるでドナルド・トランプの様な力を有する(社会を変える)。


そんな社会起業家と対等に渡り合える企業へ機会(チャンス)が訪れるだろう。SWOTのOだ。



上から目線と下請け根性を変える時

 大企業が変えなければならいのは、意識だ。大>中小>零細企業の意識を変える。独りの社会起業家は自由で、引く手数多なので大企業の名前に固執しない。次にCIOとCFOが連結できるか。ドラッカーも三十年前から指摘していたが、未だにデータを財務に直結できない企業は多い。大企業のDXも基本的には守りの費用(コスト)削減に係る部分であり、攻めの研究開発・協業(投資)のDXは弱い。そもそも投資系DXのベンダ自体が少ない。


最後にCHO等の意見も踏まえたCEOの俯瞰力である。今の大企業は後ろ向きとは言わざるを得ず(参照;平成時代の名目GDP成長率)、若手をまるで活かしてない。CEOに若手を活かせる頭・心が必要だ。市場の種は若手が創るもの。



中小・零細もCIO・CFOの設置を急ぐ必要がある。外部コンサルタントでも良いだろう。CEOにはデータによる意見具申をする者が欠かせない。


そして特に零細は交渉力をもつ必要がある。取引先の候補は既にグローバルだ。自社の強み・弱みを確認して、営業に赴く。市場価値を知り、何をDX化したら良いかを若手に考えてもらう。先の大田区の様に世界企業になれる零細もいる。だが、心根が下請け根性だと話にならない。


ビジネスをする。


今回に経団連が指し示した「協創」のステーク ホルダへ営業を重ね、強みをDXで強化。優位性を高める。後に交渉となる。今の中小・零細は“売り込み”が本当に下手と言わざるを得ないだろう。どぶ板選挙の様にデータを集め、統計を収集し、意思決定をする。効率的なアウトソースよりも、自社の創造力を高めるデータ収集に投資されたい。オリジナルこそ、最強であろう。


記事:羽田野正法

画像:Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~【概要】/日本経済団体連合会

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