<元・通産官僚>江田憲司と<元・財務官僚>高橋洋一が語る財務省「財政拡張」反対の理由

【財政考察】 平成二十四年四月二十三日に無所属・江田憲司(丙申)衆議が、週刊現代/講談社(四月二十八日号)に掲載された記事『財務省の「洗脳とメディア操作」を暴く』を配信。当時、「みんなの党」の幹事長だった江田衆議と経済学者・高橋洋一(乙未)教授との対談で財務省を切った。通産省(現・経産省)と財務省の元・官僚同士の対談だ。

当時は野田政権。


衆議は「野田さんに言いたいのは、増税したら増収になると思い込んでいる事の愚かさです。」と指摘。教授は「今やるべきはデフレから脱却して経済を成長させ、それによって税収を増やす事なんですよ。増税は景気の足を引っ張るんですから。」と答える。野田佳彦(丁酉)前・首相は、この一年前にG20にて「二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税率を十㌫まで引上げる。」と明言していた。

安倍政権は消費増税を引き延ばしたが、令和元年の消費増税の大本は野田前・首相となる。



<財政健全化は達成済み>

 教授は「(政府の)借金が一千兆円もあるというのも、財務省の巧妙な洗脳ですしね。」と釘を刺し、衆議が「(政府の)資産も八百兆円近くあるんです。ですから、純債務はざっと三百兆円。」と主張。この純債務だと、GDP比は七十㌫程度。現在は純債務が七百兆円を超え、百五十三㌫。年収の一.五倍程度の債務がある感じだろうか。

事実上は債務の内、五割近くが子会社・日銀が保有しているので、実質・純債務対GDP比は更に下がる。


衆議は「資産の話を続けると、日本の海外資産は二百五十二兆円で、これは世界最大。それから個人金融資産は一千五百兆円弱ですけど、国や企業が持っている金融資産を全部合わせると五千六百兆円に上る。」と、日本が現在でも世界一の債権国である点を当時に強調している。



ここからが重要だ。何故、財務省はいつも増税をしたがるのか。

 衆議は「端的に言えば、かつての栄華をもう一度という事だと思う。詰まり、自分達の差配するおカネを増やして権限を強めたい天下り先も増やしたいと。」と本音を伝え、教授(写真上)が「図星だと思いますよ(笑)。だって、財務官僚は『我ら富士山、他は並びの山』って、入省したら最初に教え込まれるんですから。」と賛同した。


これは、安倍政権が「内閣人事局」をつくった事からも分かる通り、歴代の財務省は内閣の上にあった。総理大臣よりも意思決定権がある、という意味だ。財務省には、財務官財務事務次官の重大ポストが二つあり、安倍政権は腕力ある麻生太郎(庚辰)副首相で財務省を抑え込みたいものの、記事「衝撃!30万円給付案、実は「安倍政権倒閣」を狙った官僚の罠だった/講談社」等の様に、財務官僚はあの手、この手で内閣を揺さ振る。


前述の野田政権等も同様であり、平成八年・橋本内閣、更に遡れば昭和四十九年・三木内閣以降ずっと大蔵省と財務省が君臨している事になる。特にバブル崩壊後には米国の影も見え始め、圧力が強力になっている。



<財務省が財政拡張を嫌う理由>

 教授は更に「本来、国の財務を預かる者はマクロ経済に通じているべきですが、財務省は略全員が『アホウ(法)学部』出身だから、経済はもちろん、数学なんてチンプンカンプンな連中ばかりですよ。」とこき下ろす。


衆議は「兎に角財務省は経済成長率を低め低めにしたがる。高くすると、達成するのに財政出動が必要になるからイヤなんですよ。」と責め、教授が「経済成長率を高く見積もると、税収も増える計算になるから、よその省庁からもっとよこせという要求が強まる。これを避けたいんです。財務省としては、限られたおカネを配る事で力を見せつけたい。もしも予想より税収が増えたら補正予算を組み、追加でバラまく事で恩を着せる訳です。これが基本スタンス。その為には経済成長率が高めだと具合が悪い。」と、財務省のロジックを明らかにする。


両名の主張が的を射ているのであれば、財務省は総理大臣より強い権限を保持する為に、経済成長率を低めにし(事実、バブル崩壊以降で名目GDPはまるで上がっていない)、予算配分権を掲げる。勤続先が財務省で「東大」法学部出身のプライドならば、あり得そうな話である。



国税庁の強さ

 次に両名は、IMF(国際通貨基金)に話が及ぶ。現在のIMF・副専務理事には古沢満宏(写真上)元・財務官が就いている。彼で四人連続の財務官。IMFより日本に対し、消費増税等の要求があれば、それは財務省の要求だ。余談だが、三月末にはIMF二番手の筆頭 副専務理事に日系米国人・ジェフリー・オカモト(乙丑)が就任した。若干、三十五歳である。

現在の財務官は、武内良樹(庚子)。財務事務次官は、岡本薫明(辛丑)。


政治家だけでなく、メディアが財務省の言いなりになる理由を国税庁とした。教授は「財務省がメディアを封じ込めるのは実は簡単で、国税庁を動かせば良いだけの事なんですよ。実際、朝日新聞や東京新聞にも国税の調査が入ったようですが、国税が何を調べるかというと、記者の交際費です。」と話し、衆議が「まあ、財務省は一国の総理大臣をパペット(操り人形)にするくらいだから。」と本質を突いた。


「財務省 解体論」には、予算決定権徴税権警察権)が一つになっている点を問題視している。検察・特捜部程とまでとは言わないが、政治家にしても、記者達にしても攻め難い事は容易に想像がつく。特に衆議の「厄介なのは、財務官僚がそうやって財務省支配を強化する事は日本の為になると本気で思い込んでいる事だと思うんです。」という一句。


記者も財務省からの説明を現場で受けた際に、その若い官僚の眼は輝いていた。本気で日本の為になると思いながら、資料を作成していったのだろう。やる気も最強の官庁だった。次ぐは同系とも言われる経産官僚だろう。熱意は評価できる。


時の内閣は、財務省や経産省と常に闘っている。現場では互いに国の為を想っている。だが、大本を辿れば、今回の元・通産官僚と元・財務官僚の対談からも思惑が透けて見えたであろう。主権者が厳しい目を向けるべきは、内閣よりも先ずは財務官僚である。そして輿論・世論をぶつける。


0コメント

  • 1000 / 1000